エースの独壇場 18節 アトレティコvsバジャドリード(H) 2023.1.21
バジャドリードと試合するのはあの優勝決定戦以来。無観客アウェーだったね。懐かしいな。
セグンダから1年で帰ってきたバジャドリードは割と当時のメンバーも残っている。メンバー的にはむしろアトレティコの選手の方がいなくなってるかもしれん。
W杯で話題になったモロッコのエル・ヤミクも相変わらずなんの特徴もないが元気。右SBの18歳イバン・フレスネダはすでにプレミアから触手が伸びる注目株である。普通に上手い。無理せずアトレティコに来てほしい。
残留ライン付近が先季以上にハイレベルなプリメーラで、バジャドリードはライン上に位置しているが圧倒的降格候補ということはない。ちなみに私は現時点では降格すると思っている3チームの内の一つです。
ここ4試合はスコアレスで負けており、改善が欲しいタイミングになっている。前節のラージョ戦は相手のペースに巻き込まれて苦しい試合になった。現状、ボールを保持できる試合展開になれば戦えるがその展開を選べる相手はなかなか少ないんじゃないか?というところ。課題は非保持メインの試合のポイントの取り方。申し訳ないがアトレティコは容赦なく押し込んで打つ手もない状態で締め上げたいところだ。決めるべきチャンスをきっちり決めて楽な試合をしたい。
●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / ヴィツェル / エルモソ / ヘイニウド
コケ / ジョレンテ / ルマル
グリーズマン / コレア / モラタ
新加入のメンフィス・デパイは早速ベンチ入り。家族の都合でメンフィスと呼ばれることを希望しているとのことなので、このブログでもメンフィスと表記していきます。
引き続き左サイドをどうしましょうシステムで戦う。カラスコはベンチに戻ってきている。最終ラインは引き続きサヴィッチがこの試合まで出場停止で、ヒメネスも不在。ルマルはコパデルレイを休んでラリーガは連続スタメンとなった。
・バジャドリード
マシップ
ルイス・ペレス / ハビ・サンチェス / エル・ヤミク / ダビド・トーレス / ルーカス・オラサ
プラーノ / キケ・ペレス / アグアド
セルヒオ・レオン / ヴァイスマン
5バック。32番のダビド・トーレスは19歳のカンテラーノで、この試合がプリメーラ初出場。前節からマシップ、ハビ・サンチェス、キケ・ペレス以外の8人入替。
●前半
両チームとも攻守で派手に可変しながら戦った前半。理由は色々あるだろうが、展開を掴むのに苦労しながら。
バジャドリードは3CBに中盤が2枚、特にアグアドが最終ラインに加わりながらボールを保持。両WBに高い位置を取らせることをベースとする。後方の枚数を増やして進む。
おそらくアトレティコのブロックを押し込んだ後にCHも高い位置に出てきて、のような第2段階の準備もあったと思われるが、ほぼ再現しなかった。早めに大外を使っても中央に2トップしかいない環境でなかなか進まない。
それとプラーノが中央で孤立しボールに触る機会が少なかったのはアトレティコ的にはラッキー。セルヒオ・レオンが左大外に流れてボールを引き取り、ヴィツェルを連れ出す形が2度ほどあり、これが一番嫌だった。
アトレティコの守備の形は、コレアとグリーズマンがいるのでどうとでも対応可能。4-4-2にも5-3-2にもこだわりがなかった。個人的にこういう守り方の方が好み。
この日は途中からグリーズマンとコレアを大外に置いて4-5-1のように立ち、ビルド隊のボール保持者へ近くの選手がアタックするような方法でじわじわとプレッシャーを与えていった。高い位置でボールを奪いたい意識はそこまでなく、それとなくバジャドリードの保持に慣れていった。
攻撃は序盤、モラタの裏抜けが単発で2度あった。バジャドリードはとりあえずエル・ヤミクがモラタにどこまでもついていく設定だったが、全然良い対応にならなかった。そもそもモラタは真ん中にいないし。急造だったのでとりあえずどこかに基準点を作った感じだろう。
その後、アトレティコの先制点も裏抜け。18分。相手の5-3-2の配置が非常に低いことを見てアトレティコは両HVも高くポジション。良い立ち方ができていた場面で、コケからくさび一閃。
