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ザ・ファブル感想・アニメ化決定

南勝久先生の漫画はヤンマガの「ナニワトモアレ」を偶に見る程度で、失礼ながら凄く面白いという印象ではなかったものの、「ザ・ファブル」は今までにないストーリーとキャラクターが絶妙にブレンドされ、自分は2017年からコミックスで読んでいますが、ここ最近ないほどはまった漫画でした。
とにかくストーリーが独創的で、よく思い付いたなと思います。


ザ・ファブル 第一部(漫画)

ファブル|ヤンマガWeb

【名もなき組織「ファブル」に属する伝説の殺し屋・佐藤明(偽名)。
明と妹役のバディ・洋子は、ボスから1年間誰も殺さずに一般人として生活せよというミッションを受ける。
明と洋子、いざ大阪へお引越し――!】

プロの殺し屋の明が果して誰も殺さずに1年間やっていけるのか、という大筋ですが、これが読んでみると絶妙にキャラクターや伏線が配置され面白い。

明はシリアルキラーでも何でもなく、一般人から見るとちょっと変わった程度の人物ですが、身柄を預けられたのがヤクザ組織だったため、きな臭い雰囲気が常に漂う中、時には仕事をし、イラストを描き、時には恋愛(?)と、一般人としての生活を満喫。

暴力を洋子から厳禁された明は、引っ越し先で早速喧嘩を吹っかけられるも、「(殺しの)プロとして」弱者に徹底する演技で対応します。
この描写が滅茶苦茶面白い。
最初のSAでの車上荒らしを一撃で倒しているからこそ、ここの場面の描写が対比になって面白さが倍増しています。

妹の佐藤洋子も凄くいいキャラクターで、天才的記憶術を持つ酒豪の美女で、荒事の際には明のバディとして活躍します。

第一部は小島編、宇津帆編、サバイバル編、山岡編の4つ大きな話しがありますが、特に宇津帆編は良く出来ていると思います。
自分が一番好きなキャラの鈴木も宇津帆編から登場します。
山岡編は若干危うさを孕みながらも、最後まで走りきり、物語は大団円で終わります。

ザ・ファブル 第一部(漫画)
・オリジナリティ:10
・画力・画風:8
・ストーリー・エピソード:10
・キャラクター:10
・総合:95点

ザ・ファブル セカンドコンタクト(漫画)

セカンドコンタクトは残念な結果に終わりました。
まず絵柄やタッチが第一部とは変わり、背景は相変わらず細かいものの人物の線とか表情が第一部から大きく変わったので、そこが残念でした。

ストーリーについては第一部で大団円を迎えたため、各キャラクターのエピソードのキャパシティというか、これ以上発展させるのが難しいキャラが多くなってしまった印象です。
明とミサキの恋愛や関係性は終着し、明のオクトパスでの仕事もなくなり、明の描く独特のイラストも見れなくなりました。

真黒組での明や洋子の立ち位置もこれ以上発展させようがなく、洋子の復讐劇も山岡編で終わったため、キャンピングカーでの旅先での出会いと別れが描かれれば新展開もあったのでしょうが、リアルの世相を反映して例の倉庫に出戻り、倉庫が大半の舞台になるため、動きが少ない展開になってしまいました。

アザミとユーカリは山岡編では重要なキャラでしたが、セカンドでは山岡とのエピソードがなくなり、現状に満足して一般人として生活しているため、ファブルだった過去も特に触れられず、若干存在意義が薄くなっていました。

敵側組織は活発に動くものの、宇津帆や山岡のように敵側の人物が掘り下げて描写される事はほとんどないため、物語全般が薄い内容になりました。

総じてストーリーをこれ以上発展させようがない、という状態で無理やり進めている感があり、やはり早期に完結するという結果になってしまいました。

当初の構想はもう少し話しが展開する予定だったのかもしれませんが、実際に進めて見ると思ったようにストーリーが動かなかったのかもしれません。
それだけ第一部の舞台装置や筋立てが上手くできていたと思います。

また、作者の信条からかセカンドコンタクトでは人物の名前等に「政治ネタ」が盛り込まれ、そうしたものがなかった第一部(※)は世界観に入り込めたものの、セカンドコンタクトは見ていてもやもやする要素になっています。
(※強いて言えば魚介類や海・水に関係する言葉遊びはあった。)

総じて、ファブル第一部は殺し屋系の漫画としては異色のストーリーで、漫画史に残るタイトルの一つになったと思いますが、セカンドコンタクトでは画風の変更や尻すぼみなストーリーで読んでいてもどこかつまらない作品になってしまいました。

