構造でも仕組みでもなく、3ポイントは何処へ? 18節 アトレティコvsセビージャ(A) 2021.12.19

CLは生き残ったがマドリーダービーに惨敗したアトレティコ。
対するはCLで散ったが、週末は勝って2位キープのセビージャの一戦。
早いもので未消化のあるチーム以外はこの18節が年内最終戦となる。ちなみにこの2チームは未消化があるチーム。セビージャはこちらもCLで散ったバルサ戦を残す。アトレティコはグラナダ戦。

セビージャはここまで10勝4分2敗と申し分ない戦い。アトレティコが珍しく18失点もしている間に、今季最少の11失点と好調。16試合で9回のクリーンシートは立派。攻撃はラファ・ミルが5点でチームトップだが、26点を13人で決めており、MF含め誰が出てもゴールが奪える。
アトレティック戦とその前のCLザルツブルク戦を見返したが正直よくわからなかった。グダグダな感じだった


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
トリッピア / フェリペ / コンドグビア / エルモソ
コケ / ルマル / ジョレンテ / カラスコ
コレア / スアレス

トリッピアが復帰。最終ラインが引き続き厳しい。
フェリックスはスタメン入り出来ず。

・セビージャ
ブヌ
モンティエル / クンデ / ジエゴ・カルロス / レキク
デラネイ / ジョルダン / ラキティッチ
オカンポス / パプ・ゴメス / イバン・ロメロ

引き続き両SBを欠く。アクーニャはベンチ復帰
フェルナンドが出場停止。トップには20歳のイバン・ロメロがプリメーラ初先発

スタメン



●前半
セビージャの保持に対して、アトレティコの非保持の仕組み。
4-5-1というか4-1-4-1というか4-2-3-1というか、何とも表現しにくい守り方。

非保持

後ろ4枚は固定でセット。
ゾーン1では相手CBの保持を許容。この2人からは取れないのでね。ゾーン2まで侵入してきた段階で、ルマル、コレア、ジョレンテの誰かがボールへ、という感じ

飛び出す

一枚飛び出して後方4-4に変化する。この場合はルマル

5枚

ボールがセンターサークルを超えた辺りで、カラスコがモンティエルを捕まえて大外へ落ちて5バック化する。オカンポスとモンティエルの2人に解決される形は避けたい。5バックというよりカラスコとモンティエルはマンツー、という印象


あとはセビージャはビルド中にパプ・ゴメスが落ちてきてボールを引き出す形が多く、ここはコレアが主に対応。彼の可動域はこのチームでは異色。大外を上がるアクーニャとのコンビネーションも良いが、この日はレキクなのでまだ助かっている。

パプ

ここを前進の起点にする事も多く、左からの構築で右へサイドチェンジ。オカンポスとモンティエルが2対2で解決、という狙いも見えた。


・失点
アトレティコは保持がままならず、この辺りを整理している間に7分、ラキティッチのゴラッソで先制を許す。


なかなか保持で前進できないアトレティコだが、右サイドのトリッピア、ジョレンテ、コレアの3人で前進。この3人がスタメンに揃ったのはなんと9/28のCLミラン戦以来である。
この3人で大外の背後を狙って配球。いくつかチャンスを作れる場面はあったが、ここ以外から得点の気配はなかった。

ジョレンテ

4:40のジョレンテの侵入。守備配置的にコレアが外側にいるケースが多く、ジョレンテは内側から飛び出てきた。このジョレンテの動きを誰が見るのかがあまり整理されていない様子。フェルナンドの不在の影響、と勝手に捉えていたがどうだろう


セビージャは、ラキティッチが前に出てくる4-4-2配置で守備。

ラキティッチ

前に出ているラキティッチが上手かったのは後ろ向きの守備。大外からコケ、エルモソに戻ってくるボールを狙っており、ここで奪っていた。こうなるとサイドチェンジが使えないアトレティコは徐々にボールを握れなくなる。デ・パウルが欲しいな、と思っていたらジョレンテが怪我してデ・パウルが出てきた。なかなかどうして、である。


・同点
そんな中、33分にCKからフェリペが同点にした。困った時のセットプレー。助かった。
CBに途中交代があって、前を向いたルマルのマークが曖昧になって前を向いてシュート、という形から取ったCKだった。

ルマル


クンデがカラスコに吸われ、グデリもボールに行けなかった。
ちなみにデラネイは「え、おれより右にジョルダンがいるはずでは?」というリアクションに見えたが、流石にそんなボケてはいないと信じたい

●前半終了
前半の内にセビージャはモンティエル、アトレティコはジョレンテが負傷で交代と、それでなくても怪我人が多い中、思い通りにいかない両チーム。

ボールを握れながらもセットプレーで追いつかれたセビージャは前半を継続できるか。
一方アトレティコはどこで変化を作るか。ジョレンテに代わってデ・パウルが入った事でビルドが改善するのか、フェリックスやロディの投入で構造を変えるのか。


●後半
アトレティコは早速コレア→フェリックス交代でスタート。フェリックス左、カラスコ右の3トップでインテンシティ高く入り、この試合で一番良い時間を作った。ここで一点欲しかったね

