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チラシの裏 22-23ラリーガ全チーム短評

今年もたくさん見てきたラリーガ。
チラシの裏に書き溜めた各チームのあれこれを公開していきます。
今季はおれの個人的なイチ押し選手も各チーム一人ずつ選出。




●1位:バルサ

勝ち点88 28勝4分6敗
70得点20失点
国王杯:ベスト4
スーペルコパ:優勝
CL:GS3位
EL:プレーオフ敗退

金のことやら審判団体のお偉いさんと距離が近すぎるやらで大騒ぎしながらシーズンを独走したバルサ。レヴァンドフスキ、ハフィーニャ、クリステンセン、クンデ、ケシエ、マルコス・アロンソなど金がないと言いながら派手に補強し、贅沢に勝った。とにかく失点が少なくクリーンシート26回、1-0勝利11回、ホーム失点が4点ととんでもない安定感であった。マドリーとアトレティコに直接対決で勝ってあっさり独走。誰も止めることができないまま優勝を決めた。

その裏ではピケが引退、ブスケツが今季で契約満了、ジョルディ・アルバが19歳にレギュラーを取られる(退団も発表)、アンス・ファティが途中出場ばっかりで父親がキレるなど健康的ではない話題も振り撒いた。一瞬"やっぱ生え抜きすげぇ"となったセルジ・ロベルトもちょっと継続起用されたら普通に怪我して消えた。

バルサの話題となると"勝てばいいのか派閥"と"勝たなきゃ始まらない派閥"で揉め始め、今季で言えば確かにラリーガは独走したがCLはグループリーグでバイエルンに歯が立たず、グループ3位で回ったELプレーオフでマンチェスター・ユナイテッドに負けるなどどっちの派閥も黙らせてしまうような結果だったように思う。まあおれの意見なんてどうでもいいが今のバルサのサッカーを見てて面白いと思うこともほぼなく、美しくもないし圧倒的に強いわけでもないのでは、という目線で見ている。そしてその抜本的解決の手段をチャビは持っていないのでは?とも思っている。まあ来季を見てみよう。優勝おめでとうございます。

●がーすけのイチ押し選手
フレンキー・デ・ヨング
ビルドアップによる支配ではない何かにトライしていた感のある今季のバルサにおいて、中央のドリブルで全てを解決するフレンキーの活躍は割と不可欠だった。ここからチャビバルサがどこに進むのかよくわからないのでバルサにとってフレンキー・デ・ヨングとは何なのかもいまいちわからないが、ブスケツが退団する来季もいずれにしてもキーマンではあり続ける。残留するなら、だが。



●2位:マドリー

勝ち点78 24勝6分8敗
75得点36失点
国王杯:優勝
スーペルコパ:準優勝
CL:ベスト4
クラブW杯:優勝

苦しんだ。先季からずっと試合数が多く、シーズン途中にW杯もあった今季は一筋縄ではいかなかった。
ヴィニシウスとロドリゴが何故かずーっと元気だが、ベンゼマとメンディを筆頭に欠場者も多くいてなかなか最大出力を維持できないシーズンとなった。リュディガーを取っておいて良かったね。珍しくクルトワも負傷離脱するなど苦しい台所事情であった。
今季も冬頃から活躍し始めて"やっぱりナチョ!"と言われたナチョもとてもナチョ。久しぶりに召集された代表でも普通に活躍していた。残留してほしいね。
リュディガーと共に新加入のチュアメニは開幕から早速中盤の底にフィット。前任者カゼミーロ以上の攻撃性能を見せてチームの進化を進めた。そしてクロース&モドリッチの出場時間を調整しつつバルベルデとセバージョス、手薄な左SBでもとんでもない性能を見せたカマヴィンガなどが中盤を支えて緩やかな世代交代にも着手。しかし抜本的な解決策の提示に至らなかったことはCLマンチェスターシティ戦を見ても明らかだろう。
そして移籍するかもと言っていたアセンシオは相変わらずコスパの良すぎる得点能力で普通に重要な戦力だった。

バルサが全く負けないのでラリーガタイトルは難しかったが、クラブW杯と国王杯を取ったのは流石。スーペルコパは決勝のクラシコに負けてやいのやいの言われたが、今季も得意のCLを順調に勝ち進み、ベスト4。振り返ってみればよくやったシーズンだった気もする。

近年は獲得よりも退団が先にリリースされるイメージがあるが、今季もアセンシオ、アザール、マリアーノ、さらに最終節前日にベンゼマの退団が発表されFWは一新されることに。ベンゼマはレジェンドとしてクラブを去ることとなった。さあ、マドリーは何処へゆく。

●がーすけのイチ押し選手
カリム・ベンゼマ
今となってはBBC時代に"点を取れない選手"という扱いをされていたのは何だったのか。世界で一番点を取るのが上手い選手としてマドリーにタイトルをもたらした。ストライカーに要求される全てを持ち、ヴィニシウスを筆頭にチームメイトに多くを与えた。マドリーの歴史の中心に立つべき選手。お疲れ様。



●3位:アトレティコ

勝ち点77 23勝8分7敗
70得点33失点
国王杯:ベスト8
CL:GS4位

CLはシメオネ政権初のグループステージ最下位。
絶不調からの、W杯後の浮上。色々なことがあったシーズン。


アトレティコ・マドリーのシーズンレポートは近日公開!




●4位:ソシエダ

勝ち点71 21勝8分9敗
51得点35失点
国王杯:ベスト8
EL:ベスト16

じわじわと勝ち点を伸ばして3位も狙えそうだったソシエダ。終盤に失速して4位となったが、久々のCL出場権を獲得した。プリメーラ4位は2012-13シーズン以来である。意気揚々とタイトルを狙ったELではベスト16でモウリーニョのローマに2戦とも無得点に抑えられて敗戦。国内でも51ゴールと(上位を狙うなら)平凡な数字に終わったように結局上を狙うなら必要なのは理不尽な得点力で、エースストライカーのイサクが去ったチームは昇格組のアルメリアからウマル・サディークを獲得。移籍初戦で豪快なヘディングゴールを決めたが次の試合で大怪我。残念ながらシーズン終了に。結局先季同様にスルロットをストライカーに置いて戦ったが、さすがに上位崩しまでは難しかった。
それでも怪我から復帰したオヤルサバルに、久保建英とブライス・メンデスの新加入コンビが得点能力を発揮しスビメンディ、ミケル・メリーノ、ダビド・シルバ、イジャラメンディらで構成する中盤はラリーガ屈指のクオリティ。ボールを持って試合を支配するスタイルを完全に確立した。
最終ラインもCBのスベルディア&ル・ノルマンを中心に誰が出ても問題ない能力を持ち、しかもほぼ自前の選手。凄すぎ。
ちょこちょこ離脱者もいたがプレータイムを分け合いながら、GKレミーロを中心に安定した試合運びに寄与した。
ようやく覚醒の予感を感じたバレネチェアや新加入のモハメド・アリ=ショーなど単独突破型のWGを使おうという意図もしっかり感じられ、しかもなるべく自前で、最悪でも若手への先行投資でチームを作っているのはさすが育成の強豪。来季のCLはこのクラブの進む道を判断する場となる。

