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夏はホラーを読もう!シチュエーション系ホラーのプロットが秀逸な伊藤潤二作品から2編を紹介

夏だからホラー、というわけではないが、最近ハマった漫画で、伊藤潤二のホラー漫画がある。
伊藤潤二作品は、これまでほとんど読んだ事がなく、『うずまき』『富江』くらいしか知らなかった。

(後は、『HUNTER×HUNTER』の「淵!?い、いやヒ・・・ヒソカ!!」の元ネタになったのが「ファッションモデル」という伊藤潤二作品である事はかなり前に知っていた。HUNTER×HUNTERファンには有名な話かもしれない。)

が、先日伊藤潤二氏がアイズナー賞というアメリカの権威ある賞で2部門同時受賞したという事がニュースになり、改めてどんな漫画なのかKindleで探して試し読みをしてみた。

日本人作家初の快挙! 『地獄星レミナ』と『伊藤潤二短編集』で、伊藤潤二氏がアイズナー賞2部門同時受賞!!!

©︎伊藤潤二/朝日新聞出版

『地獄星レミナ』については、奇想天外で話のスケールは大きいものの、個人的にそこまで感銘を受けなかったが、伊藤潤二短編集の『億万ぼっち』は衝撃的な出だしから、予想も付かない展開が面白かった。
他の短編なども見たところ、傑作集の短編が一番面白かった。

特に『路地裏』と『墓標の町』は面白い。

路地裏は、「ある下宿に居候を始めた大学生の石田は、部屋の裏側にある壁に囲まれた奇妙な空間に気付く。その空間からは夜な夜な子供の声が聞こえる。下宿の主人の娘の忍に聞くと、遠くの路地の声が聞こえているだけなので気にする事はないというが……」という話し。

「ファッションモデル」には、「淵!?い、いやヒ・・・ヒソカ!!」の淵さんも登場します。

伊藤潤二傑作集(6) 路地裏 (朝日コミックス)
[収録作]
・路地裏 ・ファッションモデル
・落下 ・相部屋
・旅館 ・許し
・煙草会 ・黴
・道のない街 ・記憶
・アイスクリーム・バス

墓標の町は、「遠くの街に引っ越した友人を訪ねて、かおるとその兄がクルマで移動中に人を轢いてしまう。兄妹は咄嗟にクルマのトランクに死体を隠すが、その街は人が死んだ場所に墓が建つという奇妙な街だった」という話。
更に、死体は訪ね先の友人の妹だった事が分かり、死体の隠蔽がいつばれるのかとサスペンス度が増していく。

伊藤潤二傑作集(9) 墓標の町 (朝日コミックス)
[収録作]
・墓標の町 ・仲間の家
・なめくじ少女 ・隣の窓
・漂着物 ・ご先祖様
・長い夢 ・トンネル奇譚
・銅像 ・浮遊物
・白砂村血譚

路地裏も墓標の町も、プロットが秀逸なスリラー系のストーリーで、どうなるか先が読めず、高い画力による画面構成で、傑作になっていると思う。
特に路地裏は、序盤の何気ない日常のコマから既に不穏な空気感が出ていて堪らなく面白い。

伊藤潤二作品は大まかにグロ系ホラー(ギャグ)、シチュエーション系スリラー、それ以外の3通りあると思ったが、自分が好きなのは、グロではなくシチュエーション系で、プロットが面白くどうなるか先が読めないストーリーだ。また、シチュエーションスリラー系の話しは、序盤からどこに伏線が隠されているか分からないため、コマを読み飛ばさずじっくりと読んでしまった。

路地裏の忍に代表されるように、伊藤潤二作品のもう一つの特徴は、儚げな美人がストーリー上で重要な人物になっている、ということだろう。
直視出来ないようなグロシーンに対して、黒髪の物憂げな美人も描ける伊藤潤二の画力は非常に高く、一コマ一コマシーンを切り取って飾っても絵になる美しさがある。

上記以外にも、『耐えがたい迷路』『顔面固定』等、まだ気になる短編が無数にある。

耐えがたい迷路(伊藤潤二コレクション 49)

顔面固定(伊藤潤二コレクション 103)

まだ未読の人は一度手にとって見られてはいかがだろうか。

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