その交代にはきっと熱い意味がある CL2節 アトレティコvsミラン(A) 2021.9.28

週末にアラベスに負けてついに今季初黒星。
怪我人もあり、よくない雰囲気で迎えたCL、アウェーのミラン戦。

ミランのスカウティングレポートはこちら

こういう記事楽しかったからまた書きたい。
どこかリクエストありましたら受け付けます


グループ初戦のアトレティコはホームでポルトと0-0、一方のミランはアウェー、アンフィールドに乗り込みリバプールと2-3の撃ち合いを演じた。
勝ち点を取ったのはアトレティコだが、ポジティブな印象を残したのはミランでしょう、誰から見ても。

そのミランも怪我人が多い。
最終ラインのケアー、カラブリア。トップのジルー、イブラヒモビッチ。ここにきてフロレンツィも週末欠場。

上記の中から週末のリーグ戦でジルー、カラブリアが復帰。カラブリアは怪我ではなかったらしい


●スタメン
重要な一戦のスタメン!

・アトレティコ
オブラク
ヒメネス / フェリペ / エルモソ
トリッピア / コケ / コンドグビア / ジョレンテ / カラスコ
コレア / スアレス

3CB。コンドグビアとコケを併用。


・ミラン

メニャン
カラブリア / トモリ / ロマニョーリ / テオ・エルナンデス
ケシエ / ベナセル / サーレマーケルス / レオン / ディアス
レビッチ

CHがトナーリ→ベナセルだった以外はだいたい想定通り。CBのケアーは間に合わず。

スタメン


ミランはサン・シーロでCLを戦うのは2014年のアトレティコ戦以来とのこと。Milan is back.

そしてアトレティコがここでCLを戦うのは、2016年の決勝、マドリー戦以来。

ミランは新しい時代を自分達の手で切り開くため。
アトレティコは信じられる戦い方を模索するため。


いざ必勝の一戦。


●前半
〜ミランのプランとアトレティコの対策〜

・ミランの保持
想定通り、保持はミラン。
ベナセルが真ん中を取ってケシエとブラヒム・ディアスは並列。

・アトレティコの対応
4-4-2で準備したアトレティコ。

4枚


2トップはアンカーへのボールを最優先で警戒して、SBに持たせる。ここに右ジョレンテ、左カラスコが強くプッシュ。


アトレティコは
・真ん中封鎖
・SBに持たせて1対1で潰す
という準備で割と強気に。この対応は良かったし効果はあった


・エルモソの守備配置
エルモソが一番左になる4枚でも、スピードのある選手に晒される機会はない、というは判断だったかと。その意味ではカラブリアよりカルルが嫌だったかもしれない。その意味では、ね。


・刺せそうだったカウンター
カラスコが最終ラインに落ちずに前に残れる守備をしている事でカウンターでぶっ刺す狙いも見えた。14分にはカラブリアとケシエのところのロストを攫ってカラスコが抜けるが、トモリがこの1対1を止める。ここの質で勝てると試合が楽になるんだが、そうもいかず。この試合トモリはMOM級の守備を90分続けた。

アトレティコはカウンターを刺す狙いがあったなら、コケ&コンドグビアではない方が良かったのではないか。この辺にシメオネのバランス感覚が見える


・ミランの想定は外れたか
ミランのSBが比較的低く構えたのは、アトレティコが5バックだった場合のWBorIHを引っ張る想定だったか。

ミランの想定


こういう想定。
SBがコケ、カラスコを引っ張ってその背後に配球するためにSBが受ける。そのためにCHはサリーしない。

これだとディアスとケシエを並列に配置した事も説明が付く。あまりハマらないやり方だったが、ピオリ監督がやり方を変更する前に先制できてしまったと。つまりアトレティコは”準備していた形で配置の優位を取れたのに先制された”という事になる。これを「完敗」と言います


