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「安心」から「自己肯定感」や「創造性」を育むSOZOW

 不登校の子は、将来の可能性が狭まってしまうのか。「不登校のほうが、むしろ可能性がある。問題は子どもではなく教育システムだ」と言うのは、オンライン教育事業SOZOW代表の小助川さん。小助川さんの考える「子どもが安心でき、自己肯定感を育み、創造性を発揮できる環境」は、どんなものだろうか。

※このエントリーは、Podcast「クリフト ~クリエイティビティあふれる不登校ライフを送るヒント~」エピソード#001~#004を記事化したものです。

SOZOW創設の背景は、子育と前職の経験から

「娘がきっかけで、日本の教育が、私が小学生の時(昭和時代)から、ほとんど変化していないことに気づきました」

 2児の父である小助川さんは、長女が一時期不登校になったことから、日本の教育制度のおかしさに気づいた。

「自分が子どものときから社会は大きく変わっているのに、学校現場が変わっていないことに驚きました。つまり、教育が社会に追いついていないのですね。そのせいで、先生や生徒の不幸が増えているのではないか、と考えました」

 小助川さんは、息子を既存の教育システムではない学校に通わせることにした。国立大教育学部付属の新しい教育が実践される小学校だ。その小学校では、子どもが主役のアクティブラーニングが行われる。先生がファシリテーションを務め、子どもが議論をするなど先進的な教育だ。そこで息子は好きなものを突き詰めることができた。その後、ロボットの世界大会で入賞したり財団支援を受けるに至った。現在中学1年生の彼は、財団の支援を受けシンガポールで学んでいる。

「環境によって、こんなに子どもは変わるんだ!」

小助川さんは、自分の経験として強く実感した。

 一方、職場で「子どもの才能」と「親御さんの反応」の乖離を感じたという。当時、不登校や発達特性のある子の可能性を伸ばすプログラミング教育事業に携わっていた。事業でかかわる子ども達の才能に驚いた一方で、学校になじめない子どもに対して親御さんが悲しんでいる現状も目の当たりにした。

「なぜこんな子が不登校? 『うちの子がADHD』と思う親御さんは、なぜこんなに悲しんでいるんだろう。実は、それは社会にとって才能かもしれないのに」

育児、仕事における経験と気づきを経て、小助川さんはSOZOW設立に至った。

SOZOWの価値と、2つの事業内容の概要

 SOZOWの事業のポイントは、学びと安心の両方を目指した設計だ。まず子どもの「好奇心」を存分に引き上げて、学びや創造に結びつけるようにカリキュラムが組まれている。加えて既存の学校で求められる同質性を、できるかぎり排除した環境設計がある。

 事業の2つの柱のうち、1つ目が「オンラインの習い事」だ。小2~中3を対象に、平日の夕方や夜・土日に開催している。2つ目が、「オンラインのオルタナティブスクール」だ。不登校の小4~中3を対象に、平日の昼間に開校している。

「自己肯定感を育むと同時に、最先端の学びを届けることがコンセプトです」

とスクールについて紹介した小助川さん。具体的なカリキュラムや環境はどのようなものだろうか。

気軽に興味にうちこめる「オンライン習い事」

 オンライン習い事は週1または隔週で、90分間行う。まずは具体的に学べる内容を聞いた。大きく分けて5つのコースがある。

「一番人気はデジタルクリエイティブコースです。これからの時代に必要な『デジタル創造力』を育む『プログラミング』『3Dものづくり』『動画制作』『デザイン』が学べます」

それぞれの分野はとても自由度が高い。そのため、子どもの個別の興味に応じた創作活動が可能だ。

 2つ目は、ビジネスやお金を学ぶコースだ。年齢層は中学生が多いが、小学校高学年もいる。商品開発、アイデアの出し方、投資の仕方などが学べ、実際に株を始めている子どももいる。

