ラリーガ冬の通信簿2021

8月の開幕から12月までのラリーガ全チームの戦いを一気にプレイバック!
各チームのチーム状況、メンバー構成、注目選手の3項目に分けてお届けします!長いよ!




1位:マドリー

勝ち点:46 ※19試合消化
14勝4分1敗
41得点16失点(+25)

●状況
今が全盛期のベンゼマと、3分だけネイマールになれる、が売りだったのに30分ネイマールになれるようになったヴィニシウスのデュオを誰も止められず、首位を走る。19試合で13回の複数得点はさすがである。
誰が入っても異物感を出さない巧みな構成は主力の気配りか、アンチェロッティのバランス感覚か、そもそもの選手達の能力か。誰が出ても問題ない、羨ましいチーム状況だ。中盤のベテランの出場時間をコントロールしながら、CLとの2冠を目指す

●構成
ラモスとヴァランがいなくなり絶望すると思われたCBコンビはミリトンとアラバで固定。両SBに3CH、右WGはほぼ固定しつつローテーションし、誰が出てもそれぞれが責任を果たす、緊張感を持った良いチーム構成である。
モドリッチ、クロース、カゼミーロは衰える前に世代交代を、と言われ始めて3,4年経つ気がするが、全く問題ないままカマヴィンガを加えて進化を続ける。ベイル、アザールが空気、ヨヴィッチが大外れのままでも勝ち続けてしまうのでは、他のチームはどうしようもない。
左CBに収まったアラバからは高精度のパスが出てくるどころか自ら駆け上がってミドルシュートまで決めてしまう。モドリッチとクロースにお任せしておけば勝手にゲームをコントロールし、気付けば優位に試合が進む。やはり今季もマドリーはマドリーである

●選手
カリム・ベンゼマ
ロナウドが去り、ベイルがゴルフ三昧の日々を送っても、フランス代表を追放されてもピッチに立ち、マドリーのためにゴールを決め続ける真のエース。バロンドールは彼でも良かったはずだ。味方を信頼して上質のスペーシング、ラストパスも出しながら最後の最後、必要なゴールを自ら決めてみせる頼れる兄貴分だ。

ヴィニシウス・ジュニオール
ついに覚醒したマドリーの未来。先季もCLなどで時々ダイヤモンドの輝きを見せていたが、今季はとにかくシュートが枠に飛ぶ。余裕と安定を持ち、ドリブル馬鹿の悪ガキから面白いように脱皮した。それに伴い相棒のベンゼマからラストパスが出てくる好循環。しばらくは止まらなそうだ

ダビド・アラバ
CBはやりたくないのかと思ったらすんなり左CBに収まった元祖偽SB。足下にピタリと止めるファーストタッチは絶品で、ビルドアップで無理が効く。球出し、特にアーリークロスはわけのわからん質を持ち、PA内で巧みにマークを外すベンゼマとのコンビネーションは必殺の精度を持つ。ボール奪取から相手PAまで突っ込んでいく機動力など、常識の枠では語れないDFだ


2位:セビージャ

勝ち点:38
11勝5分2敗
29得点13失点(+16)

●状況
先季途中に加入したパプ・ゴメスに加え、今季はラファ・ミル、ラメラ、デラネイと積極的に補強。CLを見据えた陣容となったが厳しいグループに入り、残念ながら3位敗退となった。ELで頑張ってほしい。
ラリーガでは前半戦を13失点とリーグ最少失点で切り抜けた。攻撃陣は無得点で終わる事はなかなかない陣容で、そりゃ上位に来るわなという感じ。
センター線の守備力は現状トップクラスで、大崩れはない。爆発的な得点力で上位と逆転するイメージは全く沸かないのが切ないところではある

●構成
バランスを重視するロペテギは今季も中盤でフェルナンド、ジョルダンを重用。結果が出ているのでいいが、個人的には豪華な陣容の割にリスクを減らす戦いを選びすぎ、という印象があってあまり好みではない。
このチームは両SBのハイポジションが構築の肝。そのために、主にフェルナンドのサリーでSBを押し上げてビルドアップする。ワイドのチェーンに中央からもう一人関わって、難しければサイドチェンジでやり直し。クロスに人数を掛けて飛び込んで勝負、セカンドボールを拾って相手を閉じ込める、という形。FWにラファ・ミルを獲得したのも納得できる。
引いた相手にも焦れずにクロスを放り込み続けてどうにか穴を探す攻撃できっちり勝ち点を積んでいる。
12月は右SBヘスス・ナバス、左SBマルコス・アクーニャがともに怪我で抜ける厳しい状況であった。右SBを埋めるリーベル・プレートから新加入のモンティエルは申し分ないクオリティ。年齢(24歳)的にもナバスの後継者として獲得しているのだろう

●選手
ジュール・クンデ
チェルシーに移籍できなくて普通に揉めたが、まあ普通にプレーした。普通にやってるだけでプリメーラトップレベルなので今のところ問題はない。チームはこれといったCBの控えがレキクくらいしかおらず、いないと大問題になりそうなので今季一杯はプレーしていただきたい。18節バルサ戦では相手(ジョルディ・アルバ)の顔面にボールを投げつける衝撃の退場劇。これでさよならになったらさすがに笑う

ラファ・ミル
このチームの浮沈の鍵を握りそうなオリンピック代表ストライカー。個人的にもっと話にならないかと思ったが割と5ゴール決めた。エスパニョールのラウル・デ・トーマスが普通に上位互換みたいな感じなのでもうちょっと説得力が欲しいところ

パプ・ゴメス
やはりとにかく上手い。方向転換が上手く、自在にボールを引き出せる。守備貢献度も高い。CHがボールを引き出せずSBに高い位置を取らせる事が出来ない時に、最終ライン近くまで降りてきてボールを引き取る彼の働きは相手チームにとって厄介だ
WGで生きるイメージは付かず、ボールを求めて持ち場を離れがちであまりこのチームにハマっている感じはないが、バグを生める存在ではある


3位:ベティス

勝ち点:33
10勝3分5敗
32得点21失点(+11)