●がーすけのイチ押し選手
ブライス・メンデス
セルタ時代を見ていて、正直足を止めてボールをもらって侵入開始しかできない選手かと思っていたが大間違いだった。幅広くボールにコンタクトしてビルドアップの抜け道になりながら、ワイドのコンビネーションで味方の突破を助けた。自身も5節から8節の4試合連発を含む8ゴールでチームを牽引。
特徴が発揮されたのがネガティブトランジションで、ボールロスト後の再回収を手助けする能力はこのチームのスタイルに不可欠であった。久々の代表入りも見えてくる活躍で、来季は自身初のCLに挑む。



●5位:ビジャレアル

勝ち点64 19勝7分12敗
59得点40失点
国王杯:ベスト16
ECL:ベスト16

先季CLベスト4まで進んだビジャレアルは開幕前からエストゥピニャンがプレミアに引き抜かれるなど不穏なスタート。エースのジェラール・モレノは怪我とコンディション不良が続きW杯も欠場。しかも11節終了後にウナイ・エメリがアストンヴィラに引き抜かれる不安定なシーズン。冬には守護神のルリ、そしてダンジュマまで移籍。レンタル延長でクラブに残ってくれたロチェルソも怪我でW杯前後プレーできないなどベストメンバーをなかなか揃えることができなかった。コクランも怪我。相変わらずフォイスの稼働率も60%くらいだった。

そんな中でも若手の登用こそがこのクラブの生きる道。なかなか殻を破れなかったチュクウェゼが一皮剥けてようやくスタメンポジションを確保。中盤ではアトレティコのモリーナをキレさせた喧嘩キャラのアレックス・バエナが台頭し、プレミア移籍が破談になったニコラス・ジャクソンはいつの間にか最前線でルカクみたいなプレーをしている。ジローナで出番がなくなぜか獲得した22歳のラモン・テラッツも、セティエン就任後に普通にレギュラーとなった。ちなみにBチーム登録である。健康体で過ごしながら先季ほどのインパクトがなかったジェレミー・ピノはやや心配ではある。
ベテランのダニ・パレホやラウル・アルビオル、さらには突然レギュラーGKとなった40歳のペペ・レイナは一切の衰えを感じさせずチームの中心であり続けた。
全体的に健康でさえあれば引き続きCLを目指すクラブで、ある意味パワーバランスが一番掴みにくい。今季も美しく連勝して"いよいよか?"と思ったら突然連敗したりを繰り返していた。ELに挑む来季もまずは健康第一。あとは主力の引き抜きに耐えたい。

●がーすけのイチ押し選手
ニコラス・ジャクソン
先季はちょこちょこ試合に出てくる将来有望な若手だった。冬にはプレミアのボーンマス移籍目前となったがメディカルチェックで落ちて帰ってきた。爆発的なスピードと瞬発力を生かす方法を覚えたようで、後半戦は突然存在感を強めて覚醒。31節から36節までの6試合で4戦連発を含む8得点を固めて2桁到達。果たして来季はビジャレアルにいるのか。



●6位:ベティス

勝ち点60 17勝9分12敗
46得点41失点
国王杯:ベスト16
スーペルコパ:準決勝敗退
EL:ベスト16

ペジェグリーニ政権3季目のベティスは今季のラリーガでは珍しい継続路線で、補強はCBにラツィオからルイス・フェリペを獲得した以外はブラジル人アタッカーのルイス・エンリケ(ルイス・エンヒキ)の加入に留まった。一方で最終ラインは先季のスタメンからバルトラ、ベジェリンが抜けて冬にもアレックス・モレノがプレミアに引き抜かれて様変わり。あとおれのクリスティアン・テージョもアメリカへ移籍した。

今季のベティスはとにかく退場者。多すぎ。DFで退場しなかった奴誰だよ。毎週退場していた。
退場を抜きにしてもCBはどんぐりで結局誰がスタメンなのかわからないままシーズンが終わった。そして両SBは補強が進まず右はサバリ、左はミランダorアブネル・ヴィニシウスではCL権争いは苦しかった。ヴィニシウスはけっこう好み。
中盤から前は先季のメンバーが全員残ったが上手くいかず。先季は安定した保持からロングボールを飛ばして一気に侵入する形を擦り続けたが、高速で抜け出してそのロングボールをピタリと収めるファンミの離脱もあり、全体的にスピード感に乏しかった。引退を1年先延ばしにしたホアキンもさすがに相手を切り裂くクオリティを継続することは難しく、不完全燃焼に終わった。まあキャリア全体を見れば余裕の完全燃焼なのでいいでしょう。お疲れ様でした。大好きです。
アタッカーはカンテラーノのロドリ・サンチェスが定着したが大外の突破よりはラストサードの崩しの方が得意そうな選手で微妙に今のチームのニーズに合わなかった。冬にアヨセ・ペレスを連れてきたのはなんかわかる。
ギド・ロドリゲス、ウィリアム・カルバーリョ、アンドレス・グアルダード、セルヒオ・カナレスがフル稼働したMFだったが、頼みのフェキルが珍しく負傷離脱を繰り返した。ちなみにカナレスも2回の退場とついでに暴言で追加欠場している。やめなさい。
明るい話題はエースストライカーのパンダことボルハ・イグレシアスが今季も好調をキープしたこと。15ゴールで3季連続の2桁得点となった。プリメーラ自己最多は実は18-19シーズンの17ゴール(エスパニョール時代)。代表デビューも果たして30歳にして充実期を迎えている。それでも主力の離脱&レッドカード連発では厳しく、先季から得点数が16減って上位争いからは早々に脱落した。それでも6位で終われるのはベティスが強かったのか、他が微妙だったのか。

このチームは先季の時点で完成していた感があり、今季は継続して上位進出を狙ったが引き抜きと負傷離脱で思うような戦いができなかった、という結果に。来季以降はチームの解体も進みそうで、新たな軸が求められる。

