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「やることがたくさんある」は英語で?〜SCEPの tutorから教えてもらった予想外の表現法〜

本当に「ララ」って言ってます?

There are a (lot of...)と言う時に、果たしてネイティヴは本当に/ðərərə/のように/rə/を2回発音するのだろうか?どうも/ðəːrə/のような感じの省エネ発音をしているように聞こえる時があるのだが、実際のところどうなのだろうか?…ということが気になって、SCEP (University College Londonでの Summer Course in English Phonetics)で教えていた一人、Luke先生にメッセージを送って尋ねてみた。すると、発音に関してはもちろんのこと、英語表現についても実に面白い回答を頂けたのでシェアしたい。

I think I could say both, but I’d usually say “there’s a lot of” (also I’d say phrases like “there’s many things to do”)
どっちでも言えると思うけど、普段は “there’s a lot of”を使うかな。(“there’s many things to do”みたいな言い方もするよ。)[ガリレオ訳]

混ぜるな危険を混ぜてみた?

受験英語なんかでは世界がひっくり返る(?) theresと a lot of / many (+複数形名詞)の共演。しかし言われてみれば確かに、例えば Practical English Usage (4th edition)にも “In an informal style, heres, theres and wheres are common with plural nouns.” (130.6)として載っている言語現象である:

Here’s your keys.
「こちらが鍵になります。」
There’s some children at the door.
「ドアのところに何人か子どもたちがいる。」
Where’s those books I lent you?
「貸してあげたあの本はどこだい?」
Swan, M. (2016) Practical English Usage 4th ed., OUP, Oxford.
※日本語訳はガリレオによる。

Luke先生の回答でも PEUの上の例文でも見られる通り、there’sのように縮約形が用いられているというのがミソなのであろう。すなわち、“there is ~”と分けて発音or書くと isの単数一致が意識に上るのに対し、there’sと縮約形にした場合、もはや単数/複数の意識は薄れ、対象物の存在を示すという文法機能だけに特化されるようになっているのだと考えられる。

まとめ

ことのほか、当初の発音に関する疑問以上に文法面で興味深い情報が得られたわけだが、今回のポイントをまとめると以下の通りになる:

(1) “there are a (lot of ~)”の発音は、律儀に/ðərərə/と言うことは当然あるとして、最初のあいまい母音/ə/を引き延ばすことで/rə/を1回に減らす省エネ ver.の/ðəːrə/も可能。
(2) 縮約形の there’sを用いて “there's (a lot of / many) 複数形名詞”のような表現が(日常会話のインフォーマルなスタイルでは)使える。

特に (2)について、言語現象には必ず理由がある。“there’s + 複数形”を英語ネイティヴが使うからといって、それは「文法なんか適当でいい」のでは決してなく、この現象の背後には、縮約形だからこそ単/複の意識が上りにくいという、言って見ればより高度な文法の支えがあるのである。

【紹介】Luke Nicholson先生について

SCEPで出会った先生なのですが、ロンドンを拠点に Improve Your Accentという個人スクールで教えられており、2017年にはUK Freelancer of the Yearを獲得されています。英語音声学の専門知識を最大限に発揮して教えているということで、ガリレオと活動の方向性が非常に近いこともあって、コース中に何度かお話をする機会に恵まれ、修了後もこうして連絡を取り合っています。SCEPでは講師・参加者ともに良い出会いがたくさんありましたが、Luke先生と知り合えたことも大きな収穫のひとつとなっています(^^)v

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