ワイド攻略の実験 6節 アトレティコvsヘタフェ(A) 2021.9.21

ミッドウィーク。日程が厳しい。
2戦連続でスコアレスドローとシャキッとしないアトレティコ。6節はご近所さんのヘタフェとのアウェーマッチ。

ボルダラス政権が終わり、新たにマドリー出身のミチェルを監督に迎えたヘタフェはとんでもない絶不調。

vsバレンシア(A) 0-1
vsセビージャ(H) 0-1
vsバルサ(A) 1-2
vsエルチェ(H) 0-1
vsラージョ(A) 0-3

と開幕5連敗スタートとなった。1点しか取ってない。
最初の3つはカレンダーが悪かったとも取れるし4節は強豪エルチェ(超絶えこ贔屓)だったとはいえ、昇格組ラージョに0-3で突然ヤバそうな雰囲気が。ここで先季の優勝チームと当たる不運。しかもこの後ベティスとソシエダだ。どうなってんだこのカレンダー笑
こんな感じで、相手が強いんだか自分たちが弱いんだかわからないまま時が過ぎていくのは非常に危険な気がしている。開幕戦では積極的にビルドアップにチャレンジしたが、訳あって90分間ずっと1人少なかったバレンシア(ヒント:ギジャモン)に手も足も出なかったし、もう先季までのサッカーを思い出してハードワークするしか道はない気もする。


アトレティコは中盤に怪我人続出。コケ、ルマル、コンドグビアを欠いて試合に臨む。突然カギを握らされそうなエクトル・エレーラさん
シメオネ就任後、ヘタフェには点を取られた事がないというアトレティコ。凄えな。ターンオーバーを使いながら勝ち切れるか



●スタメン
流れを変えたいスタメン!

・アトレティコ
オブラク
トリッピア / サヴィッチ / ヒメネス / ロディ
エレーラ / ジョレンテ / カラスコ
コレア / グリーズマン / スアレス


4バックスタート。中盤を3枚並べにくい編成なのでやむ無しか。デ・パウルが外れたのは意外ではある
前の配置は確認していく。


・ヘタフェ
ソリア
ジェネ / ミトロヴィッチ / クエンカ / オリベラ
フロレンティーノ / マクシモヴィッチ / イグレシアス / アレニャ
ハイメ・マタ / マシアス


ラージョ戦から5人変更。とはいえまだ固定できているとも言えないので、模索中というところか。5バックぽい。アランバーリが外れた
トップのマシアスは初スタメン。ウナルもサンドロ・ラミレスも外れて2トップ入替。何やら狙いがありそう

スタメン

グリーズマンとカラスコの位置は諸説ある


●前半 ワイドレーンの攻略法は如何に
明確に組み立てを変えたアトレティコ。
これを次もやるかは不明だが、明らかに今季のこれまでと違ったので詳細に。


・ワイドを使おう
4-1-4-1とも4–1-2-3とも何とも言えない配置で両サイドを攻略しようとするアトレティコ。
ヘタフェは後ろ5枚。中盤は3枚で真ん中封鎖の守備。

基本配置

アトレティコは主にエレーラ-スアレスをセンターレーンに置いて、あとは両サイドを攻略しよう、という構築。

・スアレスのタスク

スアレス

真ん中から動かない。ミトロヴィッチとずっとくっついている。3CBの真ん中を捕まえておく事で一定の効果があったので後述する。この仕組みだと真ん中はスアレスがいいね。真ん中からいなくならないトップが良い


・エレーラのタスク
ビルドアップのスタートはエレーラ。基本的にCB間センターサークル付近。ここでボールを引き出すと、ヘタフェはやむ無く真ん中から動かしたくないフロレンティーノが張り出していく事になる。ヘタフェは2トップでこのコースを封鎖できるのが理想だが。SBを経由されるのとどっちが嫌だろうね、という箇所。

エレーラ


エレーラに入るとフロレンティーノの背後が心配。
トリッピアに入れられるとコレア周辺が心配。

アトレティコは前進が難しく、SBの足下も入りにくい場合はジョレンテが気を利かせて降りてくる。エレーラのサリーは主に左側。

画像5


中盤で数的不利になるヘタフェは左SBのオリベラがトリッピアを見たりコレアを見たりしながらややバランスを取る


そこから先は、左右それぞれ選手の特徴に委ねたゾーン攻略に取り組む。

・右
まず右。ジョレンテ、コレア、トリッピアのエリアなので普段通り。

右

トリッピアが足下で受ける。ジョレンテが大外。コレアが近づいてトライアングル、という設計で左CBのクエンカの裏を突く

シンプルな形だが、この形で色んなチームを破壊しているので。この日は3CBの真ん中のミトロヴィッチがスアレスに引っ張られ、クエンカが孤立するシーンが多く、裏取りはそんなに苦労しなかった。


・左
左側はロディが球出しに手こずり、思うようにチャンスメイクが出来ず。主にカラスコが大外立ち。

左

SBからの球出しで捕まるとカウンターが怖いので、ロディで突っ掛かるのは避けたい。

それよりもグリーズマン、カラスコが相手の注意を引けるので、むしろダイナミックにロディがランニングする方が良い場合が多かった

ロディ大裏


5バックがSBの裏取られるなよ


・守備
ヘタフェが後方からビルドアップするような場面がなかったので、いまいちアトレティコの守備配置はわからなかったが。ヘタフェは奪ったら早めにハイメ・マタにぶつけて、アレニャに落とす。そこからマシアスと2人でPAへ突進、という形でそれなりにシュートチャンスを作れた。

