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ここからまた 1節 アトレティコvsビジャレアル(A) 2024.8.19


準備もそこそこにラリーガ開幕。
最後に登場するのはビジャレアルとアトレティコ。先季8位のビジャレアルも4位のアトレティコも目標に届かなかったシーズンからの巻き返しを狙う。

しかし補強の色味は大きく異なる。ビジャレアルはスタメン級だけを見ても
フィリップ・ヨルゲンセン(→チェルシー)
アイサ・マンディ(→リール)
ホルヘ・クエンカ(→フルアム)
アルベルト・モレノ(→コモ)
エティエンヌ・カプエ(→未定)
ゴンサロ・ゲデス(→ウォルバーハンプトン)※レンタルバック
ホセ・ルイス・モラレス(→レバンテ)
アレクサンドル・スルロット(→アトレティコ)
が抜けた。トリゲロスもグラナダへ。
補強はセルジ・カルドナ(←ラス・パルマス)、パプ・ゲイェ(←マルセイユ)など。駆け込みでアヨセ・ペレス(←ベティス)を確保。

アトレティコは最終ラインからステファン・サヴィッチ(→トラブゾンスポル)、マリオ・エルモソ(→未定)が抜け、代表選手のロビン・ル・ノルマン(←ソシエダ)を補強。前線はグリーズマンの相棒にアレクサンドル・スルロット(←ビジャレアル)と今年のラリーガの目玉、フリアン・アルバレス(←マンチェスターシティ)を獲得。システム含め様子を見ていこう。





●スタメン

開幕戦のスタメン。

・アトレティコ
オブラク
アスピリクエタ / ヴィツェル / ル・ノルマン / ヘイニウド
ジョレンテ / コケ / バリオス / リーノ
グリーズマン / スルロット

新加入のル・ノルマン、スルロットがスタメン。スルロットは早速の古巣対決。ヘイニウドをスタメンで起用した。オリンピックから帰ってきたバリオスはスタメンで背番号8をお披露目。

・ビジャレアル
コンデ
フェメニア / バイリー / アルビオル / セルジ・カルドナ
パレホ / コメサニャ / バエナ
ジェレミー・ピノ / ジェラール・モレノ / ダンジュマ

GKは新加入のコンデ。セルジ・カルドナもスタメンに。プレミアから帰ってきたダンジュマがFWに入る。
ジェレミー・ピノがスタメンに入り、昨年11月13日のアトレティコ戦以来の公式戦復帰となった。おめでとう。



●前半

良くボールを持った前半。非保持形と保持形をそれぞれじっくりと観察してみよう。開幕戦だしね。非保持から。

非保持

5-4-1とも5-3-2とも言わない。しつこいようだがどちらも出来る必要がある。両方。
シンプルに考えてグリーズマンに5-4-1のSHをやらせるのは機会損失になるわけで。前プレするならグリーズマンは相手CB付近にいた方が良いに決まっているしプレス回避するならピッチ中央にいた方が良いに決まっている。アトレティコの守備はグリーズマン抜きで成り立つ前提の上にグリーズマンの個人能力が乗っかるべきである。

この日はビジャレアルの配球が左側が主。アトレティコの右サイド側に寄った。ではセルジ・カルドナのところまでジョレンテが前進出来る環境の方が前向きに守れるわけで、そうなればグリーズマンはバイリー付近を担当する良い形で配置出来た。アスピリクエタにサイドの対応を任せる事が出来るのがこの日のスタメンの狙い。
この場合ポジティブトランジションでリーノに何が出来るでしょうという課題は出てくるだろうが、この日のリーノは全体的に難しい仕事を請け負いすぎていた印象がある。