●がーすけのイチ押し選手
フアン・ミランダ
何故か重用されないカンテラーノ。左SBで対人のクオリティもスピードもテクニックも問題なく、さっさと中心選手になってくれないと困る23歳。でかいし。ロングカウンターでしっかり相手ゴール前まで走れるのもポイント。セットプレーでも強みが出る。3CBでも便利そうな良い選手。



●7位:オサスナ

勝ち点53 15勝8分15敗
37得点42失点
国王杯:準優勝

ラリーガ中位の立場が確立されてきたオサスナ。低予算だが良い選手の揃う集団を今季もアラサテの手腕でまとめあげた。
しかしなかなか点の取れないシーズンだった。得点数は37で全体15位と苦しんだが、開幕から接戦をモノにし続け13節終了時点で7勝2分4敗の5位につけた。それまではチミー・アビラが6得点と絶好調。トップ昇格を果たした開幕時20歳の新星アイマール・オロスなどの活躍もあった。そして彼らの活躍を支えたのはビジャレアルから新加入のモイ・ゴメスのパスメイクで、W杯後からはバルサ産のWGアブデ・エザルズリが大活躍。パブロ・イバニェスという出自不明の24歳も普通に戦力になっていた。まじで何者だ?勝ったり負けたりを繰り返しながらも最後の最後まで集中力を保った戦いは見事で、最終節のジローナとの直接対決に勝って団子状態を抜け出し、7位でECL出場にこぎつけた。凄い。
国王杯ではクラブ史上2度目の決勝進出。マドリー相手に勇敢に戦った。(1-2で惜しくも敗戦)

このチームは先季から”下位クラブには負けない”という手堅い良さがあるが、今季はバレンシアに2つ、ヘタフェに2つ負けている。もったいないと言えばもったいない。
課題はやはりストライカーで、ブディミルにしてもキケ・ガルシアにしてもロングボールに競り合う以外何もできない試合が少なくなかった。そして電柱目掛けてロングボールを蹴る形自体がこのチームにマッチしているのかは常に疑問であった。
守備はCBのダビド・ガルシアを中心にゴール前で我慢を続けたシーズンだった。相棒はベテランのアリダネに頼った後半戦でもあり、数人抜けたらバランスが崩壊する危険性はありそう。ナチョ・ビダルの不在時右SBを埋めたモンカジョラのオールラウンド性能も光った。アンカーのルーカス・トロもいないと話が変わってきそうな雰囲気。来季も現実路線で勇敢に戦ってほしい。

●がーすけのイチ押し選手
アブデ・エザルズリ
オサスナの選手達にはない単独解決力をチームに付加し、新しい魅力を加えてみせた。ゴール方向に向かえる能力はチームの攻撃力を底上げし、非保持のファイトも好印象であった。



●8位:アトレティック

勝ち点51 14勝9分15敗
47得点43失点
国王杯:ベスト4

先季は4-4-2おじさんことマルセリーノ・ガルシア・トラルがグッドチームを作り上げて8位。今季チームを引き継いだのはエルネスト・バルベルデ。開幕から攻撃的なボール保持スタイルでいきなり魅力的なチームを作ってしまった。7節までを5勝1分1敗。その間に4得点の試合が3回あって16得点と猛威を振るった。ハイラインを維持しながらアンカーポジションに入ったミケル・ベスガが縦パスを刺しまくり、アレックス・ベレンゲルとニコ・ウィリアムズの快速コンビが大外を爆走。ライン間にムニアインとオイアン・サンセが入り込んでPAへアタックを続けた。中央を進みながらポケットへ侵入し、やり直して右SBのオスカル・デ・マルコスが放り込むピンポイントのアーリークロスも脅威となり、CFはイニャキ・ウィリアムズだけでなくダイレクトシュートの上手いニコラ・グルセタもシステムに組み込まれた。
ベスガにしてもダニ・ガルシアにしても、ボール保持やパスよりぶつかり合いに特徴があるタイプだと思っていたので驚きの転身。PSGから帰ってきたアンデル・エレーラも、稼働率は高くなかったがこの役割を担当した。
一気にスタメンポジションを掴みスペイン代表にも辿り着いたニコ・ウィリアムズはもちろん、システムが自身の特徴にハマりすぎているサンセも得点を奪いまくり、恐怖の攻撃サッカーを披露した。最終ラインの安定感と根性に全振りしたネガトラ対応は非常にこのクラブのカラーにマッチ。結局先季と同じ8位に終わったがワクワクさせる魅力的なチームであった。命を賭けている国王杯は3年連続準決勝に進んだが今季は決勝に行けず来季に期待。
一度不調になるとズルズル引き摺ってしまうところがあり、上位崩しにはまだ辿り着けなかったが来季も継続し、欧州圏へ届いてほしい。

●がーすけのイチ押し選手
アレックス・ベレンゲル
終盤に進むに連れてトーンダウンしていったが開幕当初のパフォーマンスは凄まじかった。トップスピードでPAに何度もアタックしていき単独で危険な存在に。彼の存在がムニアイン&サンセを解放していった。ウィリアムズ兄弟より速かった。ぜひフルシーズン健康で。代表入りが見たい。



●9位:マジョルカ

勝ち点50 14勝8分16敗
37得点43失点
国王杯:ベスト16

アギーレ率いるマジョルカは昇格2年目、早々に安全圏に到達して危なげなくフィニッシュした。
今季は主に後方の人数を増やして5バック。中盤もボールに強い選手を起用してカウンターで攻撃に参加する人数を制限する形で戦った。FWとイ・ガンインともう一人でCKまでは取ってこいみたいな攻撃でちゃんと任務をこなしてたから凄い。
それにしても"特徴的な電柱(ムリキ)を生かして戦ってください"と言われて実際電柱を活躍させてシーズンを乗り切れるチームなんてあんまりない気がするので、シンプルにアギーレ凄いなというシーズンだった。ムリキは15得点。文句無しにチームの顔だった。
そしてダニ・ロドリゲスやアントニオ・サンチェスなどのボールプレイヤーよりもスピードと強度を押し出すイ・ガンインやアマト・エンディアイェが優先されたのもチームの特徴であった。一番ボールに強いCHのイドリス・ババに欠場が多かったのは誤算だったが大怪我から復帰したルイス・デ・ガラレタがシーズン通して稼働。チームに不可欠な心臓となった。
最終ラインは別に誰も上手くないが全員大きな離脱なく戦えたのが大きかった。誰が移籍しても上手く組み込める仕組みなのかもね。右SBのパブロ・マフェオが相変わらずやんちゃで、たまに鉄砲玉のようにゴール前に突っ込んでくる魅力がある。ブライアン・オリバンが移籍した左SBはジャウメ・コスタが穴を開けず、新加入のコペテも左CBのレギュラーを確保した。この選手、エアバトルのスタッツめっちゃいい。運ぶドリブルもまあまあ上手かった(当社比)。おれはライージョとヴァリエントがどっちがどっちなのか永遠に覚えられません。終盤もホームゲームだけきっちり勝ち続ける手堅い戦いで、取りこぼすライバルを尻目に順調にポイントを重ねて終わってみれば9位。素晴らしい成績で終えた。
基本は来季も残留を念頭に継続路線になるだろうが、イ・ガンインが抜けたりすると一気に話が変わってくる気もする。いずれにしてもドリブル突破が得意なアタッカーと、ムリキがいない時にも点が取れる方法は欲しい。

