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“氷城暖島” 陳 敏慧(チン ビンケイ) 写真展

 日本と中国で撮られた、取り留めのない風景写真が並んでいる。まっすぐな視線で撮られた写真プリント74点が、日本と中国のブロックに分けられ、直接壁に打ち付けられている。そのストレートさと潔さは、逆に新鮮で好感が持てる。作家の眼差しているものがまっすぐに入ってくる。

 成安造形芸大の写真コースに通う陳敏慧(チン・ビンケイ)は、幼少期より引っ越しを繰り返してきた。生まれた土地よりも育った場所として、中国の東北の遼寧省瀋陽市が故郷だという思いが強いのだそうだ。日本に留学してからも、東京から滋賀へ引っ越しをするなど、慣れない外国の土地で寂しさを覚えていた。陳はふたつの場所で、その日常や風景を撮影した。そうして撮られた日本と故郷の写真たちは、寂しそうで、懐かしそうで、寒そうで、少し優しい。

 写っているものは、特定の出来事や事物ではなく、どこにでもあるようなものたち。何かを見ているというよりは、何かを視る(撮る)ことで、自己との世界の距離を測り、自分自身を認識しようとしているようにみえる。写真が自己の器ともなるように、陳は写真をつくることで、曖昧な自己(どこにいても他者)の輪郭を象どり、確かめようとしているのかもしれない。そうして象(かたち)どられた器には何が容っているのか、何が容っていくのか。この作品を経て、陳がより深く表現を掘り下げていくことを期待したい。ご高覧いただければ幸いです。

ステートメント|Artist statement

 日本の東京と中国の東北、遼寧省瀋陽市を撮影してきた。私は瀋陽市生まれではないが、意識の中では故郷(ふるさと)だという思いが強い。東京での3年間の暮らしを経ても、人とのつながりや文化に距離を感じていたことを思い出す。しかし瀋陽と東京はどちらも私が住んでいた場所。瀋陽にいた時、東京にいた時、見たもの、感じたものを写真で表現した。

コンセプト|Concept

 『氷城暖島』(ひょうじょうだんとう)。この作品のタイトルにある「氷城」は、冬に雪と氷が多い都市である中国東北地方の遼寧省瀋陽市を表し、「暖島」は日本を表しています。なぜならば、瀋陽市から来日した私にとって、日本はとても暖かい島だったからです。
私は元々遼寧省瀋陽市で生まれたわけではないのですが、そこに一番長く住んでいたので、自分の中では故郷(ふるさと)のように思っています。しかしその一方で、瀋陽に限らず帰国するたびに祖国では以前と違った印象を受けます。中国の変化はめまぐるしく、都市では急激な近代化による建設ラッシュや新しいメディアを積極的に取り入れた開発が続き、中でもキャッシュレスの生活が当たり前になっているのは一つの例といえるでしょう。また、しばらく会わないうちに歳をとった自分の両親や、弟の成長にもびっくりします。
 東京で暮らした3年間は、外国出身のせいか自分の住む場所として距離感を覚えたことがありましたが、東京という都市で生活することで自分を自立させ、異国での一人暮らしに徐々に慣れていった気がします。
この作品は、瀋陽と住んでいた時の東京を関連させて撮影し、この二つの都市が自分に与えた異なる印象を表現したいと思い制作しています。

▼プロフィール|Artist profile
陳 敏慧(チン ビンケイ)|CHEN MINHUI
滋賀県在住
1995年 中国の江西省生まれ
2017年 吉林師範大学(放送テレビ編集専門)卒業
2020年4月より 成安造形大学情報デザイン領域写真コース在籍
- グループ展
2017年 「北京印象」 中国吉林省四平市/中国 受賞歴
2015年 吉林師範大学写真賞 受賞
2016年 全国(中国)大学生広告芸術大賞 受賞 2016年 テレビ広告展示大賞 受賞 その他受賞多数

▼作品紹介

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▼展示情報について
“氷城暖島”
陳 敏慧(チン ビンケイ) 写真展|CHEN MINHUI solo exhibition

2021/8/17 (tue.) - 8/22 (sun.)
13:00-19:00
*最終日は18:00まで

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600-8059 京都市下京区麩屋町通五条上ル下鱗形町543-2F


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