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シックス・センス+君の名は。的なホラー「ラストナイト・イン・ソーホー」

冒頭でトーマシン・マッケンジー演じるエロイーズがレコードに合わせて踊るシーン、「ティファニーで朝食を」のポスターを通ったとき、彼女自身がオードリー・ヘップバーンに見えるくらい魅力的でした。この時点で私的には映画館に観に来て良かった、と思いましたよ。この冒頭のシークエンスで、彼女が霊視できる人であることがさらっと描かれ、まるで一つのハンデのように描写されているのが印象的でした。

すでにトーマシン・マッケンジーの魅力で元が取れていたのに、その後の展開も痛いけど好物で。田舎の少女がファッション学校で都会の洗礼というを受けるシーンなど、ルームメイトの嫌な感じなど、かなり極端に描写されているけどいそうなタイプで、イライラしつつも彼女の境遇に共感できました。

そこで屋根裏部屋に引っ越してからがこの映画のもう一つの主人公、アニャ・テイラー=ジョイ演じるサンディとの夢の始まりで。煌びやかな世界で羽ばたくサンディの、夢から悪夢への移行がスムーズで恐ろしいこと。ここからの幻惑的な描写からホラー的展開へ一日ごとに移り変わっていく描写は震えました。時折挟まれるショッキングな演出には、劇場全体がビクッと動いたり。

本作に登場する二人の女性は勿論魅力的ですが、60年代のもう一人のキーマン、マット・スミスもある意味魅力的で。今回の役割を完璧にこなしていたと思います。彼の顔立ち大好きなんですよね……。Dr.フーでの演技も記憶に新しいですが、これから公開される「モービウス」にも出演するそうで、これからも沢山劇場作品で見たい俳優です。

映画は後半、夢と思っていた60年代が、事実であると確信したエロイーズが、サンディの死の真相を確かめようと奮闘するのですが、時間を超えた二人の絆、50年を経たソーホーに住む人たちの繋がりに、少し新海誠監督の「君の名は。」みを感じた次第です。

演出面でちょっと笑ったのは、真犯人とは気づかずにある人物の所を訪れるシーン。今時ベタなミステリーでもやらないであろうベタな演出があって、そこは敢えてやるんだ、と思わず笑みが溢れました。

あとはまあ、音楽は最高だし、60年代ロンドン、ソーホーのロケーションは本当に魅力的でした。真実が明らかになった後、最後の最後の演出は、こういうホラー系ではあまり感じられなかったさわやかさで、ラストだけではないですが、こういうシーンをトーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイの二人で作れたことは、現代の奇跡だったのではないでしょうか。テーマなど、色々考えさせられる部分はありますが、映画館という空間で十分楽しむための要素が盛りだくさんでした。今年のベストを検討したい方は、是非本作を見てから決めることをおすすめしたい作品です。

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