さてこの守り方の欠点を指摘しようと思った場合、先制点の場面を切り抜けば良い。ヴィツェルのスピードである。

ここ

ダンジュマ速いなという話で終わりで良いのかもしれないが、ヴィツェルを外側に晒す形は好ましくないわけで。ちなみにダンジュマの左足はおもちゃなので巧みに左足でシュートを打つように誘導したヴィツェルは上手く対応したと思う。入っちゃったけど。それよりもバエナを捕まえに前に出て行ったアスピリクエタはチームの約束事なのか?個人的には勝手に出て行ったように見えた。全体のバランスが見えていない身勝手なシーンだったように思う。
この失点をきっかけにジョレンテがセルジ・カルドナを捕まえる配置は自重され5-3-2色を強めていった。せっかくの設定が失点で狂ったのと同時にこれでよりリーノのタスクが難しくなっていく事に。

そもそも5-3-2で構えればバエナにライン間でボールを引き出される事になり、大外を駆け上がるセルジ・カルドナの対応でジョレンテが引っ張られる。そうなるとトランジションは一層リーノに依存するようになり、IHポジションにリーノ自身が配されている事によってサポートが少ない環境に陥りこの配置は前半までですね、という感覚が強まった。これが25分頃。

ジョレンテが低い位置に


翻って保持。

保持

アトレティコは後方3枚。配球の上手い3人が並んだ。コケとバリオスが手前を担当して右大外はジョレンテ。左はヘイニウドでリーノは意識的に内側へ。
ビジャレアルはお馴染みマルセリーノ・ガルシア・トラルの4-4-2。尚マルセリーノは先季のどこかのタイミングの退席処分でベンチにいない。
ビジャレアル側の設定は左SHバエナが前に出る事と、コメサニャがコケに張り付く事の2点。

バエナが前に出てくるという事はジョレンテの対応をセルジ・カルドナが概ね一人で担当する事になり、ここにグリーズマン、バリオスが近づく事がアトレティコの最初の突破口となる。特にバリオスはジョレンテの手前のスペースを使ってボールを引き出してジョレンテを高い位置へ進めていく。13分にはその形からジョレンテ→リーノの決定機。

ちなみにル・ノルマンがボールを持つとコメサニャはコケのマークを離して4-4ライン形成を優先するが、そういうコケの動きに連動する意図をあまり持たないのがバリオスのバリオスたる所以である。まあ良いでしょう。この動きが20分のジョレンテのゴールを産んだ事も事実であり、バリオス&ジョレンテの右サイド連携は先季終盤からさらに磨きがかかり、前半ロスタイムの2点目にも繋がっている。まあ「大型補強しといてやる事はジョレンテ作戦かい」と言われれば特に言い返す事はない。そうです。
グリーズマン以外にクリエイティブに欠ける筋肉編成で押し込んだ局面で何が出来るかを見てみると35分にコケ→リーノで決定機を作っており、これは良くやったなという形。その流れで受けたカウンターからCKで2点目を取られているのはご愛嬌。



●前半終了

2-2で折り返した。2失点はいずれもヴィツェルが絡んだが、はっきり言ってヒメネスだったらどちらも起きなかった失点である。セットプレーはともかく1点目は、後ろ4枚で圧力を掛けたいならばヴィツェルは弱点になるというのは何も今初めて見る場面ではない。ここは後半実際にヒメネスに替わる事になる。

保持局面ではジョレンテ周辺を擦り続けた45分間で2点取れているのでそれで良いだろう。バリオスの関与が非常に良くほぼ仕事がなかったスルロットもロスタイムにきっちりゴールを決めている。彼については最後に少し詳細に書く。後半3点目を取りたかったら能動的にラストサードを攻略する選択肢が必要となり、リーノを大外に動かす事とコレアの投入辺りが容易に想像出来た。あとはアルバレスがどんな魔法を使うのかワクワクしながら後半へ。


●後半

ヒメネスとコレアを投入。45分でスルロットを下げたのは意外だったがもはやテスト段階は終わっているという事でしょう。

後半開始時

この交代でグリーズマンが左へ移動。ちなみに特に効果はなかった。
アトレティコは右がジョレンテとバリオス、左はヘイニウドとリーノで打開を狙う形が明確になっていく。一方ビジャレアルはコメサニャがリーノの外側でボールを受ける形が定番化し、お互いにボールは持てるが決定機を欠く展開になっていき、選手交代フェーズへ移る。