ファブル セカンドコンタクトは23年7月で原作が完結したとの事で、今後第3部が描かれるかは分かりませんが、第3部は原点回帰してもらえたらと思います。

2023/11/12追記
ファブル セカンドコンタクト最終巻の9巻はこれまでの伏線、謎を全て
回収し意外な事実が明かされます。
見事な終幕で大団円だと思います。
セカンドコンタクト全体としては微妙ですが、9巻の内容を読むだけでもセカンドコンタクトを読む価値があると思います。
また、明らかにファブル3部の開始を予感させる明の台詞があります。
セカンドコンタクトについては厳しい意見を書きましたが、ファンの一人として楽しみに待ちたいと思います。

ザ・ファブル セカンドコンタクト(漫画)
・オリジナリティ:10
・画力・画風:7
・ストーリー・エピソード:6(最終巻だけで+4)
・キャラクター:6
・総合:80点(最終巻だけで+18)

ファブルアニメ化決定 監督は髙橋良輔監督

23年7月10日に、ファブルがアニメ化される事が発表されました。
製作は手塚プロダクション、監督は「装甲騎兵ボトムズ」等で知られる髙橋良輔監督です。

自分はボトムズはTV版と大半のOVAを見ており良く知っていますが、髙橋良輔監督はリアルロボット系を手掛ける印象で、ファブルを監督するイメージがなかったため最初は驚きましたが、非常に期待が持てそうで楽しみです。

ファブル映画

自分は見ていませんが、第2作の宇津帆編が2019年に公開されています。

ザ・ファブル、アニメは期待には程遠く

(2024年4月28日追記)
アニメ化されたザ・ファブルの動画(期間限定)をYoutubeで見ましたが、残念ながら個人的に期待したラインからは程遠い出来でした。

自分が気になったのは、主に以下の点です。

  • 作画が全体的に平面過ぎて違和感がある。原作(2部であるセカンドインパクトではややのっぺり感はあったものの)の最初の方では、かなり線が書き込まれている。
    アニメではその線の多さは再現されていないため、別の作品のように見える。
    全体的に、もっと濃い作画にしてアニメも原作に寄せるべきだったのではと思う。

  • 佐藤明のしゃべり方がイメージと違っていた。台詞の後に伸ばし棒「―」があるのがこの漫画の特徴だが、しゃべっている時に伸ばしすぎて違和感がある。
    アニメの話し方はイメージ的には「あーーーーーーーそうだーーーー」くらいに聞こえる。不自然すぎる。原作ではそこまで極端にされていない。
    話している時の明のテンションも何と言うか、低すぎる。
    初期の佐藤明も、普通の人間に紛れて擬態出来る程度には会話している。
    もっと普通の話し方で良かった。

  • アニメでカラーになった影響かもしれないが、佐藤洋子の作画が原作と全然イメージが違う。化粧が派手で別人に見える。
    まだ出てきていないが、一枚絵だけで公開されている清水岬も原作とは別人に見える。

  • 佐藤洋子の声優は沢城みゆきが演じているが、無難に演技しており特に問題は感じなかったものの、汎用的な沢城みゆきという声優の演技という感が強く、これが間違いなく佐藤洋子の声という感想も持てなかった。
    ベテラン人気声優を無難に据えるのも分かるが、オーディション等はやったのだろうか?ジョジョのアニメは必ずオーディションがあり、ベテランでも役を得るのは難しいと聞く。そのくらいで選ばれたのなら視聴者として納得も行くが、単にベテラン人気声優を指名しているのなら残念だ。

  • 暗い場面のシーンで、背景が真っ暗で何が起きているのか見え辛い。
    例えば冒頭のボスが明と洋子に庵のような小さな部屋で大阪行きを指示する場面があるが、あの場面が暗すぎる。
    原作は普通の照明下のように見える。
    他にも、真黒組が用意した男を明に戦わせる倉庫のシーンで、背景が暗すぎて何が起こっているのか見え辛い。

アニメの演出の一環としてやっている事や、原作の解釈等が影響しているとは思いますが、やはり、キャラのしゃべり方がイメージと全然違う点、原作と違いのっぺりした平面的な作画、洋子の原作から乖離した外見の違い等が耐え切れず、これ以上見ようという気にはなれませんでした。
ザ・ファブルのアニメには期待していたので残念です。

原作は読んでいない、原作との違いは別に気にならない、アニメが面白ければそれでいいという人には、アニメでも楽しめると思います。

コミックDaysチャンネルでザ・ファブルの原作準拠漫画をYoutube上で見れるので是非こちらを見て欲しいです。
原作とアニメの違いが見て取れると思います。

1話/『ザ・ファブル』【公式】(原作準拠)

2話/『ザ・ファブル』【公式】(原作準拠)

3話/『ザ・ファブル』【公式】(原作準拠)

アニメ版 【1~3話】ザ・ファブル 見逃し特別配信(期間限定)

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