●状況
開幕から6試合クリーンシートもなく、なかなか勝ち点を積めない状況(5節まで1勝)が続いたが6節以降は9勝4敗と勝ちまくった。その間クリーンシート5回に複数得点8回は立派。
これまで通り後方からのビルドアップを重視するが、前線が早めに動き出して一気に背後を取る、セカンドボールにラッシュする攻撃で先季までより効率的に勝ち点を奪えている印象。その恩恵を受けているのが高速アタッカーのファンミ。先季は出場16試合で2ゴールだった男が前半戦で早くも2ケタ11点到達。ハットトリックも決めた。
チームの中心であるフェキルとカナレスを否定する事なく勝ち点を有効に取れる戦術にシフトしたペジェグリーニの手腕が光る前半戦だった。ELは2位でグループ突破。ゼニトとのプレーオフに進んだ

●構成
20チームの中でも特に、先発を固定できなかった前半戦だった。
しかしGKはブラボとルイ・シルバの贅沢コンビに、アイサ・マンディが抜けたCBもバルトラとビクトル・ルイスに加え新加入のペッセッラが定着。SBも右はモントーヤとベジェリンのバルサコンビ、左はアレックス・モレノとミランダがいて層が厚い。
ワンパンチ足りないアタッカーをフェキルとカナレスが導くチームだったが、今季はロングボールも多用。ボルハ・イグレシアスに加えウィリアン・ジョゼを獲得し"イングランド2部かよ"と思っていたが、上手く電柱を活かす攻撃パターンを作った。ペジェグリーニ監督のプレミアでの経験が活きているのだろうか

●選手
ファンミ
覚醒した高速アタッカー。このタイプの選手ってラリーガにたくさんいるよね、というタイプなので年明けからいきなり失速しても特に驚かないが、左にいたはずなのに右の背後までランニングしてくる裏抜けは厄介な存在。チームの狙いとマッチしてノリに乗っている。

ナビル・フェキル
今季は後方からボールを引き出すよりもトップのポストプレーで効果的に前を向いてボールを触る。必殺の左足で違いを生む。

クラウディオ・ブラボ
38歳になったが至近距離のセーブ力は健在。衰えを知らないビルドアップ性能と、今季は前線へのロングボールが効果的にチーム戦術に組み込まれている。


4位:ラージョ

勝ち点:30
9勝3分6敗
26得点18失点(+8)

●状況
昇格チーム、しかも2部6位からプレーオフを勝ち上がっての昇格とあって、プリメーラ挑戦は厳しい道のりになるかと思われたが。なんとCL圏内で前半戦を折り返した。
開幕戦でGKのジダンの息子が謎の退場をしてセビージャにボロ負け、続くソシエダ戦も負けたがそこから快進撃。特にホームのエスタディオ・デ・バジェカスでは8勝1分で無敗と勝ち狂っている。ホーム成績はラリーガトップである。
縦に一直線にゴールを目指す得意のカウンターでゴールを重ね、昇格プレーオフを見る限りはストライカーが課題かと思われたがなんとラダメル・ファルカオを獲得できた。思わぬ形でPA内の勝負強さを得て接戦の勝ち点を拾えるチームになっている。だいたい先季2部42試合で52得点のチームが1部18試合で26得点とはどういう事だ。2部6位が1部で4位だし
試合を重ねるごとにビルドアップも自信が増してきた。トップ下のアルバロ・トレホが右に左に顔を出してサポートし、決定的なラストパスを供給する形は見応えがある。

●構成
まずスタメンを固定できている事が大きい。ストライカーと、中盤のコメサニャの相棒以外の9人はみんな14試合以上スタメン出場。しかもアルメニアから加入した右SBのバジウ以外は先季の2部時代からの継続メンバーである。
高いインテンシティとソリッドな守備でファールも厭わない厳しいバトルを演じる。喧嘩もよくしている印象。奪ったら少ない人数で一直線にゴールへ向かうカウンターはど迫力。2部出身のメンバーでもここまでやれるんだ、という自信が漲るチームは想像以上に手強い。ボールを握ると正しい配置で前進し、最後はニアへの低いクロスを中心にゴールへ向かう。ホームでバルサを下してみせた青年監督、アンドニ・イラオラとの旅がどんな結末を迎えるか注目だ

●選手

オスカル・トレホ
アルゼンチン人のベテランキャプテン。経歴は2部のジャーニーマンなのだが、今季トップ下として狭いエリアで光るプレーを見せ、攻撃の軸となっている。PKキッカーとしても活躍

イシ・パラソン
先季プレーオフの時からちょこまかと動くターンと魔法を使えそうな見た目で印象に残っていたが、彼の左足は魔法を使える。
19-20シーズン、25歳の時に当時所属していたポンフェラディーナで出場するまでなんとセグンダの経験すらなかった27歳がプリメーラでミドルシュートをぶち込むのは爽快そのものだ。謎すぎる。素行が終わってるのだろうか

サンティ・コメサニャ
良くこんな選手が2部にいたなと。前回プリメーラに昇格した18-19シーズンも出場していたようだが、総合力が高く攻守ともに欠かせない存在だ。名前も可愛い

アルバロ・ガルシア
スピードと裏抜け、そして決定力と申し分ない。簡単にスルーパスが出てくる現在のチーム状況も彼に味方する。


5位:アトレティコ

勝ち点:29
8勝5分5敗
29得点22失点(+7)

アトレティコの戦いについては後日公開の別記事、”アトレティコ・マドリー冬の通信簿2021”にて!



