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数多の星から コパデルレイ3回戦 アトレティコvsレアル・オビエド(A) 2022.1.4

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

週末(年末)に再開したばかりのラリーガ。さて、コパデルレイである。
3回戦の相手はレアル・オビエド。
オビエドってどこやねんと思ったらアストゥリアス州とのことなので北の方のガリシアのお隣。ヒホンとかがある州らしいです(全然詳しくないです)

このへん

セグンダで5回優勝したことあるという結構強めのエレベータークラブ。(優勝最多はレアル・ムルシアの8回)プリメーラ最高位は3位で、90-91シーズンという割と近代に入ってからも6位になったことがある。UEFAカップ(現EL)にも出たそうな。その後はよくある財政難で給与未払いなど色々あり再建中。先季はセグンダで7位。今季は14位。ちなみに今季の13得点はセグンダで最少。コパは2回戦でグラナダに勝っている。

選手を見ると、アトレティとしては懐かしい”余裕で戦力外なのに何故か高値で売れた”でお馴染みのボルハ・バストンがいる。先季はセグンダで22得点だったそうです。
あとはダニ・カルボとかグラナダにいたモントーロとか、バレンシアからレンタルのコインドレディとか。ダニ・カルボはむしろ今こそエルチェで出番あるんじゃないですかね。監督は先季途中でカディスを解任されたセルベラでびっくりした。


●さてこの試合
さてこの試合、フォロワーさんに教えていただき(いつもありがとうございます!)なんとか見ることができたものの、視聴環境が不安定であったり、そもそも前半20分まで見ることができなかったりと微妙な感じである。そしてこの試合そのものを深く掘ったところでたいしたメリットも生まれなさそう。ということで、W杯後の新しいビルドアップパターンをエルチェ戦で指摘した箇所と照らし合わせながら再確認し、そしてちょっとだけバルサ戦へのプレビュー要素も組み込んで紐解いていこうと思う。
あえてそんな雰囲気は出さずに普通にツイートするので、こんなに興味を引かなそう、そもそも見ることもできてなさそうな試合のレビューをわざわざ開いてくれた皆さんへのちょっとしたアレで。プレゼントというか、アレで。日頃のアレで。

では行こう。上記の要素を混ぜ込んでこの日のアトレティコの戦いを煮込んでいく。


●スタメンと試合結果
・スタメン
オブラク
モリーナ / ヒメネス / ヴィツェル / エルモソ
コケ / ルマル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / モラタ

モリーナが復帰。ちなみにデ・パウルはベンチ外。
ヴィツェルが最終ラインに入りそうだけど入らなくても良さそうなメンバー。


・試合結果
1/4
カルロス・タルティエレ
レアル・オビエド 0-2 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】’24 ジョレンテ ’83 バリオス



まずはビルドアップの整理。エルチェ戦の内容、そしてエルチェ戦のレビューで書いたことを少し思い出してもらいたい。

後方3枚でビルドアップ。アンカーポジションのコンドグビアの隣に1人降りてきて3-2でビルド。主にバリオスの仕事。

星の煌めきが示す未来図 15節 アトレティコvsエルチェ(H) 2022.12.29 より

という書き方をした。3-2配置のビルドアップですよ、とは書かなかった。結果的にそうなったが、おそらくそもそもの戦術は3-2ではなかった。と思った。なんとなく選手間の雰囲気とコミュニケーションの様子を見てそう判断できたので、上記の書き方をしていた。

エルチェ戦も、別にコンドグビアの隣に降りてくるのはグリーズマンでもフェリックスでも良いという構築であった。ただしそれはグリーズマンが右サイドのトライアングルを効率よく回せるかどうか、フェリックスは大外レーンのカラスコへのプレッシャーを弱める効果を得られるかどうか、そして彼はそもそもFWである、などの要素から、結果的にバリオスがコンドグビアの隣を取る形が効果的だったに過ぎない。