・逆に
逆にアトレティコの保持に対して、ミランは前4枚。これがハマる

同数プレス


前進が簡単に止まるアトレティコ。変な奪われ方だけが嫌だったが、変な奪われ方を連発。
特に19分は中央のボール奪取からディアス→レビッチに一発で抜け出されてビッグチャンスを作られた。


・コケ&コンドグビア
中央のボールへの強度を担保するためのコケ&コンドグビアの組み合わせだったと思うが、前進に苦労。シメオネも想定していたとは思うが。特にコンドグビアは、ボールコントロールもアジリティこのレベルではキツいでしょう。守備ではブラヒム・ディアスへの速い縦パスについていける感じもなく、厳しかった。


・勢いのままに先制
20分ミランが先制。セットプレーの流れからディアスが保持、ラファエル・レオンの狙いすました右足でゲット。PA内でディアスに対して足が出せず振り回された。やはり、違いを生む選手


アトレティコは準備した形を出しつつ出足がミランの方が良く、質で優位に立てない厳しい試合。こういう試合に前半に失点してしまうのが今季の良くないところ。最悪に悪い意味で普段通りのところが出た。


・しかし
ガラッと試合を変えてしまったのが29分。ケシエが退場した。
ジョレンテに対してかなり強くいっているプレーがいくつかあったが、まあ印象は悪かったね。退場させちゃったのはビックリしたけども


アトレティコは40分に、早々とフェリックス投入。トリッピアを下げた。早め早めに、ジョレンテを右大外に動かす押し込みモード。前半のうちからスクランブルをご所望のシメオネ。アトレティにとっては早くも疲れる試合確定。


●前半終了
先制したものの退場者を出したミラン。
早めに手を打ったアトレティコ。

38分のレオンのオーバーヘッドが決まっていたら試合が終わっていたかもしれないが、なんとか可能性を残せたアトレティコ。

勝負は激動の後半へ


●後半
・動きに動いたシメオネ

アトレティコは後半開始から2人替える。
ロディとデ・パウルin。
その後も61分、64分に立て続けに交代。早々5枚使い切った

完成形


完成形。
コンディションの悪そうだったトリッピア、カラスコをはやめに替える決断は英断だった。真ん中にデ・パウルを置いた事も、押し込み続けるためには重要な役割だった。


・ミランの対応
ピオリ監督の選択はいたって冷静。

6枚


1人少ない事から押し込まれる事を受け入れ、両SHに大外を守備をさせた。6枚で引ききって耐える戦いで、試合をクローズできそうなところまでいったのは見事。
ただ、レオンは残すべきだったと思う。ジルーに替えた事でスピードの脅威がなくなり、結果的にアトレティコに余裕を持たせた。守備は何もしなくてもいいから、最前線に立っているだけでカウンターの脅威を残せる選手はピッチにいるべきだったと思う


・その交代カードに意味はある
個人的には61分のコケ→グリーズマンの交代。
結果的には3分後にコンドグビア→ルマルを替えるわけで、ここで「コケ→グリーズマン」である必要は全くなかった。先にルマルを入れても先にコンドグビアを下げても、まあ同じ事だった。でも敢えて、コケ→グリーズマンだったのではないか。
0-1の場面である。今これをワンダでやったら怒号が響くような選手交代だろう。グリーズマンを使う。コケと替える。想像しただけでゾッとする。

でもシメオネがこのカードを選んだのは、色々な意味を含ませていたと想像する。
グリーズマンを使うんだ。という意味と、
コケを下げてでも使うんだ。という意味。
シメオネはピッチにもファンにも、彼なりのメッセージを伝える意味でこの交代をしたと考えるのは、さすがに考えすぎだろうか。

結果的に、グリーズマンはゴールで応える。
ワンダだったら、どうだっただろう。ブーイングは消えただろうか。指笛は?