6位:ソシエダ

勝ち点:29
8勝5分5敗
20得点20失点(±0)

●状況
自前育成選手が多く、そして若いソシエダ。開幕戦は”借りてきた猫になる”と話題のカンプノウでのバルサ戦で大敗(2-4)したが、そこから14節まで9勝4分。二度の4連続を含む10回のクリーンシートで首位に立った。とにかくタレントが豊富で誰が出てもクオリティを落とさない一体感がある。必要なゴールはエースのオヤルサバルが決めて勝ち切ってきた。ただ、もう一段上のレベルへチャレンジしたいFWイサクがシュートを外し続け、オヤルサバルの得点が止まると一気に調子を落とし、最後は4連敗で終えた。20ゴールはトップ10ではアトレティックに次ぐ少なさで、綺麗に取れなくてもどうにか腕力で、というゴールが欲しい

●構成
後方4枚、その前にスビメンディとメリーノのコンビが基本。CBはエルストンドとル・ノルマンの組み合わせを筆頭に強くて上手い。
アタッカーも多彩なメンツを揃えるが今季はヤヌザイの調子が良い。アイディアが不足しがちなラストサードはダビド・シルバのチャンネルへの侵入に活路を見出す。ドリブラーのバレネチェア、カンテラ出身のロベテ、ライプツィヒからレンタルのセルロート、豊富な運動量で異彩を放つポルトゥなど、様々なタイプで解決を目指している。あとはイサクが簡単なゴールを決めてくれれば。

●選手
ミケル・オヤルサバル
チームのエース。多彩なタレントのいるチームの中ではかなり"普通"に映るプレースタイルだ。ただ基礎技術が高く、直接得点に関与できる能力はチームに不可欠。

ミケル・メリーノ
中盤中央で技術の高さと運動量を保有する。プラス1を生む彼の運動量がポゼッションと縦パスを助ける。

ロバン・ル・ノルマン
大型左利きCBだ。空中戦も地上戦も上質の対応を見せ、このクラブの選手らしくビルドアップ能力も高い。全体的な能力のバランスを見ても、すぐにメガクラブに引き抜かれておかしくないタレント。


7位:バルサ

勝ち点:28
7勝7分4敗
29得点22失点(+7)

●状況
メッシが去り、新しい時代を迎えるバルサが苦しんでいる。ポジティブな未来を提示できなかったクーマンが去り、哲学の伝承者チャビが帰還した。まずは哲学と威厳を取り戻す事に挑戦する。アグエロが残念な形で引退し、点を取れる選手がいないが金もない。テアシュテーゲン、デヨング、アラウホ、ペドリは金持ちに狙われている。デパイは出ていきそう。果たしてペドリとガビはチャビとイニエスタになれるのか。そしてアンス・ファティは、メッシになれるのか。輝く未来に期待したい

●構成
ペドリとアンス・ファティ(ついでにデンベレ)が怪我がちで標榜するシステムでは戦えない中、ガビやニコ・ゴンザレスがポジティブな輝きを見せる。"さすがバルサカンテラーノだ"の一言で済ませて良いのかはわからないが、ライン間のボールの引き出し方、正しい止める蹴るはまさにバルサのそれである。
まず会見の言葉からして魅力的なチャビは、ピッチ上で自身の理想を少しずつ描き始めている。そのためにイリアス、アブデ、ジュグラ、デミルといったカンテラーノをピッチに置く。スピードとコンビネーションを取り戻しつつあるチームは、後半戦の目標をどこに置くのか。

●選手
ガビ
早くペドリと2人並べてプレーするところを見たい17歳。トップチームデビューしたばかりでありながら、下手したらイニエスタよりも、チャビよりも"バルサっぽい"MFだ。ライン間のボールの引き出し方、巧みなターンと人の間を抜けていくドリブルはまさにラ・マシア。彼もまた、バルサの未来を背負う存在。当面の目標は靴紐の結び方を覚える事だ

メンフィス・デパイ
バルセロナに来てみたら突然攻撃の全責任を負わされた男。詐欺である。ライン間を主戦場とし、確かにワールドクラスのプレーを見せる事もある。これ以上を望むのは流石に気の毒で、オランダ人監督が去り、どうなる事やら。

アンス・ファティ
大怪我からようやく復帰したが今度は筋肉系で離脱。前半戦は出場5試合3ゴールに終わった。ただ、ボールを持てば違いを作り、脈絡のないところからゴールを生める。まずは健康体で試合に臨む状況を作りたい

エリック・ガルシア
シティから帰ってきた。もっと対人雑魚のビルドアップ馬鹿なのかと思っていたが、なかなか戦える選手である。このままスタメンで出続けてピケから吸収できるものは全て吸収し、新しいチームのご意見版としてネットを荒らしていただきたい。期待している


8位:バレンシア

勝ち点:28
7勝7分4敗
30得点26失点(+4)

●状況
ヘタフェを辞めたチョイ悪証券マンことホセ・ボルダラスが就任したバレンシア。近年お金がない事に起因してレギュラークラスをごっそり他所に持っていかれる切ない状況が続いていたが、どこからともなく若手が湧いてくるのがこのチームの不思議なところだ。
今季は"とにかく走る事なら自信あります"という選手達がボルダラスの体育会系サッカーに絶妙にマッチ。誰が点取るねん問題をソレールのPK、10回に1回くらいは入るゲデスのスーパーシュート、スターモードが終わらないスーパーラッキーボーイウーゴ・ドゥーロの得点でそれとなく乗り切ってきた。失点も"する時はするしちゃんと守れる時は守る"みたいな雰囲気だが、次の試合で暗くなったりしないパリピ感がチームの良さと思える。たぶんこの監督はミーティングが上手い。マキシ・ゴメスが2ケタ得点を取る事はまぁないだろうが、ストライカーが一枚入ってくると一気にCLを目指せそうだ

●構成
GKはレギュラークラスが3人いる贅沢な陣容。最終ラインはヘルタ・ベルリンから加入したパラグアイ人のアルデレーテがスタメンに収まり、ガブリエウ・パウリスタと不動のコンビを組む。右SBはおれのお気に入りコレイアが怪我するや否や、明らかにボルダラスの好みでグラナダからフルキエを獲得する抜け目の無さ。左のガヤは代表クラスの活躍を見せる。
これはボルダラス以前からのプランだったようだが、CHにコンバートされたギジャモンが中盤で躍動。勝手に前に突っ走っていく選手が多いチームで、真ん中に構えられる選手がいる事は大きい。ミドルレンジのパスはもちろん、ショートパスも巧みである。
ストライカータイプはマキシ・ゴメスもマルコス・アンドレも絶妙に信頼が置けないが、ゲデスを筆頭に全員がゴールに向かってラッシュする性質を持っており、対戦相手は油断ができない。カルロス・ソレールに崩しのタスクを重くしすぎないボルダラスのバランス感覚も光っている。

