Case3.課金問題

課金って怖い、、電子マネーとかクレカとかもだけど、全然「お金払った」って実感がない。

ネット依存外来でも、課金の問題は全部ではないけどちょこちょこみます。
課金の問題だけ、って人は、学校や部活も行けていたりして、使用時間もそんなに長くはないんだけど、課金額が数十万、中には数百万、という人も。500万円overも数人みました。よく払えるよね・・・貯金が吹っ飛ぶ。

消費者庁にも課金専門のページができるくらい、問合せは多いらしい。https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/trouble/online.html

お金も渡していないのにいったいどうして?となりますが、その方法と対策としては
・キャリア決済➡️限度額設定をhttps://minute.jp/articles/1321#head-1
・クレジットカードを盗み見る(こういう時にものすごい暗記力が発揮されている)
・家の金庫から(鍵のありかを探し出す、暗証番号を覚える、など)
・SNSで第三者と金銭のやりとりをする(卑猥な写真を送る代わりにお金をもらう、という人も。)→鍵付きアカウントにさせる、等
・親のスマホで勝手に課金。→パスワードはわかりにくいものに設定。

あとはアカウントの年齢制限を厳しめに設定するとか、保護者の許可がないとダウンロードや課金ができない設定にするとかね。とは言え抜け道が必ずあるので、完璧ではないのですが。

成人の場合はタチが悪くて借金できちゃうんですよねー
それはもはやギャンブル障害に近いものがあります(ギャンブル障害の診断基準には「失ったお金を取り返そうとする」というものも)

お金をや時間をかけすぎて、「ここまでやったからには・・・」とどんどん引き返せなくなる。なのでアカウントを消そうものなら激おこぷんぷん丸です。行動経済学で「サンクコスト効果」「コンコルド効果」と呼ばれるものですね。
●サンクコスト効果
サンクコスト(すでに支出され、どのような意思決定をしても回収できない費用)を、人はそれを完全に無駄にする、撤退という判断をとることができない

●コンコルド効果
1962年世界初の超音速旅客機として約4,000億円をかけて開発が進められたコンコルドは、開発の途中で大赤字になると開発は進められ、最終的に数兆円の赤字に。

<課金をする人の特徴は?>
中学生対象にアンケート調査を行った文献がありました。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34413815/

「計画内課金」「計画外課金」「課金なし」の3群に分けて、SDQ(生活の困難さ尺度)、PHQ-A(精神的苦痛の評価、うつ病スクリーニング)をもとに評価しています。
・計画外に課金する人は、決められた範囲内で課金する人より行動上の問題や仲間とのトラブルが多い
・計画外に課金をする人は、課金をしない人に比べて生活に困難を感じている
・課金をする人(計画内・計画外含む)は多動・不注意が多く見られる

<衝動行為のメカニズム>
まあ確かに多額の課金をしちゃう人は衝動性は高い人が多いかな〜過去に万引き歴があったり、自傷行為があったり、ADHDの多動衝動タイプだったり。

衝動行為を抑えるメカニズムを筑波大と京大が発見:黒質緻密部のドーパミン神経細胞から線条体尾状核に対し、不適切な行動を抑える神経シグナルが伝達されている
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37551540Y8A101C1000000/

とのこと。ゲーム課金が問題になっている人を集めて脳画像とか見たら変化が見えるのかしら。健常者にDaTscanやPETやるのは倫理審査めちゃ厳しそうだけど。(昔の文献にはSPECTやPET撮ってるのもあるけど、最近じゃもっぱらfMRIが多い)

<衝動制御、その対策は?>
1番いいのは課金したゲームを消すことなんだけど。アプリだけじゃなくてアカウントごとね。経験者によると1週間くらいは虚無感に襲われるようです。(同窓会で課金ネタになった時言ってた)

アカウント消去に納得しないようなら、衝動制御目的で「条件反射制御法」を試すか、ADHDがあるなら薬物療法を行うか、くらいだもんな〜

自分だったら、ゲームしすぎて学校行かないとかは別にいいけど、課金して自分の貯金に手を出されたらマジでブチ切れると思います。
患者さんご家族には「怒りを鎮めたまえ・・・」っていうんだけど。
ゲーム売るなりなんなりして金返せって言うわー。
#実はキレやすい精神科医 #アンガーマネジメント頑張って読む

*条件反射制御法
https://iryogakkai.jp/2019-73-06/325-8.pdf

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