先に動いたのはアトレティコで、ヘイニウド→モリーナを替えた。

MFより前はコケ以外全員スタートと位置が違う

これで右がモリーナとジョレンテに変わる。コレアの関与でポケットを取りにいくのはアトレティコ右サイドの定番。一方、IHのような立ち位置だったリーノがWBに移動する事になった。疲れそうだよね、こういう交代って。
アトレティコは大まかに"MFが一人増えたね"という配員になると同時にリーノのWB移動でプレス回避最強メンツに近づいていく。

結果的にこの交代は効果的ではなかったのだが、その要因はビジャレアルがそれほど積極的に3点目を取りに来なかった事に求めよう。もっとガンガン前がかりになってくれたら効果がありそうな配置だったが、モリーナ投入もリーノのWB移動も少しタイミングが早かった。

ところで左に動いたバリオスは数回ル・ノルマンに配球を指示して首を捻っていたがカメラの角度的に何を要求しているのかわからなかった。ジェスチャーから考えるに縦パスを刺せという指示だったように見えたが、さて。グリーズマンに縦パスを入れさせてレイオフを自分が受ける形がイメージ出来ていたというのなら面白いが、バリオスに限ってそんな事考えてないだろとも思ってしまう。もっとワクワクさせてほしいね。


64分のコケ→デ・パウルの交代は既に戦術的なものではなく出場時間起因であり、この辺からは追加点が取れたらいいねという緩やかな雰囲気になっていく。78分にグリーズマン→アルバレスを替えたがこれも同様。何か決定打を産む事はなかった。新加入の3人を一旦全員デビューさせられたのは良かったがもう少しこの試合に勝つための手段は見たかった。

ビジャレアルは71分にパプ・ゲイェ、ニコラ・ペペ、イリアスが出てきた。スピードとパワーを追加出来る選手達でこれからスタメンにどのように絡んでくるか楽しみ。イリアスも相変わらず状態は良さそうだった。さらにアヨセ・ペレスもお試し出場。お互いにあまりゴールへの手順を整理出来るでもなく決定打を欠き、開幕戦を引き分けで終えた。



●試合結果

アウェーでの開幕戦は2-2で引き分け。慌ただしいシーズンの始まりだったが無事始まった。
後半の選手交代を見てもこの試合はまだ勝利よりもお試し出場などが多くベストなソリューションを見られるのはまだ先だろう。とはいえ来週はジローナ戦がありその次はミッドウィークに試合がある。3節が終わればCLのドローがある。この試合の引き分けに文句を言うつもりはないにしても、準備期間はこの試合までとしたい。

ル・ノルマンがすんなり仕組みに入れたのは流石。代表でもそうだがシステムに対して柔軟な選手。
スルロットは点を取った事に尽きる。それだけ求められているのだからそれでいい。既存の選手達について気づいた事などはこの後に書いていく。

ビジャレアルは大きくメンバーが変わったが、まあパレホとバエナがいてジェラール・モレノがいればこういうサッカーがちゃんと出来るんだなという感じ。オブラクとコケがいてグリーズマンがいれば、みたいな雰囲気に似てる。マルセリーノ好みのスカッドに寄っていっている雰囲気もあるので怪我さえなければ上位を狙えるシーズンになりそう。尚、フォイス。


また始まった。一度は真剣にやめようと思ったマッチレビュー。懲りずに書いていきます。初心に戻った気持ちで。あらためて今季もよろしくお願いします。


8/19
エスタディオ・デ・ラ・セラミカ
ビジャレアル 2-2 アトレティコ
得点者
【ビジャレアル】’18 ダンジュマ ’37 OG(コケ)
【アトレティコ】’20 ジョレンテ ’45+5 スルロット