ネガトラ

アトレティコは失い方が悪い事も多く、ネガトラで四苦八苦。

・先制はホームチーム
45分にFK崩れの放り込みでミトロヴィッチが決めて、ヘタフェがアトレティコ戦なんと18試合ぶりのゴールで先制。守って耐えながらの戦いだったが、ホームチームが理想的な展開で前半を終えた


●前半終了
アトレティコはいつもと違う取り組みをして、選手間でも戸惑うようなミスもあり、被カウンターでも普段と違う対応を迫られながらの前半。
でもここ2試合全く得点の匂いのしなかったチームが、メンバーを変えて配置を変えて取り組んだ45分には大きな意味があったと思う。後半は結果が付いてくるとベストだが、さて


●後半
明らかに「守り切ろうね」という雰囲気で後半に入ったヘタフェ。それもあってか、アトレティコの保持位置が前半より高くなってくる。

後半


それでもヘタフェのカウンターの脅威は変わらずアトレティコはバタバタが続く。選手層を生かして交代を使いながら追い込みたい


・自滅していくヘタフェ
何とか逃げ切れそうな雰囲気になってきたヘタフェだが、65分のプレーをきっかけに自滅していく。
アバウトなハイボールに、オブラクがエリア外まで飛び出して対応したプレー。ここにハイメ・マタが突進していき、不要なイエローをもらう。
このプレーにヒメネスが育ちの悪さ丸出しのブチギレを見せるとアレニャが一緒になってはしゃいでイエローをゲット。なんでお前が出てきた?

そして74分にアレニャがクーニャを踏んづけて退場。グッバイ。このプレー単体でも退場だったかもしれない。


・逆襲
それでなくても疲労がありありと見え始めていたヘタフェは一気にキツくなる。
中盤のフィルターもクソもなくなり、アトレティコは放り込み放題。
78分にエルモソのピンポイントのアーリークロスにスアレスがブリリアントなファーストタッチにエクセレントなフィニッシュで同点(誇張なし)。
本当に助かった。


90分にはヴルサリコがアバウトに放り込んだボールをミトロヴィッチが被ってしまい、またもスアレス。最後はミスで決してしまった。勝負あり。



●試合結果
ヘタフェは、勝ち点獲得にはいろんなものを犠牲にする覚悟を持った試合。90分我慢しようね、という試合で前半に望外の先制点を奪ったにも関わらず、色んな意味で我慢しきれなかった。退場もそう、2点目のお粗末な対応もそう。

電撃降格もありそうなシーズンとなってしまったが、アランバーリはアトレティコが引き取りましょう


さてアトレティコ。何とか勝った。
コケとコンドグビアがいない、ターンオーバーを使いたい、など色々条件のあった試合だが、ワイド攻略の実験が含まれていた感があり、個人的には満足度が高い。
相手の無駄な退場に大いに助けられた勝利だがまあ良いじゃないか。少なくとも勝利には値したよ。
ゾーン攻略もネガトラもまだまだだけど、実験する事は大事。試合を見ている僕も、毎試合新しい発見をしてそれをアウトプットできるように心がけます


9/21
コリセウム・アルフォンソ・ペレス
ヘタフェ 1-2 アトレティコ
得点者
【ヘタフェ】’45+1 ミトロヴィッチ
【アトレティコ】’78 ’90 スアレス

●ピックアッププレー
相手が普段のアトレティコ同様3バック→5バックで守っていたので、気になった場面
前半2分のアトレティコのビルドアップ。

画像11


2トップのプレスを避けるためもあり、大外立ちが多かったサヴィッチからの球出し。
マクシモヴィッチがマンツーなのか、そういう場面が多かっただけなのか、ジョレンテに張り付いて、コレアへのパスコースが空いている。
落ちてくるコレアには、左HVのクエンカが付いてくる。
"そもそもアトレティコの右サイドが狙っているのはクエンカの裏"なんだが、自らいなくなってくれる。

画像12


この場面ではサヴィッチからのボールはトリッピアへ。コレアが自分で空けたクエンカの背後へランニングしていた。

さて、ちなみにこの場面、アトレティコの5バックだったら、

・コレアへのパスコースをどのように阻害していたか?
・落ちてくるコレアのマークは誰が、どのように振る舞うか?

と考えると、みんな違って面白いですね。どうでしょうか


トリッピアの位置で受けたのがジョレンテだったら、縦に仕掛ければ一気にPA侵入出来そうなシーンでもあり、これはアトレティコの右サイドの”大外を取る選手が入れ替わる利点”でもあったと考えています。


●ピックアップ選手

スアレス
2発で逆転勝利を引き寄せた。
膝の状態が悪そうで機動力がかなり落ちているが、相手がドン引きしたこの試合はPA内の仕事に集中。期待役割を見事に果たす。
「僕は批判の影響受けない。批判で落ち込むことも称賛で思い上がることもない」

ヒメネス
責任感というか、自覚を感じる場面が多かったかな。アレニャと喧嘩したシーンは確信犯だとしたら、勝利を決めるシーンになった

コレア
選手が入れ替わってスクランブルになった状態でも、彼はいつも冷静。隙間を見つけて味方を探して、そしてPA内で仕事する。

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