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大差の割には低調に 5節 アトレティコvsセルタ(H) 2022.9.10

5節はホームでセルタ戦。お互い2勝1分1敗で迎えたこの試合。ホームのアトレティコはこれ以上マドリーに離されないように3ポイントが欲しい。セルタは好調を維持して上位に喰らいつきたいところ。

セルタは今季、ブライス・メンデスやノリートが去りサンティ・ミナもいなくなり。なんだか揉めてるデニス・スアレスも試合に出ない状態。アスパスの相棒どうしましょう問題の答えがパシエンシアなのかと思いきや、ハムストリングを痛めて壁殴ったら指2本折れましたみたいな感じで離脱。前節は後半からラーセンという新加入の新しい電柱が出てきた。でかかった。子供の頃から電柱しかやらせてもらった事ありません的な純粋電柱。純粋電柱の特徴は胸トラップでの落としが上手い

新加入CBのウナイ・ヌニェスは高いビルドアップ能力と"一人で出来る能力"が高く、早速スタメンに固定。同じくやれって言われた事は全部自分でやるアイドゥと2人で色んな意味で無理の効く最終ラインを形成する。開幕戦の後半からタピアとベルトランを併用し、2CBとこの2人でボールを保持する。とにかくボールを持たないと何も出来ないチームなのでここを固める事はまず重要。前線は相変わらずノリに頼る部分は多いが、結局どんな道を通ってもこのチームはアスパスにクリーンなシュートチャンスをいくつ用意出来るかがポイント。


●スタメン
・アトレティコ
グルビッチ
モリーナ / ヴィツェル / エルモソ / ヘイニウド
コンドグビア / デ・パウル / ルマル / カラスコ
コレア / モラタ

CLはなんとか出られたオブラクだがこの日はお休み。グルビッチをスタメンで使う。ヒメネスは怪我。エルモソが今季初スタメン。
中盤はコケ、ジョレンテが休み。
FWはコレアがようやく今季初スタメンとなる。CLからは計6人入れ替えた。

・セルタ
マルチェシン
マージョ / アイドゥ / ウナイ・ヌニェス / ハビ・ガラン
タピア / ベルトラン / セルビ / カルレス・ペレス
アスパス / ラーセン

不動の4バックに中盤はタピアとベルトランを併用。前節負傷で途中交代したオスカル・ロドリゲスはベンチから。ラーセンが初スタメン。




●前半
不思議システムで戦ったアトレティコの前半。保持から。

ヘイニウドは最終ラインに留まらず大外を狙う、というか左のトライアングルに参加する。ルマル、カラスコと一緒にグルグル。カラスコは基本左の大外配置から内へ。意図的に左ハーフスペースを空けた配置を作り、カラスコorルマルがここを狙った。2トップはモラタが真ん中、コレアは右寄り。フェリックスがいる時とは逆。
ヴィツェル&エルモソの夢の2CBからの球出しだが、コンドグビアがいつもに増して酷いボールコントロールが多い。左右IHのデ・パウル、ルマルがボールを引き出しながら進んだ。セルタの1stラインの守り方もあんまり意図を持って相手を止められないのでまあどうにか。


・2つの狙い
アトレティコの狙いは2箇所。

まずは左のトライアングル。カルレス・ペレスの立ち位置が悪いのか周りの連動が悪いのかよくわからんがけっこう簡単にボールを入れさせてくれるカラスコの足下。ここにボールが入るか入らないかでアトレティコのボールの循環の考え方はそもそも変わる。この日は入るパターン。ヘイニウドのハイポジションとルマルのランニングでこのサイドに侵入出来る。

で、もう一つ。これはCLポルト戦の後半に良かった箇所だが、選手を入れ替えてもこの形を多用。左で作って右へ展開。アトレティコの中盤3枚のルマル、コンドグビア、デ・パウルは3枚ともロングボールの質が良い選手の組み合わせなので、この試合は迫力のあるサイドチェンジを連発。

9分の先制のシーン。この場面ではトライアングルを回してルマルがボールを引き受けた。低い位置とはいえこれだけフリーでルマルを放置してくれるとアトレティコの前進は非常に楽になる。ここはセルタもちょっと対策すべきだったかと。ヘイニウドが高い位置に張り出してSBのマージョを釣れている。アトレティコ的に言えば"ヘイニウドで一枚釣れているのは収支がプラスすぎる"。放置される前提で張っているんだが。

