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楽をしようだなんて CL3節 アトレティコvsセルティック(A) 2023.10.25

代表ウィークを挟んで公式6連勝と好調のアトレティコはアウェーでセルティック戦。1勝1分で迎えたここを勝てるとかなり有利に進められる。
一方のセルティックはここまで2連敗。突破を狙うならアトレティコとの連戦で4ポイントは取りたいところで、そうなるとこのホームの3節では勝利が欲しい。攻撃的に来ると予想される。




●スタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / デ・パウル / コケ / サウル / ハビ・ガラン
グリーズマン / モラタ

サヴィッチが復帰。
ハビ・ガランはようやく初スタメン。

・セルティック
ハート
ジョンストン / カーター=ヴィッカース / スケールズ / テイラー
マクレガー / オライリー / 旗手
前田 / パルマ / 古橋

WGはパルマに戻った。CBにカーター=ヴィッカースが起用される。



●前半

前半特徴的だったのは積極的にいったアトレティコのプレスが後手に回った事と、セルティックのプレスが速かった事。

非保持基本形

セルティックのボール保持は2CBとアンカーポジションのマクレガーが中央レーンに立ち、両WGは大外でアトレティコのWBと対面。SBが出口になりながらIHの押し引きを駆け引きする展開となる。特に変わった点はなく、アトレティコが対応を狂わされるような独自のソリューションがあったわけでもない。違った点はアトレティコ側のIHの対応。特にサウル。空いた位置でボールを持つ相手SBジョンストンの選択肢を奪おうと早めにプレスに行った。
先季も指摘した時期が何度かあったが、現状のアトレティコの守備形は前から奪いに行こうとしてリターンが少ない。そういう展開が多い。この日も、大きく広がったセルティックの3トップの間を繋ぐ両IH(オライリー&旗手)を最大限に警戒すべきであり、少なくとも序盤はこの2人がどこでボールに関わろうとするのかを確認していく時間帯にすべきだった。キックオフから強めのプレスを意識したのはアウェーゲームで持つべきファイティングポーズだったか、先制して確実に3ポイントを取る相手と判断していたか。いずれにしても当ては外された。

4分の古橋の先制ゴールに繋がった場面。はっきりと断っておくがこのシーンの古橋のパスムーブ、侵入ルートは今週のCLベストゴール候補になっていい質の高さで、ダイレクトでこのコースを狙って通したオライリーのボールも見事だった。防ぐ事の出来ないスーパーゴールだった事は伝えておく。
その上で、ジョンストンにロングボールを蹴らせる意図を持ったサウルのプレスは安易かつ中途半端で、効果のないものだった。自分が出ていった背後をフリーで使われたのは、前半4分にやることではなかった。

このアトレティコIHの守備対応がロッカールームの指示だったかサウル個人の判断だったかは微妙なところだ。最近のアトレティコは個人の質で守備組織の改善を成り立たせていた部分があり、ある程度の自己判断を許容していた可能性がある。最近IHの選手交代、特にデ・パウル→ジョレンテの差異で一気に展開を変えることも多い。ちなみにこの試合もそうなる。後述する左WBにしても、後半に形を変えることなくリケルメの投入で守備を改善することになる。
そしてこの日の前半のメンツならばプレスのスイッチを入れる立場にあるのがサウルである事も否定しない。
早めの失点後にもこの対応に変更はなかった。それによって尚更ベンチからの指示なのか、同点に追いつくためにボールを追いかける必要があるというピッチ内の選択なのかがボヤけていった。そこに至ってそもそもおれは相手SBを狙うべきではないし、失点したとて前に出る必要はないと思っていたものだから現状との乖離だけ大きく開いていった。


失点後も継続した問題点は主に2つ。
・セルティックが同数で当たられるプレスの回避が思った以上に上手かった点
・ハビ・ガランが前田大然に対してあまりにも後手だった点
の2つである。それを生み出していたのはセルティックの速い縦パスの正確さと、オライリー、パルマを中心にハイサイドを狙うロングボールが正確だったところ。

アトレティコはIH(サウル)が相手SB(ジョンストン)に圧力を掛ける所をプレスの開始位置としたが、セルティックは縦のパスコースまでIH(オライリー)が開いてポジションしてレシーバーとなり、WG(前田)がその先で待っている形で何度も前進を見せた。

