トランジションバトルの勝者は CL B組1節 リバプールvsミラン 2021.9.15



さて久しぶりにアトレティコ以外のチームのマッチレビューです。
先季のCLセビージャvsドルトムント以来ですね。普通に緊張します。

今回はアトレティコのいるCL B組のレビュー。裏側のリバプールvsミランです。

〜今季のリバプール〜
vsノリッジ(A) 3-0
vsバーンリー(H) 2-0
vsチェルシー(H) 1-1
vsリーズ(A) 3-0

ほぼ完璧。ファン・ダイクとマティプが怪我から復帰し、後ろは盤石。前線もサラー、マネ、フィルミーノ、ジョタ全員がゴールを決めている。
中盤は出場時間を分け合いながら。スタメンで出ていた18歳ハーヴィー・エリオットの怪我は残念

〜今季のミラン〜
vsサンプドリア(A) 1-0
vsカリアリ(H) 4-1
vsラツィオ(A) 2-0

久しぶりにCLに戻ってきた名門ミラン。こちらも今季ここまで絶好調。開幕3連勝でここに臨む
ドンナルンマが移籍したGKはリールから来たメニャンが収まる。
新加入のジルー、怪我から復帰のイブラヒモビッチ、すでに3ゴールのレオンと前線は充実。巨人だらけ。レビッチもラツィオ戦では活躍。
10番はマドリーからレンタル2季目のブラヒム・ディアス。チャルハノールの抜けた中盤で大きな期待を背負う
トナーリとケシエのCHコンビもとんでもない運動量とスピードでラツィオを圧倒していた。前プレとカウンターで圧力をかけるアップテンポなサッカーが魅力的


●スタメン
・リバプール

アリソン
アレクサンダー=アーノルド / ジョー・ゴメス / マティプ / ロバートソン
ファビーニョ / ヘンダーソン / ケイタ
サラー / ジョタ / オリギ

ファン・ダイクではなくジョー・ゴメス
IHは2枚とも週末から変えた。トップもオリギを使うなど色々なバランスを感じるメンツ

・ミラン
メニャン
カラブリア / トモリ / ケアー / テオ・エルナンデス
ケシエ / ベナセル / サーレマーケルス / ブラヒム・ディアス
レオン / レビッチ

ラツィオ戦からは3人変更。
CBはロマニョーリではなくケアー。イブラヒモビッチはベンチからも外れている。ジルーはベンチ復帰
CHはベナセルが先発


スタメン



●前半 呼吸をさせないリバプール
前半開始からアンフィールドの後押しを受けたホームチーム、リバプールが圧倒的に圧力をかける。
自信を持って後ろからの持ち上がりで戦おうとしたミランの出鼻を挫いた


リバプールの圧迫感のある前プレ。

前プレ


オリギと左右WGがセンターバックに余裕を与えない。WGは外側(SB)へのパスコースを限定しながら強めに寄せる。
ケシエ、ベナセルの2人はIHにマンツーで寄せられており、そもそもボールを受けられる状態にない。SBへのハイボールに対してはロバートソン、アレクサンダー=アーノルドが狙っており、余裕がない。
そして各ポイントへファビーニョが近づいていき、いつも数的優位を作って守れている。そしてボールを奪うといつも近くにファビーニョがいる。
まともに組み立てられるとしたらブラヒム・ディアスが思いっきり降りてくるくらいしか方法が考えられない


対するミランの守備を少しだけ。

ミラン守備


ビルドアップに参加するファビーニョ、ケイタの2人に圧力をかけたいが、簡単に外される。
主に、ラファエル・レオンの背後の管理が甘く、アレクサンダー=アーノルドに簡単に抜けられる。


9分、リバプールが先制
ここもアレクサンダー=アーノルドから。ロングボールを回収してマティプからボールをもらう。簡単に中盤ラインを超えている

先制1

ワイドレーンでトライアングル。

先制2


ヘンダーソンが迷わずランニングで抜ける。簡単に背後を使うアレクサンダー=アーノルド。勝負あり。

逆サイドのウイングがSBを引っ張っており、最終ラインは何も対応できず。



僕、IHのワイド抜けが大好きなんですけどね。ヘンダーソンは最高の選手。ティーレマンスとかね。アトレティコだとデ・パウルに”ワイドレーンでの役割を”って何度も言ってるけどこういう動きを見たい。最高のゴールだった

圧倒的に抑え込まれ、ボールを持ち上がれない事もだが、ミランのプレスが全くかからないのがキツい。ボールを奪い返せないでずっと押し込まれる。
開始15分間でポゼッションはリバプールの62.2%。シュート数は12対1と圧倒される。文字通り何もさせてもらえなかった。

25分あたりでリバプールのプレスがひと段落。ミランもレオンの大裏、ブラヒム・ディアスのライン間でのボール受けなど、得意の形をいくつか出し始める。
とはいえ前半は3-0でもおかしくない内容、ハーフタイムでミランはどう切り換えるか、と思っていたところ、42分、ワンチャンスをものにしてミランが同点に追いつく。ディアスの持ち運びとレビッチのランニング。