●がーすけのイチ押し選手
イニゴ・ルイス・デ・ガラレタ
先季大怪我をしたが、今季開幕から躍動。テクニカルなスペイン人MFだが負けん気が強く球際が強烈。それを90分継続できる強さが彼の良さで、上手いだけの選手とは一線を画す。だから怪我が付き物なのだろう。
全く点を取らない選手だが、なんかミドルシュートは上手いイメージがある。トランジションでゴール前に飛び込めたりするともっと怖さを出せそう。まずは怪我せずシーズンを過ごせてよかった。



●10位:ジローナ

勝ち点49 13勝10分15敗
58得点55失点
国王杯:2回戦

シティグループの一員として、ヤン・コウトとヤンヘル・エレーラをシティからレンタル、アレイシ・ガルシアは元シティ、カステジャノスはシティグループのニューヨーク・シティの選手、ディナモキーウのツィガンコフを連れてくるなど派手に補強した昇格組。しかしそんな内容でケチが付くことがないくらいに躍動した。

最終ラインは自前のウルグアイ人サンティアゴ・ブエノを中心に規律を持ち、SBは右にヤン・コウトと人気銘柄アルナウ・マルティネス、左にミゲル・グティエレスとバレリー・フェルナンデスを配して普通に羨ましかった。そもそも最近のラリーガは右SBに困ってるチームが多いんだよな。
中央にバリバリのプレミアリーガーのオリオル・ロメウを置いて中盤を支配。そもそもロメウ&アレイシ・ガルシアの緩急の効いたコンビの配球を止める術がなかなかなく、いつもボールを握れた。そして豊富な2列目の人材が積極的にPAにアタックする攻撃的なサッカーで上位勢を苦しめた。特に目立ったのはアトレティコからレンタル中の23歳、ロドリゴ・リケルメ。左サイドから内も外も選択できる高性能な攻撃能力を見せてミドルシュートは常に脅威。保有元のアトレティコからもゴールを決めた。
これだけ攻撃的なスタイルだとストライカーに求められるのはポストプレーとPA内のワンタッチゴールの精度で、カステジャノス以上に印象に残ったのは36歳の大ベテラン、クリスティアン・ストゥアーニであった。昔からウルグアイ代表でカバーニが怪我した時かスアレスが退場した時に出てくる人。
ジローナで昇格プレーオフに何度も跳ね返されてきたキャプテンは引退前最後の花道かと思われたプリメーラのシーズンで普通に活躍して9ゴール。全然やれた。スタメン8試合しかないのに。
チームはリーグ5位の58ゴールを誇る豪快な攻撃力と共にゴール前の守備の緩さも共存。前半戦はクリーンシート無しで、結局合計で4回しか無失点試合を作れなかった。それでこの順位なんだから5失点くらい減らせば欧州圏行けた。
選手の数も多かったが見事まとめあげたミチェル監督の元、来季はさらに上を目指せそうなチームだ。

●がーすけのイチ押し選手
オリオル・ロメウ
こういうMFをラリーガは集めるべきだと思う。カゼミーロやファビーニョみたい、とは言い過ぎかもしれないが4-1-4-1のアンカーポジションで一人でフィルターになれてビルドアップタスクを担える存在。



●11位:ラージョ

勝ち点49 13勝10分15敗
45得点53失点
国王杯:Round32

昇格2年目だがすっかり中位クラブの仲間入り。今季もシーズンを通じて一番順位が低かったのは4節終了時点の14位(マジョルカとオサスナに連敗)で、それ以降は当然のように1桁順位に位置。特別大きな連勝があったわけでもなく、ホームで強かったがアウェー成績も全体11位と悪くない。普通に強かった。
2戦とも負けた相手はソシエダしかおらず、常に安定していた。上位相手もバルサに1勝1分、マドリーに1勝1敗、アトレティコに1分1敗と、だらしなかった第2グループよりも3強に牙を剥いた。欧州圏が手の届くところまで近づいたシーズンであった。

左サイドのガルシアコンビを中心にしたカウンターの切れ味はもちろんだが、今季は撤退した相手を効果的に崩す形を身につけた。上下動を繰り返すバリウ&フラン・ガルシアのSBコンビはラストサードでも効果的に攻撃に関与し、先季以上に働いた。この2人は控え不要の稼働率も本当にすごい。そして左利きのマジシャン、イシ・パラゾンがキャリア最高の活躍をし、右サイドから内側に入り込んでカットインからのミドルシュートでゴールを量産。チームを新たなステージに押し上げた。
FWは800万€かけたラウル・デ・トーマスが全く役に立たなかったがアトレティコからレンタルのセルヒオ・カメージョが6ゴール5アシストと及第点の活躍。さすがに出場が限定的になったファルカオと共に最前線を盛り上げた。最終ラインはアラベスから借りたフロリアン・ルジュンをカテナの相棒として固定。中央の強度を担保しつつ4ゴールとセットプレーを中心に攻撃にも貢献した。控えのムミンも良い働きをしていた。スタメンは9試合しかないのに強く印象に残っている。
そしてラージョはなんだかわからんが45分ほどまとめて試合を締め殺してグダグダ時間を過ごすことが多々あり、自分達も得点の匂いがしない一方相手にペースを全く与えず球際バトルに持ち込み、なんだかカウンターで一発、あるいはイシのミドルシュートで一撃、という試合を作れていた。ゲームクラッシャー。