グリーズマンのフリックでモラタが抜け出してDFを外し、GKも出し抜いて楽々ゲット。このシーンは後ほどピックアップする。
・モラタの裏抜けの質
トランジション局面の裏抜けがあまり決まらない最近のモラタ。この試合のような、ブロックを押し込んだ場面の方が得意な形が出る様子。ランニングコースの取り方が非常に上手い。これが代表で点を取れてた理由なのかな。あんまり見てなかったけど。
相手DFの背後を取りに行く時、この先制場面のように大きく横移動を使う。誰がマークを担当するゾーンなのかをぼかしながら抜けていくのが上手い。そして速い。バジャドリードの急造最終ラインではなかなか受け渡しが難しかった。
その後は引き続き右サイドを力技で押し込む攻撃を選んだアトレティコ。モリーナ、ジョレンテ、コレアが自由に配置を変えながら襲いかかった。オラサ一人では対応しきれず、プリメーラ初出場となったダビド・トーレスはビルドアップは上手かったがこのレベルの対人対応はさすがに厳しかった。
アトレティコの2点目はジョレンテが大外でボールを持って前向きにドリブル。チャンネルにコレアとモリーナが完全に被り、「どっちが抜けるねん」となったが相手もどうマークすればいいかわからなかった。なんだこの渋滞は。
結局優先的に抜けたモリーナの速いクロスにグリーズマンが合わせた。最近まともなシュートを外し続けていたグリーズマンだが、足にボールがぶち当たる難しいシュートはなんだか枠に飛んだ。よかったね。
さらに28分にはグリーズマンのFKにエルモソが完璧に合わせ、一度はマシップに止められたが自らお洒落にプッシュして3-0。前半のうちに勝負あった。
●前半終了
3-0で折り返し。バジャドリードは普段と違う取り組みの中で、なんとか守備の安定をという狙いを持ったが、自分達自身も味方が周囲に多すぎてあたふたしてしまった印象。保持ではプラーノの質をどこで使うかが不明確になりペースを掴めなかった。
アトレティコからすれば、最近できていなかったのはチャンスメイクではなくフィニッシュの部分で、試行回数を簡単に増やせたのは助かる展開だった。きっちり目を合わせる余裕があった先制シーンは典型。非保持でも、前プレを選ばず受けて立つ選択ができるメンバーだったこともあり、後ろに重いバジャドリードの保持は怖くなかった。ヴィツェルの背後目掛けて蹴っ飛ばされる方がまだ嫌だった。
ともあれ、あちらにはあちらの都合がある。確実に3ポイントを取るための後半に移る。
●後半
55分にジョレンテが筋肉系の負傷っぽい雰囲気でデ・パウルに交代。勤続疲労もあるのでね。同時にグリーズマン→カラスコ。59分にルマル→コンドグビア。
65分にはデ・パウルのスルーパスにコレアが反応して決定機、68分にはエルモソからカラスコへの大きな展開を使い、最後はコケに決定機。
バジャドリードは前を増やしてるんだか後ろを減らしてるんだかわからない調整に終始。アトレティコは75分、サウルと同時にメンフィス・デパイが投入されて本拠地でデビューを迎えた。ようこそ。
ラスト15分はカラスコとメンフィスがコンビネーションを確かめるようにボールにたくさん触れてチャンスも作ったが、得点は生まれず。
メンフィスは色々疲れもあるタイミングであろう。明らかに身体が重かったしボールも足につかず。それでもうまかったが。
●試合結果
コパデルレイはあったが、ラリーガでの勝利は年末のエルチェ戦以来で新年初勝利だった。忘れてた。
バジャドリード側の都合もあったが、序盤からピッチを支配し、あとは決めるべき場面でちゃんと決めた。最近はチャンスを作っても外す試合が多かったから、シュートが入ればこういう試合になる。
この日のスタメンの組み合わせは結構好みかもしれない。まず非保持の全方向性がよかった。相手がどうボールを保持してきても対応できる形で試合に入り、しっかり守りから試合を作った。CB不安だからどうしよう、というアルメリア戦から打って変わって、どうでもよくなっちゃったような開き直りがあった。シメオネ、それでいいんだよ。