もうこの配置で決まってる。セルタは両SHがあんまりSHの振る舞いをしない選手なので、モリーナにボールが入るところで割と簡単に相手SBハビ・ガランに対して2vs1を作れる。デ・パウルがチャンネルを使って相手CBを釣り出し、コレアがゲット。狙い通りでしょう。このゴールシーンはとても良かった。


セルタの保持。序盤はほとんど後方から組み立てるシーンがなかったが、タピアがCB間ポジションを意識し始めてからはやっと保持の形が出るように。むしろそれまでタピアは何をしていたのか。ベルトランの方が低い位置にいる機会も多かった。

序盤はベルトランが低い位置
アトレティコはこの日も両WBが張り出す形。普段は右IHが前進するがこの日の2トップの組み合わせだと左のルマルが飛び出す。彼は長い距離のボールアプローチが元々得意なので、カラスコと並列くらいに立ちながらアイドゥにボールが入ると猛然とプレスした。上手いよね、こういう寄せ方。
セルタの保持はどこを狙い所にしましょうか、という感じだがアトレティコがばっちりハメ込んでいてなかなか前進出来ない。中央に縦パスを刺す機会も大外を深くエグる機会もなかなか訪れず、チャンスメイクに苦労した前半となった。アトレティコは特に苦も無く。問題なく守った。ここ数戦議題にあげていた右サイドの前プレの形は、いつもと違う運用だったのでピックアッププレーで取り上げる。


●前半終了
1-0で前半を折り返す。
なんだかアトレティコの良いところばかりを話したような前半のレビューになったが、全くそんな事はなく、見方によっては今季ここまで最悪の45分だったと言えなくもない。守備をセットすればなんの危険も感じなかったが、ネガトラは緩く、ビルドアップも不安定。

・苦言のターン
まず早速1分にエルモソが前でボールをプレーせずに背後を走ったラーセンに抜け出されてピンチ。4分にはアトレティコ右サイドのポケットを狙う攻撃に受け渡しが上手くいかずCKを取られ、マージョの際どいヘディングシュート。11分にビルドアップでコンドグビアがロストしてアスパスのポスト直撃のシュート。15分にエルモソがアスパスに抜け出されイエロー献上。勝手にバタバタしてピンチを招いていた。ビルドアップも真ん中のコンドグビアをほとんど経由出来ず、この日はカラスコにボールが入るパターン、と書いたが入らなかったらなんにも出来なかっただろう。結局先制して以降はヘイニウドがハイポジションを取れなくなり、セルタに保持の時間を与えてしまった。
守備はグルビッチのセーブが複数あって救われた部分もあるが、あまりポジティブな印象はない。グルビッチの足下は安定感あり。


●後半
後半はルマル→コケを交代
これで中盤がコケ右、デ・パウル左に変更。
どうやら前半の配置の悪いところが気に入らなかったようで、とりあえず色々やめて最近の形に戻る。

ヘイニウドは最終ラインに残り、3枚ビルド。
コンドグビアが一人で経由出来なかった中央をコケが助ける。デ・パウルはルマルの位置。サイドチェンジの質を担保

プレスもモリーナの張り出しをやめてコケが前配置。右側の悩みは解決しないまま。

とはいえターンオーバーを使ってるこの試合で実験を90分通してやったところで答えは出ないし、先制して45分終えられたし、これはこれで一定の成果って事でいいんじゃないでしょうか。残念ながら今後"この部分はリバイバルするかもね"というものは特にないんだが。


・大量得点へ
そしてこの後半は良い時間帯に得点を決められた。まずは50分に早速デ・パウルのシュートで。
この攻撃は後半から入ったコケが前進の中心となり、セルタを敵陣に完全に押し込んだところから。カラスコ側から侵入しようとした二次攻撃で仕留めた。

66分のカラスコの得点も、コケが右サイド深い位置でのプレス回避から。カラスコはハーフウェーライン手前からドリブル開始して一人で完結。らしいゴール。

セットプレーの二次攻撃を雑に対応して1点失ったが、最後は途中出場のクーニャがスピードでぶっちぎって駄目押し(記録はオウンゴール)
今季最多4点のゴールラッシュで勝利した。


●試合結果
大差勝ちしたものの、ネガティブな面もたくさん目についた試合。まずターンオーバーを使ってしっかり勝てた事は評価していこう。相手は一応好調のセルタだし。

まずは序盤にエルモソ、コンドグビア周辺で保持、非保持ともにエラーが続いてピンチを何度も招いた点。彼らはターンオーバーで出場しただけのベンチメンバー、と突き放してしまえば終わる話だが。特にエルモソはCLポルト戦の活躍から出場機会を増やしていくべきチャンスだったはず。低調な出来に終わったのは残念だった。それとターンオーバーで出てきたDFの選手が前半でイエローをもらうのは非常に印象が悪い。使いにくくなるぞ。