このチームは先季から引き続き、とにかく怪我人が少ないのも特徴。良い準備ができているのももちろんあるだろうが、あまりにも運が良すぎるという印象もある。そして検証はしていないが日程がキツくなると勝ち点が取れなくなっていた印象もあり、これ以上の成績を求めるならばお金を出してくれる人も必要になるが、まあそれは望むべきではないのでしょう。
そしてこのチームは左サイドのアルバロ、フランのガルシアコンビが生命線であり、フラン・ガルシアがマドリーに帰る来季、アルバロがここ2季同様の品質を維持できるかどうか。意外と別物になってしまう危険性もある気がする。トップ下の35歳オスカル・トレホも引き続き替えが効かず、中盤はコメサニャのビジャレアル移籍が決まっているとの情報も。
そして何より、セグンダからクラブをプリメーラ中位まで押し上げた立役者のアンドニ・イラオラ監督の退任が決まった。当然CLクラブにチャレンジするべき人材であり、ステップアップは避けられなかった。悲しい別れだが、ラージョの進むべき指針を示した3年間の功績は計り知れない。後任監督にはきっちりとイラオラのサッカーを引継ぎ、次世代に繋いでもらいたい。

●がーすけのイチ押し選手
フラン・ガルシア
活躍”しすぎてしまって”マドリーに買い戻されることが決まった左SB。圧倒的上下動と球際の強さの強調でワールドクラスのSBになれる存在。実はアトレティコのコケの従兄弟。



●12位:セビージャ

勝ち点49 13勝10分15敗
47得点54失点
国王杯:ベスト8
CL:GS3位
EL:優勝

開幕前にジエゴ・カルロスとジュール・クンデのCBコンビが両方移籍。オカンポスやマルシャルもいなくなりこのクラブの中心は誰やねん状態で開幕から7戦で1勝2分4敗。ロペテギとお別れした。結局誰が中心選手なのかは誰もわからないまま日替わりのメンバーを起用しながらシーズンは進み、そして負け続けた。17節にジローナに負けた時点で3勝6分8敗で19位。セビージャが降格圏にいるのは何の冗談だろうか。
誰が点を取るのか、誰がゴールを守るのかもよくわからないままサンパオリは毎週のように選手、そして配置を入れ替え、その理由も最適解を探しているのかただ単に捏ねくり回しているのかすらよくわからなかった。
26節終了後にようやくサンパオリを解任。メンディリバルが気合を注入し規律(というか普通の約束事)を整理するとチームはやっと勝ち始めて5勝1分1敗で安全圏へ。最後は欧州権を争う位置まで戻ってきた。
そしてそんなチーム状況でも変わらず大得意のELでは無事決勝に辿り着き、モウリーニョのローマをPK戦で退けて通算7度目のEL制覇。ポット1でのCLに漕ぎつけた。すごい。

来季はメンディリバルの続投が決まり、CLへ向けて時間をかけて落とし込むことができればまた強いサッカーを見せてくれるはず。とはいえベテラン偏重、そしてスペイン人軽視のスカッドは正直得体が知れない。今季プレータイムが一番多かったのはグデリの4300分で、さらに35歳のラキティッチが3500分、アクーニャが3200分、ブヌを挟んで次が37歳ヘスス・ナバスの3000分だ。ちょっとまずいだろう。誰を中心に、どのようにチームを作っていくのか。ツギハギだらけのスカッドではまた崩壊が待っている気がする。

●がーすけのイチ押し選手
パプ・ゲイェ
冬にマルセイユからのローンで加入した。まあとにかくスケールが大きい。ハイボールと球際に強くて配球ができてスペースにランニングできる。スパーズにいたワニアマとかに似てる気がする。ハーフスペース突進が上手くてトランジションで一番強さが出るタイプだ。こういう選手、ラリーガに増えてほしいね



●13位:セルタ

勝ち点43 11勝10分17敗
43得点53失点
国王杯:Round32

セルタフリーダムは今季もチャラかった。先季の主力選手がブライス・メンデス、デニス・スアレスを筆頭にけっこう抜けて、アスパスの相棒も未確定。しかも開幕前にGKが誰もいなくなるなど、もう字面だけで普通に面白かった。

とりあえず中盤はオスカル・ロドリゲス、ルカ・デラトーレら新加入がそれなりに活躍し、すっかりスタメンポジションを掴んだ次のロボツカ(とは言われていない)のフラン・ベルトランを中心に置いてボール保持に勤しんだ。
最終ラインはアトレティックから借りたウナイ・ヌニェスが今季ラリーガの補強最大級の当たりで、空中戦のスタッツがとんでもないことに。ミンゲサも新しい種類のチャラさで攻撃を活性化させていたが気づいた頃には試合に出ていなかった。何があったんでしょう
アタッカーはシュートが入らない韋駄天カルレス・ペレスがアスパスと呼応して右サイドを席巻。最終的に点も取り始めた。そして中盤には一躍メガクラブ注目のタレントとなった20歳(今は21歳)のガブリ・ベイガがいきなり大活躍。中盤の選手がゴール前で仕事することがかなり求められるセルタにベストフィットし、11ゴールの大活躍であった。来季もいるんでしょうか。
このクラブ永遠のテーマ、12ゴールをあげた衰え知らずの点取り屋イアゴ・アスパスの相棒には賢そうな電柱のストランド・ラーセンと荒っぽそうな電柱のゴンサロ・パシエンシアを用意。ラーセンは凄い高さのボールを胸トラップし、パシエンシアは壁を殴って指を骨折していた。この2人に飽き足らず、冬には自己主張の強い電柱のセフェロビッチまで連れてきた。誰が相棒に適任だったのかは知らん。ところで最後の方アスパスがベンチだったのは何だったんでしょう。

チームは開幕4戦を2勝1分1敗と好スタート。しかし5節アトレティコ戦で1-4と現実を見せつけられるとそこから13節まで1勝1分7敗と負け狂った。12節終了時点でコウデを諦めて解任。後任はカルバリャル。何度も言っているがこのチームは主力が気持ち良くやれることこそが重要で、気持ち良くやった結果負け始めると色々しんどくなる。
その後はカルバリャルの調整が効いたのかは知らんがしっかり勝ち始めて就任後13節から28節まで6勝7分3敗と一気に安全圏へ。ボールプレイヤーが多くカルレス・ペレスなどドリブル突破が得意なアタッカーもおり、相手CBはアスパスから目を離せないという環境も相まってボールを持ち始めると本当に面白いチーム。一気にやられるカウンターもそれはそれで面白い。
なんて言っていたらそこから再び負け始めたのもセルタっぽい。29節から再び負け狂って37節まで1勝1分7敗と、奇しくもシーズン序盤の連敗と同じペースで負けた。そして最終節の対戦カードはバルサ戦で震えながら他会場の結果次第では降格、という状況でガブリ・ベイガの2発でまさかの勝利。ベイガはまさに救世主となったが、これがセルタでの最後の試合となってしまうのだろうか。