同点

レビッチとレオンがCBを同時に引っ張る。
ファビーニョは背後の人数関係は把握しているようだったが、サーレマーケルスにスペースが生まれたタイミングと、ディアスのボールが絶妙。


勢いそのままに44分になんと逆転。
ポジトラでテオとレオンの2人で左サイドを解決。最後は5人がPA内に飛び込む走力を発揮した。

多分、同点直後のプレーだったのが大きかったかなと。もう一つ次のプレーだったら流石に5人も飛び込んでこないだろう。完璧なタイミングで”当たり”が引けた。


●前半終了
・予想外のスコア

なんと終盤の連続ゴールで1-2でミランリードで折り返す。リバプールはほぼ100点の前半を過ごしながらビハインドとなった。サラーのPK失敗もあったが。止めたメニャンが試合を面白くした

・ケシエ
しかしラツィオ戦で無双していたケシエがこんなに通用しない事には驚いた。
リバプールのプレッシャーがあまりにも速くて近く、技術的にも思考的にもケシエの処理速度が追いつかなかった印象。プレミアリーグはすごいねえ

それでも2点取ったミランの攻撃は見事。ミランの選手って、カウンターの場面で自分がシュート撃たなくてもいいんです!って感じのプレーが多い気がする。バスケの速攻みたいな決まり方するよね

リバプールは嫌な感じの残る前半だったが、後半も自分のプレーを繰り返せるか。90分この強度で追い込むのは流石に厳しいので、どこでアクセルを踏むかもポイントだ


●後半
・早速振り出しに
開始早々48分、サラーのゴールで同点に。オリギのお洒落なループパスから。

この同点ゴールで、ミランのゲームプランは変わったわけではないと思う。何が何でも3ポイント、という風には見えなかったかな。前半から走らされ続けてキツいと思うし。

ここからリバプールはプレスラインをミランのCHあたりに抑える。

後半


疲労から、守備でもフィルターが効かなくなってきたミラン。リバプールに待ち構えられ前進ができない。泣きたくなる展開。後半は75分過ぎまでシュートも打てない時間が続いた。

そんな中で69分、残酷な決勝ゴールはリバプールに。CKのこぼれ球、バウンド際の難しいボールをしっかり抑えてゴール隅へ蹴り込んだヘンダーソンのゴラッソ。やはり千両役者。

リバプールは選手を入れ替えながら、80分過ぎから最前線のプレスを再開。ミランを圧死させにかかる。
ミランはジルーの頭への放り込みを武器に可能性を見せるが、再度同点にする力は残されていなかった。


●試合結果
前半から完全に試合を支配したリバプールは盤石の強さ。グループリーグ突破はほぼ確定だろう。
一方のミラン。若いチームが自分達の取り組みを存分に発揮し、その上で完全に封じられた。しかし、失望して終わるのではなく前半ラストに数少ないチャンスを2つ結果に繋げて逆転に成功。こういう経験が若いチームを強くするんだよなあと思いながら、鳥肌の立つ思いで見ていた。

後半に入ってもリバプールはハメ続け、ミランは抗い続けた。それでもサラーのゴールと、キャプテンヘンダーソンのゴラッソに沈んだミラン。全体的な試合の支配だけでなく、局所のタレントでも上回るリバプール。やはりアンフィールドは簡単ではなかった。

ミランは本当に良くやっている。全然無様な逆転負けでもなんでもないし、決定的な弱点を感じる事もない。
ただ、リードされていた時間帯(数分だが)を見ても"リバプールが負ける"とは思えなかった。強すぎる。ミランが良くやっている事を差し引いても、5-0でも不思議ではない圧倒的感。


試合結果
アンフィールド
リバプール 3-2 ミラン
得点者
【リバプール】'9 OG '49 サラー '69 ヘンダーソン
【ミラン】'42 レビッチ '44 ブラヒム・ディアス


●ピックアップ選手
メニャン(ミラン)
勇気を持ったビルドアップに、チームに勢いをもたらすPKセーブ。守備だけでなく攻撃面でも、彼が背後にいる事のメリットを感じた。プレースタイル的にはすでにドンナルンマよりもこのチーム向きなのではないか

テオ(ミラン)
ハードに戦うミランの選手達の中でも特に最後まで走力で負けなかった。贔屓目で見てないですよ?
サラーとの対人を繰り返しながら戦い抜いたし、2点目のポジトラの起点に。前線にポジションして大外ではなく内側でボールを受けられるのも頼もしい

ヘンダーソン(リバプール)
やはりサラーのサポートをするIHの役目は彼が最適だ。幅広くポジションしてサラーとアレクサンダー・アーノルドへのボールを供給し、中盤の守備タスクをこなす。そして見事なゴールで試合を決めた。

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