●選手
ゴンサロ・ゲデス
とにかく突っ走るアタッカーである。ボルダラスのサッカーにどう見ても合いそうだが、やはり笑っちゃうくらい合っていた。カウンターの脅威を一人で残せる存在感は稀有なものだ。シュートは本当にどうしても枠に飛ばない

カルロス・ソレール
代表でも主軸になってきたナンバー10は、先季よりも攻撃的なポジションを任される。大外をオーバーラップできる選手が多いメンバー構成で、内側に入ってくるソレールの動きが重要になってくる。正確なキックとポケットに飛び込むランニングでチャンスを演出している

ウーゴ・ギジャモン
CBとしてはスピードに欠けてポカも少なくなかったスペインアンダー代表は今季、中盤の底で躍動する。守備の対応はもちろんだがビルドアップも非常に上手く、ターンしてサイドを変えるパスが正確。縦に急ぎがちなチームだが、彼の存在でパウサと落ち着きをもたらしている


9位:ビジャレアル

勝ち点:25
6勝7分5敗
26得点20失点(+6)

●状況
先季の7位から更に上位進出を狙ったビジャレアルだが、大黒柱のジェラール・モレノを欠き、調子が全く上がらず。モレノが復帰すると今度はボーンマスから加入のオランダ人ニュースター、アルノー・ダンジュマが負傷する悪循環。それでもCLを何とか2位で通過し(ラウンド16はユベントス戦)、ようやくモレノが復帰し、最後の2戦はラージョ、ソシエダに連勝で締めくくって後半戦へ希望を残した。
選手層、取り組むサッカーの質を考えてもCL争いへ上がってくるべきチームだ。

●構成
ジェラール・モレノが戻ってからは彼のいる右ハーフスペースを中心に左右に売り出し中のジェレミー・ピノと全然シュートの入らないマッチョマンのブレイェ・ディアが一気にゴール方向へ仕掛ける。左サイドはエストゥピニャンとアルベルト・モレノの2人で攻略して中3枚詰めのクロスを配給する。パレホ、カプエ、トリゲロスと技術のあるベテラン揃いの中盤は保持で優位を作るが、走力でどこまで頑張れるか。ここにウナイ・エメリのバランス感覚が問われる。
最終ラインは大ベテランのラウル・アルビオルと代表レギュラーのパウ・トーレスの組み合わせにベティスから加入のアイサ・マンディが控える。右SBはラリーガ屈指の喧嘩屋、フアン・フォイスに注目。カピタンのマリオ・ガスパールとどちらがポジションを掴むか

●選手
ジェラール・モレノ
補強をしてもCLを勝ち進んでも、このチームの勝利に彼が必要な事に変わりはない。先季23ゴールのエースはここまで出場9試合6ゴールに留まるがフィニッシュ以外にも、そもそもビルドアップの狙いが彼の足下であり、攻撃のスイッチもそこで入る。いるといないではチームの構造そのものが大きく変わってしまう選手だ。

アルノー・ダンジュマ
イングランド2部ボーンマスから高い金を払って補強し、"こんな経歴の選手が活躍できたらまたラリーガが舐められちゃうぜ"と思っていたが活躍した。上手い。速い。左ハーフスペースからPAへの侵入が上手く、フィニッシュの場面で必要な位置にいられる選手。ジェラール・モレノとの共存は微妙な気がするが、今のところ怪我でだいたいどっちかいない

ジェレミー・ピノ
19歳のスター候補。先季も24試合(スタメンは6試合)で3ゴールと片鱗を見せていたが今季は右のアウトサイドでスタメンを確保。運動量とテクニックはすでに上位でマリオ・ゲッツェになれる逸材である。彼自身ジェラール・モレノが隣にいた方がプレーしやすそうなのもこのチームではプラスに働く。クロスのエアポケットに侵入するのが上手い印象だがシュートはあんまり入らない。練習あるのみ


10位:アトレティック

勝ち点:24 ※19試合消化
5勝9分5敗
17得点16失点(+1)

●状況
先季、2021年1月に就任したマルセリーノ・ガルシア・トラル体制が丸1年。もうどこをどう見てもマルセリーノのチームのサッカーをしている。スタメンも固定し、上位に牙を剥き下位に取りこぼす試合が続いている。ソリッドな前プレと直線的な速攻を準備しているが、相手がボールを放棄し引き篭もられると選択肢を欠く。この辺りが下位への取りこぼしの理由だろう。主にムニアインにどうにかしてもらう形だが、あくまでも4-4-2の左SHの彼一人で状況をひっくり返すには至っていない。ラリーガ連続出場記録を更新したイニャキ・ウィリアムズにしても、フルシーズンで取れても最大12点くらい、という印象(先季6点、今季ここまで5点)で、ラウル・ガルシアの筋肉に頼り、ビジャリブレの髭に頼る日々である

●構成
4-4-2でのハイプレス、ライン間の圧縮を基本とする。奪うと早めに相手SBの背後orチャンネルに向かって人を飛び込ませラッシュをかける。メンバーはCBイニゴ・マルティネスの相方にミランデスへのレンタルから帰ってきたダニエル・ビビアンが収まり、GKのスペイン代表ウナイ・シモンを含めとにかく固く守る。失点数はセビージャに次いで少なく、マドリーと同じ16失点。スタメンを奪った右SBのイニゴ・レクエは対人の化け物として相手アタッカーを封殺する。ダニ・ガルシアとベンセドールの中盤コンビは絶えず正しいポジションを取り真ん中を通させない。昔のアトレティコを見ているような気分になるが、中盤でどれだけ優位にボールを持ち、攻略できるかが鍵になる。
イニャキの相棒を誰が務めるかがポイントになるトップはラウル・ガルシアに頼りきり。補強の出来ない辛さがここにある。個人的にはサンセをもう少し使っても良いと思うが。
途中出場でイニャキの弟、ニコ・ウィリアムズやニコ・セラーノなどスピードのあるアタッカーを連続投入するが、まだ"最後の1点"を奪う方程式は作れずにいる。育成チームらしい悩みだが、それを一世紀乗り越え続けた先に、今のアトレティック・クルブがある。