「お父さんお母さんも隣で参加していて、お母さんからは『幼いころに 知っていたら人生変わってたかも』と感想をいただ頂いたりしました」

 他にも、少人数でじっくり取り組めるコースが3つある。デジタルクリエイティブコースの応用編が2つ、SDGsについて考え議論するコースが1つだ。

 加えて、子どもと親に配慮した設計や、子どもの熱中度を増やす工夫がある。

・兄弟姉妹で参加しても、金額は変わらない
・答えのない問いを投げかけることで、自分の意見を否定されることがなく安心できる
・参加スタイルは自由で、カメラオンオフ問わず、発表形式も発声またはチャットを選べる

「いろんな参加の選択肢を用意していて、それぞれ居心地のいい形で参加してね、と伝えています」

個別最適な学びを追求した「オンラインスクール」

 次に、オンラインのオルタナティブスクール「SOZOWスクール」について聞いた。「オルタナティブ」には、「主流なものに代わる新しいもの」という意味がある。習い事と比べSOZOWスクールは、頻度も個別最適具合も大きい。

「ポイントは、1人1人の違いを未来の可能性につなげるような学びの場です。習い事とも共通する考えなのですが、まず安心できる居場所がある。そこから自分の好きなことで誰かに認められて自信がつく、できることが増えて自己肯定感が上がる。その中で主体性が育まれるような設計です

今通っている子どもは全員不登校で、平日の13:00~16:00が開校時間だ。起立性調節障害などで朝起きられない子どもにも配慮している。

保護者からは
「元気になった」
「学校に行けるようになった」
「修学旅行にいけた」
などの感想がある。

平日は毎日開校しているが、週2日の登校でも効果は十分。つまり既存の学校に馴染みつつ、このオンラインスクールに通い続けることもできる。

「オンラインスクールは、大きく二部構成になっています。最初の30分は『チェックイン』というクラス活動です。子どもたちから答えのないお題を募集して、話し合う時間。大人はファシリテーションに徹します。『美しいとかわいいの違いってなんだろう』『なぜ学校に行かなきゃいけないのか』などのお題がありました」

その後は2コマの「探究活動」に取り組む。探究活動のテーマは自分で選び、1人でも複数人でも取り組める。

「全てお子さんが自己決定していくことを大事にしています」

 大人によるサポートとしては、「メンター」と「チューター」制度がある。子どもは月3~4回メンターと1on1ができ、開校時間にはチューターが学びのサポートをしてくれる。
既存の学校の場合、担任や学校の枠組みに子どもが適応する必要がある。適応できなければ、不登校になりがちだ。一方でSOZOWスクールでは、子どもが環境を選べる。

「子どもは、メンターを選べます」

さらにバックグラウンドや得意苦手も様々な大人が集まっており、子どもに合ったメンターを見つけやすくなっている。

不登校児の保護者に向けてのメッセージ

「不登校を、引け目に感じなくてもいいと思っています」

 その理由は、日本の教育システムの特異さだ。「不登校」という単語は世界で日台韓の3カ国のみ。偏差値による評価システムは日本のみだという。このシステムによって「子どもたちの可能性や自己肯定感をつぶしていく。そして、お父さんお母さんも不安にさせる」と小助川さんは感じている。

 加えて大学卒の新人を見て、更にシステムへの危機感をつのらせた。上場企業のHR部長だったころは、高学歴新人の多くが「自分に自信がありません」「やりたいことが分かりません」と言っていた。

「日本の教育を10数年受けてきて、この有様は相当やばいなと思いました。(日本の既存の教育システムは)自分で考えて生きる力をとことん奪っていく」

既存の教育システムに様々な課題を感じたからこそ、小助川さんはSOZOWを作ったのだろう。

「私達は、子どもたちがやりたいことに向かって、一歩踏み出せる環境や学びを届けたいと思っております」

※この内容を音声で聞きたい方はこちら
Podcast
https://open.spotify.com/episode/69E6XLSYLZPHJ25OmSlr1Y
note(有料)
https://note.com/gamedecoaching/n/n55aac434df1b?magazine_key=md470ebc290ab


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