フリーでサポートするマクレガーの技術も確実性があり、速いパス回しをされるとグリーズマンとモラタが守備陣をサポートするポジションを取れず、全くプレスはハマらなかった。
そしてパルマから逆サイド大外の前田に正確なサイドチェンジが飛んできて、中途半端な空中戦の競り合いで入れ替わられる事を警戒したハビ・ガランがこの対応に常に苦戦。また、これまでの試合は左CBから縦パスを引き出す旗手の存在がセルティックの前進の手段になっていたが、旗手が7分に負傷で退いてしまったことがセルティックにとってさらに前田のサイドを擦る要因となり、ハビ・ガランはさらに苦しんでいった。
上記先制のシーンでは隣のエルモソがハイボールに対するカバーよりも目の前のオライリーを気にしていたが、それがハビ・ガランの腰が引けていた理由ならピッチにいない方がいい。外部要因を全て理解した上で見ても、期待外れのパフォーマンスだった。45分での交代はやむを得ない。


アトレティコはボールを持てなかったわけではないがセルティックの再奪回が速く、特に抜け切ったと思ったところにコケ、デ・パウル目掛けて背中からもう一度駆け寄ってくる前田、古橋のプレスバックに苦戦し、中央で落ち着いてボールを持てなかった。コケとデ・パウルはあまりピッチと相性が良くなさそうだったのも気になった。ちょっとスリッピーだったような。セルティックの選手達は速い縦パスをバシバシ通していたのでなかなか慣れの差は大きそうな試合だった。

アトレティコの同点ゴールは右サイドから。最後はデ・パウル→モリーナのパスでPK奪取したが、全体的にこういうポケット侵入を繰り返せばそんなに難しい試合じゃないはずだなという実感。後半のジョレンテ投入は当然の帰結であった。

そして28分に2点目を失う。また前半で2失点。今月3度目である。さすがにいい加減にしてほしい。

サイドは違うがこちらもIHの押し引きで取られた。デ・パウルは元々、勝手にプレスに出ていくタイプのくせに本来自分がいるべきポジションを使われる事を嫌う。よく言えば2度追いが上手い。自分のケツを自分で拭けるタイプ。この場面では背後のパウロ・ベルナルドが内側を使うのか外側を使うのかをチラチラ確認しながら、内側へのパスコースを切ってテイラーに寄せていったらWGがモリーナの背後を狙っていた、しかもそれが前田でした。ということで思いっきり裏を取られて、最後は大外のパルマが2,3秒余裕をもって右足を振り抜いた。サヴィッチがパウロ・ベルナルドを警戒するポジションを取れていたのが逆に背後を取られたタイミングで裏目に出ており、ここの対応はチームで確認した方がいい。ちょっとIHのノリの風味が強すぎた。裏を取れたタイミングで一気にPA内に飛び込んでくるセルティックのラッシュは準備されていてなかなか迫力がある。


●前半終了

1-2で折り返し。結果的にホームの観客にとって堪らない展開の45分を過ごしたのは、アトレティコにはネガティブである。繰り返すが個人的にはもっとスローに入っていい前半だった。ピッチ慣れの差も大きく感じ、常にギャップがあった。アトレティコの選手間でも状況に差があったように見えた。

それでもスコアが動いていなければ問題ない(後半一気に改善すればいい)が最近はここで2点取られてしまうのがしんどい。結果ジョレンテとリケルメの投入が早くなり、すぐに同点に追いつけたのは因果。後半を見ていく。



●後半

・後半の変更点
アトレティコはサウル、ハビ・ガランを下げてジョレンテとリケルメ。

後半開始時

この交代で変わった事と変わらなかった事がある。変わらなかったのは守備の方法。IHが相手SBを捕まえにいく形を変えなかった。変わったのはリケルメが前田を自由にしなくなった事。ここで優位に立てるならプレスは"ハマっていることになる"
もう一つ変わらなかったのはエルモソ周辺のプレス回避を継続した事。変わったのは、中央でボールを触りに来るグリーズマンよりも前にいる選手が、前半はモラタだけだったが後半はジョレンテとリケルメが加わった事。

特にジョレンテの突進を誰がどう止めるのかをセルティックが設計しきれないまま、53分にジョレンテ→モラタのクロスで同点に追いつくことに成功。取り組みを何も変えずに、交代で入ってきた2人の質で戦況を変えたのはかなり高く評価されていい。まだ40分近い時間を残し、アトレティコは同じことを繰り返し続ければ勝ち越し点が産まれる雰囲気を持ち始めた。


・セルティックの手当
ここでセルティックが手当をした。この対応が早かったのはブレンダン・ロジャースの英断。WGのパルマを下げてCBのナサニエル・フィリップスを投入。

CBを増やした。
単純に守備的にした、という印象ではなくジョレンテが突進してくるアトレティコの右ハーフスペースに人を置き、両サイドはジョンストン&テイラーの気合いに賭けた。

ジョレンテの突進を手当

個人的には前田の対応から解放されたリケルメがジョンストンを圧倒するような場面が一つもなかったのは不満。この配置変更でメリットが出るのは彼のはずだった。この日のリケルメの評価は「ハビ・ガランよりはマシだった」程度に留める。もっとやれる。