●選手
ダニエル・ビビアン
対人もスピードもビルドアップも、プリメーラ随一のハイスペックを持つ。すぐにプレミアに買われそうな選手だ。来季はきっとスパーズかアーセナルにいる。

ウナイ・シモン
今をときめくスペイン代表の守護神。ビルドアップ魔神としても不可欠な選手だ。アトレティコに来てほしい

イケル・ムニアイン
ビルバオの魂であり全てだ。ガチムチ集団の中で異質を放つ洗練されたテクニック。彼への依存が高いシーズンも、終わってみれば"ムニアインがいてよかった"となる、かも


11位:エスパニョール

勝ち点:23
6勝5分7敗
20得点21失点(−1)

●状況
マドリーに黒星を付けた昇格組。
セルジ・ゴメスにアレイシ・ビダル、そしてヤンヘル・エレーラと必要な箇所を的確に補強した。
中盤のダルデル、バレ、オスカル・メレンドらから良いボールが供給され、左右に幅広く動くエンバルバの高精度のクロスはストライカーのR.D.T.ことラウル・デ・トーマスと相性抜群。勝っても負けても説得力のある戦いが出来ている事は高く評価できる。上位フィニッシュの可能性もある後半戦に期待が高まる。

●構成
引きこもってのロングカウンターも、保持して中央侵入、最後はクロスで勝負、としっかり点を取れるチームだ。ストライカーのラウル・デ・トーマスが中心なのは間違いないが、ボールの扱いが上手いMFが多い。プリメーラ上位勢ともある程度やり合える強度を持つ良いチームだ。主力に降格と再昇格を経験している選手が多い事も見ていて気持ちが良い。左SBのアドリア・ペドロサは今ラリーガで一番足が速いかもしれない

●選手
ラウル・デ・トーマス
スペイン代表にも招集された絶好調のエースストライカー。自分で決めると顔が言っている。
ずっと課題だと思っているが、チームが押し込まれた時のポジトラのボールの受け方があまり上手くなく、展開をひっくり返す役目がこなせていない。ここを改善できるとさらにチームが前向きにプレーできるようになる

ディエゴ・ロペス
御歳40歳の大ベテランゴールキーパーである。マドリー時代にカシージャスからレギュラーを奪った男として記憶されている選手だ。
近距離のシュートストップが上手く1対1の詰め方も威圧感がある。案外ビルドアップ性能もある。

アドリアン・エンバルバ
高精度のクロスが持ち味のMF。スタミナ豊富でスピードもある。彼のクロスがこのチームの得点を生む生命線


12位:グラナダ

勝ち点:22
5勝7分6敗
23得点26失点(−3)

●状況
チームを1部に復帰させ、史上初のヨーロッパリーグ出場に導いたロベルト・マルティネス政権を終えたグラナダ。新監督ロベルト・モレノ政権は開幕7戦未勝利と多難なスタートに。ただそこから4勝5分2敗と持ち直している。
メンバーはEL用(だったかは知らないが)に補強していたレンタル選手が各々のクラブへ戻り、ルイ・シルバ、フルキエ、そして先季チーム得点王のロベルト・ソルダードが旅立っていった。やや全体の強度は弱まった感はあるが、12月のマジョルカ、アトレティコに対する連勝はビルドアップも整理され支配できる時間も。南米の代表チームのように熱く激しく泥臭く戦うチームだ。上位を引っかき回す戦いを期待したい

●構成
主に4-4-2で戦う。守備陣は主力を引き抜かれた影響はあるが、CBにカンテラーノのラウル・トレンテがスタメン奪取。なかなかの働きを見せる。ゴナロンとルイス・ミジャの中盤コンビもようやく固まってきた。あとは攻撃の中心、"じゃない方のルイス・スアレス"を中心にどこまで点を取れるかだが、曲者感のあるダルヴィン・マチスが新監督のシステムにピタリとハマり、18節マジョルカ戦では39歳の大ベテラン、ホルヘ・モリーナが5大リーグ史上最年長でのハットトリックを達成。15節以降5試合で6ゴールと、まだまだ衰えを感じさせない運動量でチームに貢献してみせた。

●選手
ルイス・スアレス
じゃない方のルイス・スアレス。最終ラインで常に駆け引きをし、ボールを引き出しゴールを狙う。前半戦で4ゴールを決めて、目指せ2ケタ

ルイス・ミジャ
加入2季目の中盤のリンクマン。先季は怪我での離脱もあり不完全燃焼だったが今季はスタメンに定着。球出しに優れ、攻撃を主導する選手。守備能力も申し分ない

アントニオ・プエルタス
真っ直ぐ進むマッチョが多い攻撃陣に、スペイン的なニュアンスを加える存在。ボールの引き出し役として中盤に降りて手詰まりな攻撃にアクセントを加えている


13位:オサスナ

勝ち点:22
5勝7分6敗
17得点22失点(−5)

●状況
アラサテ政権4年目のオサスナ。先季は一時降格圏に落ち込むなど苦難のシーズンとなったが今季は開幕から好調。11節終了時5勝4分2敗と上位に食い込む成績。しかし、11節からはマドリー、セビージャ、ソシエダ、アトレティコとの上位4連戦を無得点で1分3敗。これで調子が狂ったのかその後は下位にも勝ちきれず、結局9節ビジャレアル戦を最後に勝ち星なしで5勝7分6敗、13位でウインターブレイクを迎えた。結局ストライカーに悩み、不調を脱する術をどこに見出すかが、1月のポイントとなる。1月の4試合は上位勢との戦いがないので、ここで踏ん張る事ができれば。逆にここをズルズルと負けると、また降格争いに首を突っ込む事になりそう。

●構成
ストライカーの選択肢がキケ・ガルシアorブディミルで、単独の解決力に欠ける。ここが苦しい。18節ヘタフェ戦ではここに機動力のあるチミー・アビラを置いていた。
中盤から後ろは固定メンツで戦えており、先季からの継続メンバーでもある。
基本は4-1-4-1で。ルーカス・トロをアンカーポジションに置きビルドアップの安定感もある。ボール保持を狙いながらロングボールの使用も厭わない。IHはオリンピック代表のモンカジョラが躍動。左SHのルベン・ガルシアもレベルの高い突破を見せる。彼は得点が取れるとブレイクスルー出来そうな選手だ。
全体的に運動量が豊富で、攻略したいエリアを設定してそこを突く形をチーム全体で共有できている印象がある。長期政権になるアラサテ監督が作っている好チームだ。