セビージャは53分にラファ・ミルとアクーニャを投入。
イバン・ロメロは交代となったが53分までで約7キロをカバー。確かにこの日、コンドグビア周辺から攻略しようとした場合良いチョイスだったと思う。起用に応えたと言っていい出来だった。

58分にアトレティコはスアレス→クーニャ。
スアレスはこの日も違いを生めず。11/7バレンシア戦以降は無得点が続く。交代の際はだいぶイラついていたが、彼の責任感を思えば無得点、1-1の状況で替えられる事に納得がいかないのは十分に理解できる。彼の責任感故、であり、ストライカーとはそういうものだ。それを「点も取れないくせに偉そうに」と嘲笑するのはセンスに欠ける。彼の起用法、起用時間に関してはシメオネのマネジメントがかなり重要になりそうだ。いかに活躍してほしい場面で輝いていただくか。シメオネはこういうのがあまり上手くない印象がある。

後半


で、こうなった。セビージャはフェリックスとカラスコの位置で勝負されると4バックでは心許ない。3CBにしてフェリックスにクンデをぶつける。ラキティッチを守備タスクから解放して数的優位製造要員としてポジションさせた。オカンポスのユーティリティ含め、色々準備してるねえ。


で、シメオネアトレティコは相手が3CBに変わるや否や次の変化を。

画像10

今度は後方3枚のビルドに可変。主に”ラキティッチが何処まで出てくるか”を問う格好でボールを持つ。左に戻ったカラスコとルマル、フェリックスの違いで押し込めるアトレティコがこの時間のペースを握った。
ちなみにラキティッチはコンドグビアにプレッシャーをかけつつ背後のコケに対応していた。スタミナありますねえ

ビルドではオカンポスを押し出すように可変するセビージャ。

セビージャ可変

オカンポスとエルモソのミスマッチを隠したいアトレティコだが、ここは気合いと根性。

・自在に可変する両チーム
しかしお互いに複数ポジションをこなせるタレントが揃っている。手堅く守りたい監督同士でもあり、相手の良さを消す事に注力した守備配置はそれぞれ興味深い。

セビージャはこの配置で何も放棄していない訳ではない。非保持でオカンポスの配置が一つ下がり、前3枚がこのメンバーだとロングカウンターの脅威はなかった。パプ・ゴメスに替えてムニルとか、そういう選択肢がこの後あるのだろう(84分に出てきた)。セビージャはボールを握って押し込み、アクーニャも押し上げてアトレティコを閉じ込めるつもりだったのだろうが、案外アトレティコが上手く握って押し込んできたので有利にゲームを進められなかった、という試合構造だ。
お互い"カウンターは刺さらんよ"という構造に切り替わっていた後半だったと言える。アトレティコはフェリックスを中心にいくつかのゴールチャンスを迎えるも決めきれず、時間が過ぎていった。

決勝点は88分。得意のCKからセビージャが奪った。
この日非常に良かったオカンポスに最後は幸運が。
デラネイのヘディングが凄かったね。根性で上回られた失点は非常に悔しい。セビージャは冷静で、アトレティコは我慢が効かなかった。

●試合結果
シュート数でも15対6とアトレティコが圧倒。
アトレティコは後半のシステム変更含め、この試合に勝てるだけのクオリティは準備できていた。ここ数戦と比較しても良い試合は出来ていたと思う。それが勝ち点につながらないのが、今のアトレティコの厳しいところだろう。システムや仕組みじゃない何かが、今必要とされている。

シメオネ体制で初めてのラリーガ3連敗となった。11年で初めて、という事を凄いと捉えるのか、3連敗したからシメオネはもう限界、と捉えるかは個人の感想となるが、マッチレビュワーとして、”この試合は悪くなかった”という事は強く主張したいところ。最後の失点はもちろん課題だ。CKでやられてはならない。やられないチームだったはずだ。

この敗戦で、年越し前の現時点で優勝の確率はほぼ無くなってしまったと言っていい。辛い現実を突きつけられるが、さてどうなるか。様子を見てみよう。


12/19

エスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスファン

セビージャ 2-1 アトレティコ

得点者

【セビージャ】’7 ラキティッチ ’88 オカンポス

【アトレティコ】’33 フェリペ


●ピックアッププレー
取り上げるとしたら決勝点となった88分のセビージャのCKだろうか。
コケの身体に乗り上げるように触ったデラネイが見事。身体を投げ出すクーニャの手前で触ったクンデも。最後はオカンポスの抑えの効いたジャストミートボレー。やられるべくしてやられているが、これをやらせないのがアトレティコの堅守だったはず。


●ピックアップ選手
フェリックス
後半からの投入で違いをいくつも作ったが、いくつかの決定機をゴールに繋げられず。いつまで”良いプレーだった”で終わるつもりなのか。この日はチームを救えるパフォーマンスだったはずだ

ルマル
カラスコ、フェリックスの近くで躍動。それ以上に、後半は相手SBまでプレスに行く重い守備タスクを90分完遂。お疲れ様。

コンドグビア
CBとして耐え切った。チームトップの4回のタックル成功も立派。4バックと3CBを行き来する難しいタスクをしっかりと

トリッピア
11/7バレンシア戦以来ようやく復帰。一定の質を見せ、ジョレンテとコレアを動かした。

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