●ピックアップ選手

ジョレンテ
2年連続の開幕戦ゴール。特に前半は彼の侵入が生命線となった。メンツ的に大外の仕事に集中するシーズンとなるか。

ル・ノルマン
早速のフル出場で存在感を示した。ネガトラ対応のポジションを中心に見ていたが高い位置でサポートポジションを取る事が多かった。カードは10数枚は貰う役回りになりそう。

スルロット
ボールへの関与は少なかったが古巣相手にしっかり結果を出した。シュートパターンは今後確認していく。

リーノ
この日は内側で。疲れる仕事だったが完遂したのは流石。決定機は決めたかった。

バリオス
新8番。コンディションは上々で正しいかどうかは置いといてボールを要求する姿勢が多かった。自信があってボールをプレーしたいお年頃。グリーズマン&アルバレスとコンビネーションを築く事が自身の価値に繋がる。


●myQA

新コーナー。試合を見ていて疑問に思った事をどこかにまとめてないと「前もこんな事思ったな」で流れていくのでちゃんとまとめていこう。答えが見つかった時に掘り起こして自分で回答していく。自分で疑問に思って自分で答えていく。my Q&A。この試合では5つ。


1-1 スルロットの45分
アトレティコデビュー戦は45分の出場でボールタッチ15回、1ゴール。体感は4タッチくらいしかしていなかったが。ワンチャンスで結果を出したのは良い事で、もう一点良かったのは中央レーンから逃げなかった事
前半、明らかに右サイドのジョレンテからのクロスが多かったアトレティコは、ファーサイドでリーノ、ヘイニウドが合わせる形でチャンスを複数作っていたが、スルロットはあくまでも中央レーンから逃げず、相手CBをしっかり引きつけてポジションしており、その動きがファーサイドの味方をフリーにしていた。これはすぐファーサイドの合わせやすい位置に移動していくモラタにはなかった事で、ゴール前の仕事内容はモラタより数段ハイレベルである。今後も注視したい。

1-2 ル・ノルマンのタスク
左HVでスタメン出場。最終盤はアスピリクエタと入れ替わって右に移動していたがイエローを貰っていた影響で誰か(イリアスなのか?)との対戦を避ける狙いだったのだろうか。攻撃面の理由ではなかったように思う。
地上戦、空中戦通じて守備対応は全く問題なく、攻撃でも保持に関与する能力は想定通り。右が良いのか左が良いのかはこれからも見ていこう。真ん中が良い可能性まである。

1-3 コレアのタスク2024
後半からスルロットに替わって投入された。
コレアの得意な仕事といえば右サイドでジョレンテやモリーナとコンビネーションを使ってポケットを攻略する攻撃や相手DFの背後を出し抜くプレーにある。最終ラインと駆け引きする事でグリーズマンが前向きでボールを受けるスペースを生む事も。
今季で言えばその辺の仕事は大体アルバレスに出来るのではないか。コレアにしか出来ない仕事を改めて見出していく必要がある。この試合もコンディションに問題がなければ後半頭からアルバレスが出てきたと思われる。そして前半に比べて右サイドの攻撃を活性化させられたかというと出来ていない(コロコロ配置が変わった影響はもちろんある)。

1-4 アルバレスの起用法
78分から出場。まだまだお試しの域を出ないのと、個人的にマンチェスターシティでのプレーやアルゼンチン代表での印象だけで彼の特徴を語るつもりはない。一つ一つじっくり確認していこう。ようこそアトレティコへ。

1-5 リーノの長所とは
この日はIHに近い役割。ゴールの近くにいる事のメリットは右からのクロスに飛び込んだ決定機2つに代表されるが、ある意味この役割をサウルがやれてリーノが大外でドリブル勝負出来た先季から考えると弱体化と捉える。
リーノ本来の良さは縦方向の挙動にあり、それはやはり大外レーンでこそ生きる能力である。また、対峙する相手を押し込んで進んでいくドリブルは相手SBと対面してこそチームに利益があるだろう。先季からリケルメと併用される際はリーノが内、リケルメが外が定番だったが、低い位置のプレス回避への関与も含めてリーノは外側でプレーすべきかと。左サイドの今後のポイント。

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