●選手
ヨン・モンカジョラ
先季一皮剥けた生え抜きCH。対人強度のある守備と足下の技術があり、アンカーでも一つ前でも問題なく機能する。中盤の構成を変化させるアラサテのサッカーではまさに中心的存在

ルベン・ガルシア
左大外、あるいは内側に入り込んでの突破は相手の脅威になる。今季はまだ無得点だが、ゴールを狙ったプレーも好印象。

チミー・アビラ
独力でゴールへ向かうタイプの選手が少ないチームで、積極的にPAへアタックする彼の活躍は必須になる。喧嘩っ早いスタイルでチームに闘魂注入する。似たタイプのファンミ(ベティス)のような活躍が期待される


14位:セルタ

勝ち点:20
5勝5分8敗
20得点22失点(−2)

●状況
魅力的なメンバーに魅惑のパスワーク、クソみたいなボールロストとグダグダの守備で今季もラリーガを引っ掻き回すアウトロー集団である。ファンや関係者でも"ホームで下位に手堅く勝利!アウェーで上位に粘りのドロー!"なんてサッカーを期待している人はもはやおらず、風物詩というよりこれが普通、これが日常になってしまった。それでいいのか。
選手達のメンタル的にも、0-3から追いついたバルサ戦のような痺れる試合の方が明らかに燃えて団結しており、後半戦もドラマチックな勝利や絶望的な敗北を見せてくれると期待する。

●構成
先季途中から就任したエドゥアルド・コウデ体制の2シーズン目になる。
このチームは、ベストメンバーを揃えようと思ったら誰が監督をやってもこんな感じの配置になるので仕方ない。どのエリアの守備の責任を誰が持つのか、を規定するのが主に監督の仕事だろう。それをコウデがやれているのかは知らん。基本的にはアンカーのレナト・タピアがほぼ気を利かせてどうにかしている。
また、スペインのチームにありがちなのかもしれないが、アスパスとノリートの二大巨頭を活かそうとすれば自ずと電柱を真ん中に置きたくなる。しかしこのチームは電柱が普通にいない、というメンバー構成で、サンティ・ミナが裏抜け&ポストプレー担当として活動している。フランコ・セルビやフラン・ベルトランが良い意味で異物感を発揮しており、上手いだけで言えばラリーガの中でも圧倒的に上手いブライス・メンデスもいる。押し込む時間帯を作る事さえ出来れば破壊力はラリーガトップクラスだ

●選手
イアゴ・アスパス
チームのエースストライカーであり存在そのもの。卓越した得点能力と労を惜しまないランニングで常にチームを助ける。ワンチャンスをモノに出来る決定力は、決して強豪とは言えないセルタのようなチームでこそ輝く

ハビ・ガラン
降格したウエスカから加入した左SB。ビルドアップに貢献できて走力もある。このチームの左サイドはノリートとの連携を使いながら追い越していく動きが求められるが、適任と言える良い補強だった

フランコ・セルビ
ベンフィカから加入した小柄なアルゼンチン人は中盤で異彩を放っている。足下の技術に優れ、真ん中を攻略したいチームで厄介な存在になれそう。まだベンチスタートが多いが、フィットしてきたら面白い存在である


15位:マジョルカ

勝ち点:20
4勝8分6敗
17得点27失点(−10)

●状況
開幕から3戦負け無しと好スタートを切ったが、その後はドローを重ねる形に。スコアレスが少なく最低限の得点力はあるが、これといった得点パターンに乏しく、案外苦しんでいる。試合巧者で対人の強度も十分あるが、走力に欠ける面があり、引いた相手を崩す、というよりも長い距離の走り合いで優位性を出せない事が多い印象だ。どちらかというと足を止めて、速い縦パスでスイッチを入れるような試合をしたい。そのスイッチャーを務める久保建英が欠場した期間に説得力を欠いたのも必然かもしれない

●構成
昇格組ながら強度の高いチームを準備したマジョルカ。中盤はイドリス・ババ、サルバ・セビージャ、ルイス・デ・ガラレタの3枚が攻守共に申し分ない質。CBコンビのルッソ、ヴァリエントのコンビも十分プリメーラで戦える強度を持つ。攻撃陣はイ・ガンイン、ダニ・ロドリゲス、アンヘル・ロドリゲス、ジョルディ・ムブラ、フェルナンド・ニーニョと、"セカンドアタッカー"の選手が多い。このメンバーに久保建英のかける魔法で点を取ろう。というチームだ

●選手
イドリス・ババ
ライン間の番人として高い守備力とそれなりのビルドアップ性能を持つ。対人の対応で掴んで倒すだけになる場面が散見され、よくファールを取られている。めっちゃ鳩胸で姿勢が良い

ダニ・ロドリゲス
いかにもラリーガのアタッカーという感じで中央でも左右どちらのサイドでもプレー出来て、ボールタッチが上手くドリブルで人を抜けるがスピードがあまりなく、シュートが上手くない。押し込む展開になれば色々役立つ選手だ

久保建英
違いを作れるマジシャンで攻撃の中心を担う。使われてナンボの選手が多いチームで、彼のパスがゴールを生むきっかけを作る、というシーンは増えそうだ。アウェーのアトレティコ戦でオブラクの股を抜く決勝点を奪って一躍クラブのアイドルになった


16位:ヘタフェ

勝ち点:15
3勝6分9敗
12得点20失点(−8)