この日はどうかというと、誰も降りてこない場面が非常に多かった。コケを基準にした3-1のビルドアップである。

繰り返すがこれはエルチェ戦からの変化点ではない。エルチェ戦もそうだった。ただし、結果的に出口としてアンカーの隣に降りてくるバリオスがフリーで前向きになる形を活用していた。何故か。コンドグビアが前を向けなかったからだ。この日のコケは自力で前を向けたので降りてくる必要がなかった(必要がない場面があった)。
ちなみに両HV、ヒメネスとエルモソの幅の取り方が左右で異なっていた(エルモソが高め、広め)のは設定されていたというより個々の判断に依存していそうだったので、もう少しチームとして設定して良いと思う。設定した後に個々の判断、得意なプレーを乗せてほしいと個人的には考えている。ビルドアップに限らず全て。

この日のコケはアンカーポジションに立ち、圧倒的なパフォーマンスを披露した。さすがと言いたいところだが、個人的にも驚きでさえあった。
相手チームのランクが落ちるので単純比較は可哀想だが、3CBの正面の3レーンを自在に行き来し、ボールを引き出して前線とジョイントした。技術、空間認知、連続性、どれを取っても100点だ。完璧。
オビエドは4-2-3-1(4-4-2)風の配置だったのでアンカーを消したいイメージは持っていたと思われるが、あまりにも消しきれずけっこう無理のある配置を取ることも。その際はエルチェ戦のバリオス同様、IHがガラ空きになったコケの隣まで降りてきて簡単にボールを引き出した。

この日はジョレンテとルマルのタスク。
特にルマルはこういった可動域を広く意識する必要のあるタスクは得意だ。また出た。ルマルの得意そうなタスク。ジョレンテはジョレンテでボールを引き取ってグリーズマンに渡して自分はアタッカーの仕事に移行する、という風に仕事を単純化して上手いことやっていた。ジョレンテはそれでいい。頭をクリアーに。

アトレティコはこれで、ボール保持を確立した状態で試合は進む。コケも各試合で1,2回だけ見せるチアゴ・アルカンタラかなと思うほどの鋭い縦パスをこの日も通し、前進を促進した。
最前線ではオビエドの最終ラインがエルチェと比較するとけっこう低く構えていたこともあり、モラタは背後よりも足下に。コレアにやらせたら面白そう(後半出てきた)。
オビエドは4バックだったこともあり、両ワイドを幅広くポジションさせたアトレティコはIHが相手CBめがけて突進する形でPA内侵入を狙った。ジョレンテの先制ゴールはまさにその形。


てな感じで、気になった箇所をいくつかピックアップして深掘りしていこう。

・GK含む1-3-1ビルド局面
ビルドアップ良いって言ったじゃん、ということで。
“オブラクがいる限りGKを使ったリセットができない”という話をどこかのまとめ記事で書いているはず。いつ書いたかは覚えてない。

それはこのビルドアップパターンでも、そしてこの試合でもあまり変化はなかった。

正直に言って、GKを使ったリセットができない=駄目というつもりは一切ない。ここで言いたいのはそういうことではなくプレー原則の話と、チームの共通理解の話。
そういうプレー原則を明確にチームで用意しているというのなら別にそれでいい。おれの認識は大概がこれだ。だからこそ、これまで試合単品で「オブラクが蹴っ飛ばさなければもっと繋げるのに!」とか書いたことがない。言ったこともツイートしたこともない。”そういう設定ならそれでいい”のだ。

ただし、コケがアンカーポジションに入っているこの日、コケ自身が背中にマークを背負った状況でもGK、あるいはCBからのボールを引き出そうとしていた。

出し手が戸惑うのはしょうがない。だって今までやっていないから。それこそヒメネスなんてこのクラブで欧州リーグデビューして、これまでのキャリアでずっとやっていない。
でもこの試合はコケの挙動を見ても明らかにわかるように”チャレンジしよう”という局面だったはずだ。それならチャレンジしてほしい。昨今のアトレティコはこういうのが多い。フェリックスへのスルーパス出ないね、とかそういうのもそう。選手のチャレンジ精神の話もあるが、コーチ陣はどういう設計をしているのか。
「これまでのプレー原則と異なるけどこの構築をチャレンジしようぜ」ってちゃんと言ってるか?"これまでのプレー原則と異なるけど"と、ちゃんと伝えているか?言わなきゃ選手はプレーできない。ここは改善してほしい。やるならやる。やらないならやらない。しっかり落とし込むこと。

