棋書の購入で注意したい棋力とのミスマッチ(初心者向けお奨め入門書も紹介)
棋書の購入時に起こる棋力とのミスマッチ
棋書(将棋の本)を読む事で将棋を指すための知識や定跡手順を学習出来ますが、注意すべきなのは、市販の棋書の大半が初段と同程度かそれ以上の棋力の有段者を対象とした本になっている点です。
実際には将棋の有段者は少数であり、観る将~駒の動かし方が分かる程度の初心者が将棋ファンの大半だと思いますが、売られている棋書に書かれている内容は、それよりも遥かに棋力が高い人が対象です。
この記事ではなぜこのような現状になっているのかを自分なりに分析します。
またこれらを踏まえて棋書の購入で注意すべき点をお伝えします。
記事末では初心者向け良棋書の紹介も行っています。
棋力の段階表
自分が思う初心者(観る将)から上級者(初段クラス)までの棋力の段階です。
①棋力:観る将
・詳しいルールはほとんど分からないが将棋中継を見た事がある
・棋士の藤井聡太七段が話題になっているので将棋に興味を持った
この段階の棋書:少ない
②棋力:初心者
・駒の種類と動かし方、ルールが少し分かる
・「棋士・藤井聡太の将棋トレーニング」「世界のアソビ大全51」「ぴよ将棋」等のゲームで何度か遊んだ事がある
・玉の囲い方や戦法については知らない
・簡単な詰め将棋が解けない(頭金を知らない)
この段階の棋書:普通
③棋力:初級者(アマ低級程度)
・将棋ゲームや対戦アプリで指した事がある(100局以下)
・玉の囲い方や簡単な戦法が少し分かる
・簡単な詰め将棋が5分以内に解ける(1手詰め)
この段階の棋書:かなり少ない
④棋力:中級者(アマ中級程度)
・棋譜を符号で追える
・対戦アプリで数100局以上指している
・定跡書や手筋の本を読んだことがある
・居飛車か振り飛車での自分の得意な戦型で序盤の指し方が分かる
・普通の詰め将棋が5分以内に解ける(3手詰めから7手詰め)
この段階の棋書:やや少ない
⑤棋力:上級者(アマ上級~初段程度)
・対戦アプリで1000局以上指している
・必至問題、囲いの崩し方の本を読んだことがある
・自分の得意な戦型で幾つかの課題局面がある
・初心者に指し方を指導出来る
・長手数の詰め将棋が10分以内に解ける
・初段以上の認定を受けている
この段階の棋書:多い
①、②(観る将~初心者)を対象とした書籍は、小学生向けの本や漫画などがあります。
この段階では駒の動かし方とルールの本が対象なので、書籍としても作りやすいためか、羽生善治九段の著作・監修本を中心に良書が幾つかあります。
③初級者(アマ低級)は将棋に興味を持って駒の動かし方とルールを覚えた後、何すればいいのという時期ですが、この段階に合った本が一番少ないです。
ここで適当に指して間違った知識が付いたり、面白さが分からず興味を失って辞める人が多いと思います。
④中級者(アマ中級)は低級の時期を乗り越えて、符号が読めるようになったり、戦術に興味が出てきて、自分に合った戦法を探すために簡単な定跡書を探す段階です。
⑤上級者(アマ上級~初段)は自分に足りない知識が何なのか分かり、それに向けて必要な作業や読むべき棋書が分かる段階です。
市販されている棋書はこの段階(かそれ以上)を対象とした本が大半です。このため、③の段階の棋書が一番必要とされているのに、⑤の段階を対象にした棋書が一番多いというミスマッチが生まれています。
なぜ棋力と棋書のミスマッチが起こるのか
なぜ初心者が将棋の本を買おうとしても、大半がアマ上級以上を対象にした難易度の高い本ばかり市販されているのか。
このミスマッチが起きる理由は以下の幾つかの理由が考えられます。
1.既に初学者向け良書が出版されているから
既に一部の棋士(羽生善治九段等)の著作監修で初学者向け良書が出ているため、改めて他の棋士や出版社から企画の対象にならない事が考えられます。
2.棋書は研究発表の場だから