あとはグリーズマンの様子のおかしいパフォーマンス。3得点全てに関与したが、それ以外にもプレス回避で大きくサイドを変えるボールはバジャドリードからすると厄介だった。プレスに行く意味がなくなる。モリーナが活き活きと走り回っていた。
あとは得意の一人でボールを奪い切るプレスが効きまくった。2,3回単独でチャンスを作った。なんであんな簡単そうに取れるんだ。
この日はコケも活き活きと。ルマルとグリーズマンが付近にいる状態でCBもヴィツェルとエルモソ。自在にボールを動かしプレス回避の中心に。センターサークル付近からの配球も長短使い分け、ピッチ上の全員とリンクした。グリーズマンとコレアを狙った強烈なくさびも何度も飛び出し、相手の中盤に後ろを向かせた。
あとはモリーナ。コレアとジョレンテをサポートするのが彼の重要なタスクだが、この試合ではサポートだけに留まらず積極的に背後へボールを引き出してトライアングルを回した。このくらいのパワーバランスの方がジョレンテもやりやすそうに見えた。
ラージョに勝利したソシエダとの7ポイント差は変わらず。いつになく団子状態のプリメーラ。抜け出すべく積み重ねましょう。さあミッドウィークはコパ。マドリーダービー。
1/21
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 3-0 バジャドリード
得点者
【アトレティコ】’18 モラタ ’23 グリーズマン ’28 エルモソ
●ピックアッププレー
お久しぶりに。この日のモラタの先制点をピックアップする。
バジャドリードのブロックは5-3-2で低く構えられているようだが、アトレティコ相手に色んなところで後手に回っている。
まずアトレティコはエルモソを後方に残してヴィツェル、コケ、ルマルの3枚で相手2トップのマークを外し、どこからでも縦パスを刺せる環境にある。出し手の優位性。
そしてアトレティコの攻撃の基本線となる右サイドのトライアングルはブロックの外でコケからの配球を待ち、ボールの受け取り、チャンネル抜け、サポート、3人が自在にポジションを取れるように立つ。この時点でバジャドリードの左IHと左WBはすでに、サポートが来てくれないと人が足りない。同数でも止められるのかわからないのに。左CBのダビド・トーレスはこのサポートに意識を持っていかれている。そもそも左IHが引っ張られすぎており、中盤ラインが大きく左に傾いている。結果、右WBのルイス・ペレスは大外でフリーのヘイニウドと、ルマルの突進に晒されている。内側をサポートすることが難しい環境にある。
これらの環境により、5-3のブロックを作っているにも関わらずモラタ&グリーズマンに対して2vs2が生まれてしまった。
さらにバジャドリードはエル・ヤミクがモラタにマンツーマン気味についていく性質があり、5バックの誰が最後尾にいるのかが終始ふわついていた。こうなると守りにくい事この上ない。
得点のシーンではコケのくさびの質が非常に高い。フリーだし。グリーズマンがボールにコンタクトする時点でハビ・サンチェスは飛び出す選択することもできない状況だった。ハビ・サンチェスの立ち位置がふわついた瞬間にダイレクトのフリックが入り、横移動したモラタが裏抜けしている。上手かったね。
いつの間にか2vs2+フリーの出し手のコケ、という3vs2でプレーしていた。見事に3人の向かう方向が揃った得点。
●ピックアップ選手
グリーズマン
3点全てに絡む完璧な活躍。どれも見慣れたプレーだ。いつものグリーズマン。当然のMOM。
コケ
常にボール保持の中心にいて彼がボールの循環を支配した。こうあるべきだ。このようにプレーすべき選手。
モラタ
マークするエル・ヤミクを常に上回った。先制点含め裏を取りに行くランニングが見事
エルモソ
長短の配球の調子が戻ってきており、この日は空中戦の強さも強調された。最終ラインの管理をリードした良いパフォーマンス。得点はご褒美だったが、これも彼の長所だ。
モリーナ
自信を持ってコレアとジョレンテを動かした。ボールタッチも良くグリーズマンへのアシストは加入当初から彼に求められていたボール。ハマりがちだったビルドアップはどうにかしてほしい
メンフィス
ホームでデビュー。ようこそ。求められていることはチームを勝たせること。共に行きましょう。