この自陣ビルドアップの箇所に関してはのんびりしている暇はない。次はバルサ戦だ。少し予習しよう。

バルサは3トップでアトレティコの3CBに対して内側から外側へ向けて強烈な圧力をかけてくる。この日のようにミドルゾーンのブロックで受けて立ってはくれない。そしてアンカー番が必ず前進してくる。たぶんペドリが。コケに時間とスペースがない環境になる。ではIHが一列落ちましょう。という話になる。繋がりましたかね。バルサ戦でもビルドアップの鍵を握るのはIHになるわけです。さて、誰が起用されるか。バリオスはクオリティを発揮できるのか。


そして、バルサ相手には必ず逃げ道の準備が必要になる。先季のメンバーだったら絶対やっていただろうなという逃げ道はこれ

ヴルサリコ・アタック

ジョルディ・アルバめがけて蹴っ飛ばす
ここでヴルサリコに競らせることで99%勝てていた。エクトル・エレーラシステムが行き詰まらず機能した一因になった空中戦回避である。今のメンバーだと最適なのは右のジョレンテになるが、どうでしょう。
少し躊躇ってしまうのは、この日復帰したモリーナの状態が良かったこと。W杯の良いイメージを持ち帰ってきているのだとしたら、この勢いをそのままバルサ戦でも使いたい気持ちがある。右WBの起用は一つ、アトレティコ側のビルドアップの考え方のポイントになる。

・WBの使い方
で、ウイングバックの話。どうにもこのビルドアップを始めてから生かし方がよくわからない。大外の囮であり続けている。機能したのはエルチェ戦で相手が一人減ってからだった。バルサのサイドの守備はこれまでの相手ほど人数をかけて突破を警戒してくることはないだろうからカラスコ周辺からの突破を見せてもらいたい。現状は直線的にゴール方向へベクトルが向くレギロンの方が機能しそうだがそういうわけにもいかないでしょう。

・ネガティブトランジション
エルチェ戦で悪かった部分で、まだ未検証の箇所が多いのがネガトラだ。バルサ相手にハーフウェーライン付近のボールロストで一気にひっくり返されるようなシーンは出来る限り避けたい。CBにとってはストレスが高いながらビルドアップもやらなければならない難しい試合になるだろう。

ということで、予想スタメン

バルサ戦予想スタメン

エルモソは出場停止なのでヘイニウド。そもそもヘイニウド。ヴィツェルのところはサヴィッチorフェリペでも良いと思っている節はある。非保持意識強目で。
右側はモリーナとジョレンテの併用を継続する。なんか化学反応起きないかな。起きなかったら中盤を入れ替えてジョレンテを大外に動かす。
ルマルorバリオスは配球を期待してバリオスを推す。大概の仕事はグリーズマンに任せてバリオスはこの数戦で見つけた自分にできる仕事を全部やってくれることを期待する。


試合前に予防線を張るようだが、おれは「相手がバルサなら順位も勝ち点も関係なく云々」的な発想に疎い。今季はこれだけ離されてしまっているんだし、マドリーとバルサ相手は全部引き分けで良いくらいに思っている。
ただ、今進もうとしている方向に確信を持つためにはバルサに勝つというのは非常にわかりやすい。ついでに言えばフェリックスなしで勝ちたい。別にいてもいいけど。

新しいアトレティコ・マドリーはこれだ、っておれも言いたい。楽になりたい。おれ自身。

さて見に行こう。シメオネ・アトレティコver2023を。


●ピックアップ選手
コケ
アンカーポジションで文句なしのパフォーマンス。
バルサ戦では久しぶりに試合の行先を左右する役割になりそう

ヒメネス
右で使われる理由を示すハイパフォーマンス。
イエローはコパ3戦連発

モリーナ
W杯後復帰初戦。ダイナミックなランニングが増えた印象

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