●がーすけのイチ押し選手
ハビ・ガラン
もはや説明不要。アトレティコに来い。



●14位:カディス

勝ち点42
10勝12分16敗
30得点56失点
国王杯:1回戦

ラリーガの泥臭根性集団カディスは今季もチームカラーは変わらず。先季途中にセルベラ監督からバトンを受け取ったセルヒオ・ゴンサレスが戦う集団を作り上げた。
まず補強の目玉はテオ・ボンゴンダとブライアン・オカンポというこのクラブらしからぬドリブル突破に特徴のある2選手。ちゃんとカディスにフィットできるか?と心配だったが、序盤からとにかく守備を頑張り、カディスの4-4-2をしっかり体現した。たぶん恋人を人質に取られていた。
特に攻撃で特徴を出していたのはオカンポ。密集に飛び込んで一気に局面を変える特異なアタックを見せ、攻撃に人数を割けないチームで魅力を発揮していた。ボンゴンダも異色のリズムでカットインから左足を振ってチームを助けた。想像しているより3割増しでシュートが枠に飛ぶ。35節ではバジャドリードから2得点。残留争いのライバルに勝ち切る大活躍だった。
チームの魂であるアルフォンソ・エスピノを筆頭にルイス・エルナンデス、イサ・カルセレン、ルベン・アルカラス、ルベン・ソブリーノなど相変わらずファイターが勢揃いのチームで、例え今週負けても来週は別の試合がある、という態度で常に相手に嫌なプレッシャーを与え続けていた。誤解を恐れず言えばこういう下位クラブはリーグに必要だと思う。
先季以上に得点に苦労し、開幕から5節まで無得点で5連敗。最下位エルチェと同じ30得点しか取れなかった。
6節バジャドリード戦で大御所アルバロ・ネグレドの得点で初勝利を収めて以降も誰が点を取るのかに悩み続けて冬にロジェール・マルティ、セルジ・グアルディオラ、クリス・ラモスとFWを補強。特にクリス・ラモスは全然上手くないがずっと頑張っていてシュートを外すたびにゴール裏を煽る熱いキャラだった。なんか下手だけど頑張ってて良かった。
それ以上に重要だったのは、先季も冬にラリーガにやってきて(先季はアラベス)めちゃくちゃ点を取るMFとして驚きを与えたゴンサロ・エスカランテ。今季も能力は健在で21節ジローナ戦(2-0)の先制点、32節バレンシア戦(2-1)の先制点を奪うなど3ゴール。37節にも決勝点となったソブリーノのゴールをお膳立て。残留に大きく貢献した。

突然攻撃力が上がることもないだろうし、それを求めて失うものがあっても面白くないな、とも思う。ご存知の通りおれは大好きなクラブだ。見てて面白い。アルカラスやイバン・アレホを筆頭に喧嘩できる選手を集めている感もある。もちろんファリも。このまま、今のままのカディスでずっとプリメーラにいてほしい。

●がーすけのイチ押し選手
ブライアン・オカンポ
浪漫である。スピードがあり、1vs多数のアタックが得意。狭いエリアに喜んで飛び込んでいくスタイルは見ていてワクワクする。何より、そういう選手がカディスでプレーしているというのが良い。まさに浪漫なのだ。後半戦をほぼ怪我で棒に振った。真価を発揮するのは来季だ。



●15位:ヘタフェ

勝ち点42
10勝12分16敗
34得点45失点
国王杯:Round32

先季途中就任のキケ・サンチェス・フローレスのヘタフェ。今季はボルハ・マジョラルを完全移籍で買い取り、エースのエネス・ウナルとの2トップを完全固定。中盤にはルイス・ミジャ、最終ラインにはドミンゴス・ドゥアルテとアルデレーテ。マティアス・オリベラをナポリに引き抜かれた左SBはアンギレリとガストン・アルバレスを補強獲得し、キケの5-3-2に必要な人材を的確に補強した。さらに飛び道具になれそうなポルトゥやムニル・エル・ハダディを連れてきて新たな攻撃パターンの構築にも着手した。

固定メンツでしっかり5-3-2を回し、配置を変えずに同ポジションの交代で試合のペースを調整する采配は見応えがあり選手を信頼するキケさんらしい面白いチームであったが、結果的にはエースのエネス・ウナルが点を取れないと勝てない、というシーズンであった。ところでおれは先季のここでエネス・ウナルを確変の匂いがするという見る目の無さ全開のコメントをしていたことを心から謝罪したい。凄かった。スーパーゴールが多いのもいいよね。スーパーゴール多いから確変に見えたっていうのもあるかも。まあいいか。

そんなチームなので残留争いギリギリに位置していてもクラブと現場のコンセンサスは取れているんだろうな、どうやって残留するか楽しみだなと思っていたが31節ホームでアルメリアに負けて降格圏18位に沈むとあっさりキケさんを解任。けっこうビックリした。しかも後任は元監督のボルダラスだった。もしかして一転してフロント無能か?となった。
しかし最後はボルダラスが残留をもたらす。32節に敗れたもののその後33節から5試合で3勝1分1敗とポイントを取って有利な立場で最終節を迎えた。前任者の作った5バックブロックからジェネを中盤に移すなどウケ狙いと真剣の両立を見事に果たしながら、さらにポイントになったのはそれまで全試合でエネス・ウナルの相棒を務めたボルハ・マジョラルを外してベテランのハイメ・マタに賭けたことであろう。困った時はベテランだ。そのハイメ・マタはウナルが大怪我で今季終了となった後の37節オサスナ戦、終了間際90分に決勝ゴールを奪い残留を引き寄せる原動力となった。最後は引き分け以上で残留が決まるバジャドリード戦を無事クリーンシートで乗り切った。来季のことはよくわからないが、また面白いファイター集団を作ってほしい。

●がーすけのイチ押し選手
ジェネ
ハーフスペースの番人として5バックに不可欠な人材である。攻撃性能はないがクンデっぽい。対人に強く、小柄だが空中戦も見劣りしない。ジェネが出場停止の試合でどう守るのか気になって見てみたらあっさり4-4-2にしていて笑った。
ボルダラス就任後は中盤の番人になり、ビルドアップでは最終ラインに参加して配球を助けた。真面目ないい奴。