グリーズマンはいたって冷静だった。84分、左足のハーフボレーを振り過ぎずに枠に収めた。オフサイドフラッグを確認して控えめに喜んだ。肩を抱き合ったのは、新しい7番だ。ここがワンダだったら、どうだっただろう。


最後はロスタイム+7分、カルルのハンドからスアレスのPKで決した。
11対11ではまず勝てなかっただろう。アトレティコにとってはCLが終わってもおかしくない試合になるはずだったが、ジャッジに救われた。そして、グリーズマンも救われたのではないか。あとでこの日のゴールこそが、新しいアトレティコでのスタートだったと言える日が来て欲しいと、心から願っている


●試合結果
なんとか生き残った。
相手の退場に、ロスタイムのPK。たらればになるが内容で上回る事はできなかった。ラッキーな勝ちを拾ったと言える。

レビューをしていると、こういう勝利には厳しい意見が必要なように錯覚する時がある。
でも勝ちは勝ちだ。この3ポイントは非常に大きい。この1勝は、今季一番の喜びだ。それでいいじゃないか。駄目だろうか


・良かった点①
フェリックスとグリーズマン
その中でも良かった点。フェリックスとグリーズマンのコンディションが良くなっている印象。グリーズマンは得点シーン以外もスペースを狙えており改善が見られた。引き続きIHで使われるとはあまり思えないが、周囲との連携が合ってくればもっとやれる

・良かった点②
デ・パウルの配球

中盤の底にはコケorコンドグビアを残すかと思ったが、最終的にはデ・パウルを置いた。もちろんデ・パウルをIHでもう少し見たかったんだが、この判断は良かった。ドリブルでボールを前に進められるデ・パウルが中央にいる事は、ミランにとって面倒だっただろう


・悪かった点①
ビルドアップ

ミランの前プレに対して通用しなかったビルドアップ。中央は安心して前を向く事も出来ず、エルモソにしてもビルドアップ要員と呼ぶのは憚られる出来。この試合は"4-4-2で待ち構える事"が最優先でビルドは二の次だったという言い訳は残しつつ、不満は残った

・悪かった点②
フィジカルコンディション

ミランの出足、スピードが良く、明らかにコンディションで劣った。過密スケジュールは理解するが、もう少しどうにかならないものか。


週末にはバルサ戦が待つ。CLではこの後我慢どころのリバプール戦が2つ。我慢我慢が続くシーズン。はやくブレイクスルーできるといいね


9/28
サン・シーロ
ミラン 1-2 アトレティコ
得点者
【ミラン】’20 レオン
【アトレティコ】’84 グリーズマン ’90+7 スアレス


●ピックアッププレー
前半のロスタイムにあった場面。
サイドチェンジでジョレンテが持った場面

画像7


アトレティコの狙いがポケット一択なのは我々はよくわかっている事だが、テオは正面に立ってコレアに使われる。最後はスアレスの際どいシュートに繋げた
この場面、エルモソが猛ダッシュでニアに侵入しているのはポイント高い。彼は得点機を良く理解している選手だ

普段アトレティコを見ている人からしたら見慣れすぎた場面だが、不意を突ければCLでも通用する、ジョレンテとコレア2人のコンビネーション


●ピックアップ選手

デ・パウル
相手が1人少なく余裕があった事もあるが、普段以上に自らボールを前へ進めた。相手を押し込むポイントを作り、球出しを促進させた

フェリックス
リーガは出場停止中で非常に元気。
ライン間でも大外でもボールに関わり、スアレスの頭にピンポイントで合わせたアーリークロスも見事

スアレス
CLでは呪われたようにシュートが枠に嫌われるが、この日も。少なくとも3つは枠に飛べば、というシュートがあった。ただ、最後のPKはそんなプレッシャーを微塵も感じさせない冷静沈着ぶりでど真ん中へ決めた。

グリーズマン
ポルト戦で、書いていたけど消した文章をここに載せる。

そもそも、彼は攻撃が手詰まりになった時の解決策として獲得されているはずで、移籍経緯を考えれば"当時できた事はできて当たり前"と思われて当然であり、できなければ批判を受け入れるべき。
"60分から投入され、違いを生み出してチームを救った"以外の結果は全て期待外れだ。得点に関与できないなら試合に出てくるべきではない

まだまだ、こんなものじゃないでしょう。

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