棋書は棋士の研究発表の場でもあるため、棋士が自分の研究内容を著作で発表するため、内容が高度になり初学者向けの内容にならない事が考えられます。
実際、プロ棋士同業者から見てあの本は凄かったと思われれば評価が上がるでしょうし、将棋ペンクラブ大賞のように将棋関係の著作に与えられる賞で入賞出来れば名誉になります。
3.棋士は天才だから「何が分からない」かが理解出来ない
棋士は子供の時から全国大会に出ていた将棋の天才ばかりのため、将棋の才能がない初学者が何を必要としているかが理解出来ないといった事も考えられます。
相手が何が分からないかを自分が分からなければ、必要になる知識を教えたくても教えられないといった状況です。
4.棋士間の遠慮・忖度
1に似ていますが、初学者向けの本は既に別の棋士が本を出しているからという理由(棋士間の遠慮や忖度等)で書かれない事も考えられます。
将棋のプロ棋士の世界は将棋村と言われるほど狭い世界で、小学生の全国大会で知り合ったり、奨励会で凌ぎを削ってきた者同士という関係が大半でしょう。
そのため、棋士同士で本を出す際の遠慮や忖度がある可能性もあります。
5.将棋を覚えるための学習課程が明確に定まっていないから
将棋には初学者のうちに必要な学習課程(カリキュラム)が明確に定まっていないことも一因にあると思います。
例えば自動車学校の教則本は、交通ルールと公道での運転に注意すべき点について分かり易く書かれていますが、将棋にはこのような決められた教則本のようなものはありません。
運転は仕事や家族の送迎等多くの人が必要とする知識であるのに対して、将棋はレジャー、趣味の範囲のため誰が読んでも分かる教則本のようなものはこれまで将棋にはありませんでした。
また将棋には囲い・手筋・定跡・詰め将棋・必至・寄せなど、対局に多岐に渡る知識が必要ですが、それらを統合的に集めたカリキュラムは存在しません。
初段認定の方法は、道場の指導者が任意で認定したり、機関紙(将棋世界)の問題を解いたりと様々です。
将棋連盟は「学習工程はその人に任せるから総合力だけ判定する」と考えているのかもしれません。
カリキュラムが存在しないため、棋力に応じた適切な棋書がバランスよく供給されないのです。
また、棋書の執筆は将棋連盟主導ではなく個々の棋士の意志に任されているため、初学者向けの棋書が少ない現状であっても、将棋連盟が棋書の供給を棋士に指示して執筆させるようなことも出来ません。
初心者~アマ低級は既刊の初学者向け良書で学習すれば良いのではないか?
その通りです。ただ、棋書の発行部数が余りに多いため、初心者にはどれが自分の棋力に合った本なのか分からないです。
例えば「初段」をタイトルに付けた棋書はありますが、将棋の「初心者」と「初段」には大きな開きがあります。初心者から見ると「初段」と書かれた本が自分の棋力に合っているように見えますが、実は完全にミスマッチです。
「タイトルが初心者向けに思えたが実際には上級者向けだった」のケースや、その逆で「タイトルは上級者向けのように思えるが実際は初心者向けの良書」というケースもあります。
そのためこうしたnoteやブログ、YouTubeなどで、初心者~アマ低級に向いた初学者向け良書を紹介していく・見つけるのが重要です。
ブログの記事も執筆者の棋力が様々なので、お奨めと書かれていても必ずしも読む人の棋力に合ったものかどうかは分かりません。
例えば「棋書ミシュラン」は棋書を買う上で非常に参考になるレビューサイトの一つで、評価の他に難易度や対象棋力が挙げられているのが特徴です。
ただ、全棋書がレビューされているわけではないため、レビューがない本については自分で情報を集める必要があります。
棋書を買う上で参考にしたいレビューサイト「棋書ミシュラン」
初心者・アマ低級向けの良棋書
上記を踏まえてこのnoteでも初心者・アマ低級向けの良書を紹介していきます。
以下のリンク先で紹介しています。
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