●16位:バレンシア

勝ち点42
11勝9分18敗
42得点45失点
国王杯:ベスト8
スーペルコパ:準決勝敗退

先季9位のバレンシアはなんだか知らんが開幕前にボルダラスからガットゥーゾに監督交代。ここの会長はわからん。ガットゥーゾがミランから連れてきたカスティジェホをスタメンにし、綺麗な4-1-2-3で開幕から良いサッカーをしていた。課題のストライカーにもカバーニを連れてきて早速穴埋め。個人的に好きな選手も多いので注目して見ていたが、まあなんだか勝てなかったね。不運もあったと思うがクラブ側にも忍耐力がなく、ガットゥーゾも冬の補強を拒否されたなど報道されていたが、それはそれでバレンシアなんだからそりゃそうだろうという。ソシエダに引き分け、ベティスに3-0で勝ったものの年末の15節から全く勝てず1月末にガットゥーゾが辞任。後任はクラブレジェンドだが監督としてポジティブな話を聞いたことがないルベン・バラハ。まあこんな状態ではOBしかやってくれない、OBも良い関係じゃない人が多い、とか事情はありそう。知らんけど
そのまま結局22節まで1分7敗と負け続け、一気に降格圏まで沈んだ。

おれのコレイアやおれのディアカビが躍動していたのは見ていて嬉しい気持ちもあり、おれのムサ、うちのリーノ君の活躍もワクワクした。中盤は新加入のアンドレ・アルメイダも360度どの方向へ向けても正確にプレーできる良さがあり、上質のパフォーマンスでビッグクラブからも声がかかりそう。というか全員いなくなりそう。

レンタルで借りたニコ・ゴンサレス、イライシュ・モリバ、ジェンク・エズカジャルが概ね活躍。さらにカンテラーノの20歳ハビ・ゲラが31節バジャドリード戦で決勝ゴールを決めるなど終盤に出場時間を得て活躍。これだけ若くて良い選手がいっぱいいるのになんでこんなにネガティブなんだろうか。オーナーが全部悪いんだろうか。
マドリー戦ではヴィニシウス周辺の揉め事に火を付けてブラジル政府まで怒り始める大問題に発展。ラリーガ全体の問題提起にまで事を大きくしてしまった。反省してほしい。

●がーすけのイチ押し選手
アンドレ・アルメイダ
360度プレーでき、ボールへのコンタクトも良かった。縦の推進力をもたらし、自らポケットに飛び込めるプレーも魅力的。ポルトガルっぽいなという感じ。ちゃんとした仕組みのチームならもっと生きそう。



●17位:アルメリア

勝ち点41 11勝8分19敗
49得点65失点
国王杯:1回戦

昨年2部で優勝して昇格。サウジアラビアマネーが入っているなどお金がありそうなクラブで、昇格させたルビ監督を継続起用するなどなんとなく方向性もはっきりしていそうだった。

開幕から先季2部でゴールを量産したウマル・サディークとスピードスターのラージー・ラマザニの2トップで、5-3-2で堅く守って前線の2人にボールを届けるサッカーで3節まで1勝1分1敗と上手いこといきそうな成績。しかし3節終了後にそのサディークがソシエダに引き抜かれることに。どうやら開幕前から移籍は既定路線だったようだが。
クラブはそもそも補強していたエンバルバ(←エスパニョール)、メレーロ(←レバンテ)に加えてFWにエル・ビラル・トゥーレ、バチストン、ラザーロと大量補強。しかしサディーク移籍以降は4戦連続の無得点で全部負けた。まあしょうがないわな。それでもW杯の中断の時点で14位につけ、普通にやってるなという印象だった。その後は主に4-2-3-1のような配置で戦っていたがバビッチ、ロドリゴ・エリーを中心に最終ラインも全然通用するレベルでボールを握る攻撃にも着手。中盤もロベルトーネを筆頭に90分走れる選手が多く、無理やりビルドアップを繰り返した。サム・コスタはベテランの髭をしているが22歳だ。
あまりにも普通に通用していて余裕で残留するものと思っていた。極め付けは冬の補強で先季グラナダにいた方のルイス・スアレスを持ってきて点取り屋を増強し、残留は確定的に見えたが、今季の残留争いがハイレベルすぎた 。
W杯後も勝ったり負けたりを繰り返し、33節でシーズン10勝目をあげても全然安全圏にいけず(先季は8勝のカディス、ヘタフェが残留している)、なんなら18位以下に入ることも。最後の最後まで予断を許さなかったが、最後2試合をバジャドリード、エスパニョールの降格2チームに引き分けて他力も借りながらギリギリの残留。
65失点は残留する中では断トツに悪く、割と抜本的な解決が必要。バタバタとツギハギの補強をするシーズンになってしまったが、来季へ向けてスカッドを整理していきたい。

●がーすけのイチ押し選手
ルーカス・ロベルトーネ
アルゼンチン人らしい、自分の機動力でどうにかするMF。攻守に走り回ることが出来て劣勢なら守備に奔走し、CB脇からWGのサポートまで走り回ってチームメイトを助けまくった。ちょっとコケっぽい。



●18位:バジャドリード

勝ち点40 11勝7分20敗
33得点63失点
国王杯:Round32

1年で再昇格してきたバジャドリード。降格した20-21シーズンからそもそもボールを持てるチームで、その印象は今も変わっていない。そういう文化なんだろうか。
しかし今季のラリーガは下位でも能動的に得点を取りに行けるチームが多く、バジャドリードはそこに劣って苦しんでいた。昇格プレーオフや国王杯を見てもスペイン2部はボールは持てるけど点が取れないクラブが多く、バジャドリードも概ねそんなイメージ。主にCBを3枚並べ、CHのキケ・ペレスを中心にビルドアップしていく形は再現性はありそうで、それでいて点が取れないのは切ないね、というチームだった。
ストライカーはセルジ・グアルディオラでは厳しく、2部で20ゴールと無双していたヴァイスマンは全然駄目で冬に放出。いまだにセルヒオ・レオンにおんぶに抱っこでは残留は遠い。14節から18節までは5戦連続無得点で5連敗。攻撃の手順がゴンサロ・プラタが突破するかアグアドorモンチュがどうにかするしかないのはけっこうしんどかった。
結局クラブは冬にFWを補強。グラナダを退団して何故かメキシコに行っていたダルヴィン・マチスを連れてきて、さらにクラブ・ブルージュから借りたサイル・ラリンが大当たり。加入から8試合で5ゴールを荒稼ぎし、その間3勝2分3敗と残留圏へ近づいた。結局冬の加入ながら8点取った。さらにヴェローナからレンタルのオングラが最終ラインと中盤の底で働きまくっていた。冬の補強は概ね当たり。