●状況
開幕7連敗、その間2得点と絶望のスタートで就任したてのミチェル監督がクビに。初勝利は12節までかかった。ククレジャやアンヘル・ロドリゲス、久保などを失ったが、それ以上にボルダラス監督を失ったのが痛かった。激しいボールプレッシャーと球際の熱さで上位陣にとって厄介な存在になっていたチームが強度を保てず、5バックで引きこもるサッカーを選択。飛び道具も失った。出口は見えず、時間が解決する感じでもないと思われる。が、11/21以降は何故か守備が大幅に改善され5試合でなんと1失点。ここで2勝3分とし、ギリギリ降格圏を抜けて冬休みに入った。3度目の就任となったキケ・サンチェス・フローレスの下、新たなバランスを手に入れたのか、はたまたたまたまなのか。リーグ最少の12得点と苦しむ中、上位勢との対戦が続く勝負の一月に挑む。

●構成
5バックが基本。その前でアランバーリ、マクシモビッチ、アレニャの3人が必死に走り続けている。トップのエネス・ウナル、サンドロ・ラミレス、ハイメ・マタはどれだけ上手くいっても10点が限界。誰と心中するか、と言われても誰も無理。というメンツでどう戦うか。まだ複数得点が2回しかない状況を打開するソリューションが求められている。

●選手
カルレス・アレニャ
バルサ出身3人集は2人が去り、アレニャだけが残った。一体バルサで何を期待されてたのか不思議なプレーレベルだが、それでもこのチームでは攻撃の全権を握る。運動量と継続性はあるので、シュートが枠に飛べば

マウロ・アランバーリ
ウルグアイ人のプレーメーカー。中盤での運動量、強度、そして縦への推進力を併せ持つ。怪我が少なく体力もある選手だが、今季のシステムであまり活きないのか、消えている時間が増えている。

ジェネ
最終ラインのファイター。ファール覚悟で厳しくボールにチャレンジする。質はともかくタスクはクンデに似ている。どうにかチームの浮上のきっかけを掴みたい


17位:エルチェ

勝ち点:15
3勝6分9敗
18得点27失点(−9)

●状況
昇格初年度、ギリギリの残留を果たしたエルチェは、今季開幕から3バックに着手し注目を集めた(おれの)
しかし守備がいまいち組織されておらず、さらに大外レーンをWBが全部カバーする必要がある、しかも替えがいない、という色んなところで選手からクレームが入りそうなシステムではあった。
序盤から"取れても1点"と"無失点は無理"の状態で、なかなか勝ち点を積めずに苦しんだ。
妥協点を見つけて4-2-2-2風のシステムで戦っているが、純粋なSHに適したアタッカーがあまりおらず、どうにも窮屈な戦いが続く。そんな中14節ベティス戦に負けた時点で顔がモウリーニョに激似のフラン・エスクリバ監督を解任。フランシスコ・ロドリゲス監督の元、再始動を図る。

●構成
3-5-2ではWBを務めるモヒカとホサンが鬼神の如く上下動を続け、3CBは明らかに過負荷な中距離ダッシュを繰り返し続けた。試合を見る度CBの誰かが負傷退場していっていた気がする
途中からは人員的に4バックに移行。(と同時におれの興味は薄れた)フィデルはSHにするのはもったいないし、かといってCHは、という感じで妥協している。
トップのルーカス・ボイェはラリーガでも有数のお気に入りストライカーである。ベネデットとルーカス・ペレスのシュートは枠に飛ぶ気配がなく、パストーレは多分やる気がない。降格したらこの辺のせいだ。
とにかく普通に試合をして気づいたら負けている、という試合をやめたい所で、フランシスコ・ロドリゲス監督はCHの守備強度を重視している様子が見られる。ここに補強があるかもしれない。

●選手
ルーカス・ボイェ
もっと注目されても良い上質なストライカーだ。ロングボールを何となく収めてしまう腕力が良い。スモールクラブのFWには必須の能力である。スペースに入り込む動きが上手く、フィデルからの必殺のスルーパスに合わせる抜け出しはチームの大きな武器に。単独でこじ開ける能力もある。今季は2桁ゴールを決めたい

フィデル
巧みなボールコントロールでアトレティコのデ・パウルもけちょんけちょんにされた。正確なキックとゴールに直結するパスを狙う嗅覚を持つ。ベテランだがめちゃくちゃに走れる選手でもある

ホアン・モヒカ
WBで過労させられると水を得た魚のように走りまくった。左足から繰り出すキックは時々悪魔の精度を持ち、ピンポイントのアーリークロスに繋がる事も。ドリブル突破は非常に直線的で、相手DFにとって嫌な存在。4バックのSBに回ってからは雑な対応やビルドアップのエラーも目立つ


18位:アラベス

勝ち点:15
4勝3分11敗
15得点29失点(−14)

●状況
先季16位で残留したチームは今季、さらに苦しんでいる。先季も"これはダメだな"という試合を終盤の何だかわからない同点劇・逆転劇でシーズン9勝の内4勝を最後の1ヶ月に固めた。残留争いのライバルを蹴落とし続けた粘り腰が今季も見られるか。
先季11ゴールでチーム得点王だったホセルが、今季はここまでチームの15点中9点を取るスーパーモードに突入。ヘディングがとにかく上手く、敗色濃厚な試合の終盤の放り込みで試合を一変させる事が出来る。

●構成
中盤を新加入のママドゥ・ルームと、同じくアトレティコから新加入のトニ・モジャで固定。運動量を全面に押し出して我慢の効く戦いに貢献している。最終ラインはラグアルディアを中心にボールに強い職人揃いで大崩れしない。アタッカーはルイス・リオハが絶好調で相手最終ラインを切り裂いている。終盤のホセルを狙った放り込みは確かに脅威だが、もう一つ何か頼れる攻撃パターンを準備できると楽に勝ち点を上げられる試合も増えるはず。"我々はこれに頼って残留する"という武器が欲しいが、現状はホセルへの放り込みに頼るしかない

●選手
ホセル
依存度ラリーガトップのストライカー。過去2シーズンは11ゴールだったがすでに9点取った。そもそも点を取っている選手が5人しかいない現状で得点パターンも他になく、残留へ向けて目指せ20ゴールだ

ビクトル・ラグアルディア
産まれながらのCB顔の怖い選手。今季はすでに2ゴール、しかもアトレティコとセビージャから先制ゴールを奪っている。(アトレティコ戦は勝ち、セビージャ戦はドロー)
多分リーダーシップも凄そうなので、最後方から叱咤激励し、リオハにシュートを決めさせてほしい。