後ろが3枚になったセルティックは再びボールを持つ時間を作り始め、アトレティコの勢いを削いでいった。ジョンストンが高い位置でボールに関わり、オライリーが真っ直ぐポケットに走る形はヒメネスとヘイニウドがいないアトレティコにとっては泣きどころで、あまり擦られたくない箇所。
しかしセルティック側としても2トップが古橋と前田というのはあまり怖さがなかった。なんか、ギリシャ代表かなんかのFWいませんでしたっけね。終盤古橋に替わって出てきたジェームズ・フォレストという選手もターゲットっぽくはなかった。

アトレティコはモリーナ&ジョレンテが部位破壊を狙い続ける展開だったのでさっさとコレアを入れたかったが、73分まで待つことになったのも、セルティックの配置変更を確認し判断を遅らせることになったと思われる。CBの枚数が増えたとはいえ、引き続き右サイド部位破壊を継続することを確認してからの投入だったと思われる。CLの選手交代はこういう駆け引きを生むから面白いです。ただアトレティコは他に選択肢があるわけじゃないんだからさっさと入れろとも思った。
セルティックはさすがに中盤の選手達のスタミナが厳しくなり、2トップをサポートすることができなくなっていく。韓国人勢を入れて手数を増やすかなと思ったが、それはやらなかった。何故でしょう

82分にデ・パウルが自分のボールロストの尻拭いに足を出して2枚目のイエロー。退場となってここで終戦。ミドルシュートを打たずにパスを選択したところでのボールロストは少し彼らしくはなかったが、忘れていい。というか1枚目のわけわからん抗議をどうにかしろ



●試合結果

手痛いドローでグループを面白くした。6ポイントのフェイエノールトを1ポイント差で追うことに。すぐ後ろにラツィオがいる。相変わらず楽はできない。

不必要に積極的だったプレスは利益をもたらすことはなかった。そしてプレスがハマらないと自陣ゴール前の我慢が効かない。さすがにCLは誤魔化しが効かないですね。ヒメネスが悪いです。
明確な修正箇所を後半頭から正し、それでいてプレスをやめなかったのはホームでのリターンマッチも見据えたマネジメントだったのかもしれない。炙り出しの作業。答えは2週間後にわかる。
リケルメとジョレンテは自身のタスクを把握して後半開始から試合の雰囲気を変えたのは見事。ただし再度言うがリケルメに期待しているのは打開することで、そこは不十分だった。
ハビ・ガランは移籍後初めてのスタメン起用がCLのアウェーゲームだった。対面する相手のスピード感に戸惑い、難しい試合ではあっただろうがそれにしてもがっかりするパフォーマンスに終始。むしろトラウマになるようなやられ方をする前に交代させることができてよかった。
しかし彼はこんなものじゃない。何年もラリーガで彼を見てきた。アトレティコに欲しい選手だと思い続けてきた。まだチャンスは来る。ハビ・ガランはこんなものじゃないです。必ず這い上がれる。


セルティックは前半から自分達が縦に速いことを理解し、その武器を生かす攻撃を繰り出してきた。ホームの利もあってアトレティコがピッチに慣れずパスレシーブに苦しむとさらにプレスを強めて怖がらせていった。ブレンダン・ロジャースの配置変更とそれに応えた選手のリアクションは見事で、3点目を狙うアトレティコの勢いを削ぐことに成功した。3バックは普段からやっているんだろうか。もちろん本音はホームで攻め倒して3ポイントを取ることだっただろうが、継続していれば高確率でアトレティコに決定機を作られる隙が生まれていたはず。良いバランス感覚だった。これでロスタイムにCKから決めちゃったりするのが英国風なのだろう。

ということでアトレティコは早めに首位独走とはいかず、素直に後半3試合を一つずつ取っていくことになる。まずはホームのリターンマッチで、ここでまた引き分けるようだといきなり首位通過が遠のくことになる。毎度お馴染み苦しみのグループステージ。ヒリヒリしていきましょうね。


10/25
セルティック・パーク
セルティック 2-2 アトレティコ
得点者
【セルティック】’4 古橋 ’28 パルマ
【アトレティコ】’25 グリーズマン ’53 モラタ



●ピックアップ選手

ジョレンテ
後半から投入されて真っ直ぐ敵陣に飛び込んでいくドリブルで展開を変えた。モラタの同点ゴールに導いたアーリークロスはジョレンテらしい一発。

ヴィツェル
好調を維持。ビルドアップにストレスがかかる試合だったが冷静に抜け道を探した。前半ついにアトレティコ初ゴールかと思われるヘディングを決めたが惜しくもオフサイド。

コレア
終盤にエリアが狭くなってからの投入で特徴を出した。地味にリケルメとタイミングが合わないプレーが多い。

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