しかしこの時期、チームは失点も止まらなくなり27節マドリーに0-6で敗れた後にパチェタを解任。パウロ・ペッツォラーノが就任した。ちなみに根拠はないがマドリーorバルサに負けたタイミングで解任するのはあんまり良くない気がする。
その後やや勝ち始めたが、31節からまた連敗開始。35節に残留争い直接のライバルであるカディスに敗れて万策尽きたかと思いきや、何故かバルサに3-1で勝利し可能性を繋いだ。
最後はアルメリア、ヘタフェと残留争い直接のライバル2チームとの直接対決で、2つとも執念のスコアレスドロー。最後の最後まで、能動的に得点が奪えなかった。1ポイント足りずに最後の最後で降格。プリメーラ定着とはならなかった。

●がーすけのイチ押し選手
キケ・ペレス
チームは不安定だったがキケ・ペレスはいつも安定していた。配球役として優れている上、スペインのこの類の選手にしてはサイズがあって身体を張れる選手。上位クラブで十分に通用する能力がある。



●19位:エスパニョール

勝ち点37
8勝13分17敗
52得点69失点
国王杯:ベスト16

そもそも開幕前から監督が変わりエースのラウル・デ・トーマスが揉めて出て行き、エンバルバ(アルメリア)、ダビド・ロペス(ジローナ)らも移籍先でなんだか楽しそうである。

蓋を開けてみたらメンバーは様変わり。新加入選手に支えられたシーズンとなった。ホセル&ブライスワイトの強力2トップは2人合わせて26ゴールと大暴れ。52得点は4位ソシエダより多い。なんで降格したんだ。
ホセルは先季も降格するアラベスで14点取っているがブライスワイトはびっくりした。お前バルサ行った意味あるんか
そのホセルは33歳(選出時点は32歳だったかも)でスペイン代表にも初招集されてゴールも決めた。
中盤ではでかいブラジル人、ヴィニシウス・ソウザがリーグ屈指の潰し屋として躍動。ブライアン・オリバン、エスポージトらも期待通りの活躍をしながら、成績がこれである。いかにぐちゃぐちゃだったかというお話。開幕からグダグダしたのはある程度仕方ないとして24節から31節までを6連敗含む1分8敗と負けまくり、団子状態の残留争いを下へ突き抜けた。27節終了後にディエゴ・マルティネス解任。後任はルイス・ガルシアが就任した。
最終盤、35節ラージョ戦(2-1)でようやくチームとして一つになった感があり、ホセルの周りをプアドとニコ・メラメドが衛星になり、中盤はダルデルとデニス・スアレスが気合いでどうにかする5-2-3のような5-3-2のような配置でアトレティコ相手にも0-3から3-3に追いつき首の皮一枚繋いだ。
しかし肝心の直接対決、37節バレンシア戦でリードを奪いながら後半ロスタイム+3分に追いつかれて万事休す。最終節を残して降格となってしまった。

結果的にはチームとしてまとまるのが遅かったですね、という印象でその原因がどこにあるのかおれは知らない。主力の移籍の仕方もなんだか気分の良いものではなかったし、新加入選手も何かのプランの元に集められた雰囲気はあまりなかった。みんな上手かったけど。不運にもそれだけで残留できるシーズンではなかったなという感想である。ベテラン勢はけっこう出ていくんじゃないかと思うが、それなりにカンテラーノも出てきていたのでまた一から作り直してもらいたい。

●がーすけのイチ押し選手
エドゥ・エスポージト
長らくエイバルの中心選手だったエスポージト。ゴール前に飛び込むプレーに特徴のある攻撃的MFで、エンバルバがいなくなったチームで中心になることを期待されてるのかな、と思ったがあまり使われなかった。
たぶん今季のジローナとかにいれば活躍しそうなタイプの選手で、エスパニョールにはあまりハマってなかったかなという印象。
ペナ幅で前向きにアタックできる選手はいつの時代も需要はあるので、必要としてくれる場所で活躍してほしい選手。



●20位:エルチェ

勝ち点25
5勝10分23敗
30得点67失点
国王杯:Round32

苦しみ抜いたエルチェは結局浮上するきっかけを掴むことなく降格となった。先季から戦力が抜けたかと言われるとスタメン級で移籍したのは左SBのホアン・モヒカくらいなもので、シンプルに能力が足りなかった。そして降格候補でありながら補強を当てることができず、攻撃も守備も何のポイントを作ることができなかった。今こうやってスカッドを見ながら振り返ってもこのチームの中心選手は誰なんだろう。最終ラインを筆頭に細かい負傷離脱も多く、シーズンを通して固定できたのはGKのバディアとMFマスカレルくらい。当社比で離脱の少なかったFWルーカス・ボイェもチームを救うには至らなかった。

フランシスコ監督から始まったシーズンだったが7節まで勝ち点1で解任。8節をガジェゴが暫定で指揮を取りこの試合を引き分けると、9節からホルへ・アルミロンが2分3敗で5試合で辞任。W杯後からは未勝利のままパブロ・マチンがバトンを受け取って6試合で2分4敗。2月4日にようやく初勝利。26節まで指揮を取ったが合計2勝3分7敗。その後はセバスティアン・ベカセッセが就任した。監督調べるのにどんだけ時間かかるんだ

先季から指摘していたがスタメン級の年齢層が全然若くないのも問題で、このメンバーのまま2部に落ちると全然シーズン完走できなさそう。大幅に刷新される夏になるだろう。テテ・モレンテ、ラウル・グティ辺りは移籍してプリメーラに残留できるかも。ボイェはどうでしょう。2年くらい前のファイヤーフォーメーション3バックは大好きだったので、またプリメーラで見たいチームですね。

●がーすけのイチ押し選手
ラウル・グティ
中央の守備強度を担保できるMFとして元々けっこう好みの選手なんだが、先季からあまり固定して起用されない。怪我とかがあるんだろうか。
もう名前からして上手そうである。凄いスルーパス出しそう。実際はファイタータイプで、前向きのプレーよりも真ん中に突っ立ってる方が生きる。試合終盤のクローザーとしても使える。来季はどうなるやら。




おしまい。今季も楽しかったです。たくさん見た。
次はアトレティコの選手名鑑。そして総括記事へと続いていく。全部長いです。よろしくです。

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