ルイス・リオハ
ラリーガに良くいる、点が取れないテクニシャンである。足下にボールが来てナンボ、ドリブル勝負で相手を置き去りにしてはラストパスをミスる選手。今季はとにかく動きにキレがあり、カウンターでも最終ラインの背後を狙うランニングが効果的。プリメーラでは先季の4ゴールがキャリアハイだが、超えてもらわないと困る(まだ1点)


19位:カディス

勝ち点:14
2勝8分8敗
15得点31失点(−16)

●状況
先季は頑張る守備と最後まで諦めない戦いで順位表を引っ掻き回したカディス。グッドチームだったが攻撃のパターンはおそらく一番少なく、ビルドアップもままならないチームで今季に向けてプラスアルファが必要だった。
カディスのような一丸となって戦うチームに難しいのが、1,2人それなりに上手い選手を補強する事で逆に全体の強度が落ち、チームの長所を失う、主力選手が役割を失う事だと思う。
実際にはシンプルにお金がないのもあって、たいした補強もないまま今季を戦い、決定力不足で苦しんでいる。難しいものだ。しかし前半戦のうちに今季もバルサ、マドリー両チームに引き分けているのは流石だ。

●構成
先季からメンバーは大きく変わってはいない。攻撃では両翼に入るサルビ・サンチェス、アレックス・フェルナンデス、アルベルト・ペレアにボールを入れて全体を押し上げてクロス勝負、あわよくばCK獲得、という形くらいしか特徴がない。チョコ・ロサノとルベン・ソブリーノの2トップは広いエリアを追いかけ回し、前線での奪回とカウンターに関与する。先季チームトップの8ゴールを決めた電柱界の大御所アルバロ・ネグレドは36歳になったがまだ老け込む雰囲気はなく、まだ今季未勝利のホーム、ラモン・デ・カランサを揺らすゴールを期待したい

●選手
サルビ・サンチェス
攻撃の軸となるサイドアタッカー。ただ突破するだけでなくまずボールを受けてチーム全体を押し上げさせる役割が必要とされ、休む暇がない。

アルフォンソ・エスピノ
左SBの元気キャラ。元アルゼンチン代表のソリンみたいな雰囲気を持つウルグアイ人。ここまで全試合スタメンで2得点と数字も残す。運動量でどうにかするしかないチームで、スタイルを体現する選手。

アンソニー・"チョコ"・ロサノ
前線からの精力的な守備と外側への裏抜けでボールを引き出す献身的な選手。ネグレドの相棒になる事が多いのでなんとなく小柄な印象を持っていたが普通にでかい(183センチくらい)
先季は3ゴールだったが今季はすでに5ゴールでチーム得点王。


20位:レバンテ

勝ち点:8
0勝8分10敗
19得点36失点(−17)

●状況
開幕から引き分けが多かったが、気づいてみれば前半戦勝利無し。8節終了時点でパコ・ロペスとの切ないお別れを迎えた。結局誰が点を取るんだ問題は放置され、先季はモラレスが奇跡を起こし続けていたんだなと再確認する事に。
モラレスを中心に速いカウンターでしかチャンスを作れないが、これといったボール奪取の仕組みがあるわけでもなく。最終ラインの我慢も足らず、リードを守りきれない場面も。1点リードで77分から逆転された13節アラベス戦、2度リードを奪いながら3-4逆転負けの17節エスパニョール戦、前半に2点先制しながらひっくり返されて3-4で負けた18節バレンシア戦と、メンタルがやられていく負け方だ。そして後任のハビエル・ペレイラも7試合未勝利で解任。今季3人目の監督にはBチームからアレッシオ・リシが着いた。

●構成
毎試合のようにスタメンをいじり、モラレスがストレスなく攻撃できる形を模索している様だが、行き着く前にシーズンが終わりそうだ。サイドを突破できる選手もデ・フルートスくらいしか思い当たらず、何をどうすれば良いのやら。2季続けて2ケタ得点を取ったロジェル・マルティがどこまで爆発できるか
メンツ的にはもし降格すればプリメーラから引く手数多の選手も多いはずで、各チームの舌舐めずりが聞こえてくる。あっさり連勝して余裕の残留、という可能性もまだある戦力だが、とにかく流れが悪く、リードしても守り切れる様子が一切ない。デッドラインは近い

●選手
ホセ・ルイス・モラレス
チームの攻撃の全権を担うカピタン。特にカウンターで一撃で仕留める鋭さと確実性を持ち、相手DFは一瞬も気が抜けない。今季は周りの助けが少なく、少ないチャンスをモノにしてチームトップの得点(5ゴール)をあげる。残留へ向けて休む暇はない

エニス・バルディ
ナンバー10を背負う北マケドニア代表は不調のチームで守備対応にも追われ、本来の能力は発揮できていない。チームのボール保持さえ安定すれば確かなテクニックで貢献できる。今季はすでに職人技のPK2発含む3ゴール

ホルヘ・デ・フルートス
チーム唯一といっていい純粋なワイドアタッカーで、実はこのチームの浮上の鍵を握っていると思っている。負けん気の強いキャラクターは善し悪しあるが、彼の熱さがチームを救う時が来るはずだ


●まとめ

以上となります。長いですね。大変だわ。
ラージョが驚きの好ダッシュ。しかも偶然じゃない戦いを見せて上位に。ラージョ以外にもエスパニョール、マジョルカの昇格組は3チーム共残留濃厚なポジションに。
上位では不調だったビジャレアルはエースの復帰と共に復調。一方、ソシエダ、アトレティコの上位候補は4連敗で12月を終え、マドリーに独走を許した。
今季の残留争いは説得力が必要になりそう。未勝利で年内スケジュールを終えたレバンテが鍵を握りそうだ。

短い休みを挟んで1月2日から再開するラリーガ。2022年も楽しんでいきましょう。もう感染拡大は勘弁してほしいね。過去最長記事となりましたが最後まで読んでくれた方(いるのか?)、ありがとうございます!年内はもう一本(当然の1万字以上)です!さよなら!!!

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