そしてその複数回のピンチを凌いだのが初スタメンとなったGKグルビッチ。序盤で失点していたら違う試合になっていた可能性もあり、重要な仕事をこなした。ビルドアップも冷静で安定。
しかし失点のシーン。はっきり言ってあれだけシュートコースを切れている状態でニアを抜かれるシーンを見るのはアトレティコの試合を見ていて初めてだ。比較対象がクルトワとオブラクになるので酷ではあるが、この試合のグルビッチの評価は"オブラクよりビルドアップは良いですね、でもニアを抜かれるようではなあ"という結果だ。あのシーンだけ止めていれば全然印象は違ったはず。場合によってはレヴァークーゼン戦も出番があるかもしれないので、奮起してほしい。

得点に関しては、4点という数もそうだが前半早々、配置をいじった後半開始早々、選手交代を使った60分過ぎ、といずれも理想的な時間に決めている事が、実際の試合内容をぼかして簡単な試合にした。ここ数戦の課題の解決とはいかなかったが、先制点は紛れもなく狙い通りのゴールだったし、点は多く取るに越した事はない。
これでCL2節レヴァークーゼン戦を終えればいよいよマドリーダービー。ここで代表ウィークに入り、ようやく一区切りとなる。


9/10
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 4-1 セルタ
【アトレティコ】'9 コレア '50 デ・パウル '66 カラスコ '82 OG(ウナイ・ヌニェス)
【セルタ】'71 ベイガ


●ピックアッププレー
4節ソシエダ戦、CL1節ポルト戦と連続して触れていたアトレティコ右サイドのプレス構造。この日の前半はここ2試合と違う形で対応したので解説しておく。後半は元に戻ったが。明確に準備したセルタ対策はこれくらいだったように思う。

左SBのハビ・ガランがGKから直接ボールを受けた場面。
まずは相手左SBの位置まで張り出すのはWBのモリーナ。この両翼の押し引きはこの試合のポイントになるはずだったが、点差がついたので特に触れなかった。セルタも大外を取るのがSBしかいない、ソシエダにちょっと似てる前進配置なのでね。つまりアトレティコの強目の前プレの理由は相手SBに高い位置を取らせない事であった。その役割をこの日はWBにやらせた。という話の流れ。

じゃあその後方の対応はどうするんだい、というとデ・パウルが前に出ずに待ち構える事でバランスを取った。この場面ではラーセンの足下へのくさびのパスを選択して、アトレティコはヴィツェルとコンドグビアでサンド。

デ・パウルは移動距離が長いタスクを厭わないキャラなのでこういう"ちょっと無理してもらわなきゃいけない配置"で重宝する。コケとサウルに毒されて常識を失い始めている。いいぞ。
ところで話は逸れるがこのセルタの前進は一体何をどうしたいのか全くわからんな

セルタはSHが大外でタッチラインを踏んで幅、という狙いはほぼないので、デ・パウルにとってマーク担当(主にセルビ)が遠すぎるというケースは全くなかった。だからこそシメオネはこういう形を選んだ。WGが張っている相手にはやらない形。セルタは誰かが無理に張ってみても良かったと思うが、大外を誰が使うかというと

ラーセンが使う。彼は良く走っていた。
ここにヴィツェルが出てきてもその頃にはヘイニウドが絞れているのでCB2枚揃ってますよ。という構造だったので特に不安もなかった。準備されてた感


この試合で、この右サイドのプレス構造がスコアに影響を与えたとは全く思っていないが、アトレティコのHVがPA幅に留まらないタスクが日に日に増え始めているのを感じる。相手の配置でタスクを変えられるならそれに越した事はない。何事も積み重ねである。ちなみにCLでいうとクラブ・ブルージュがWG無しの4-4-2である。


●ピックアップ選手
コレア
今季初スタメンで先制点をゲット。
右大外からチャンネル侵入の形はフェリックス&モラタの2トップでは出ない形で、コレアだからこそ、の得点を見せたのは大きい。

カラスコ
この日はボールを引き出しながら攻撃の軸となった。チーム2点目のきっかけを生む仕掛けと、3点目は自らドリブル独走で決め切った。

デ・パウル
前半は前方へアタックするモリーナの後方のケア、保持ではコンドグビアの横で引き取って前進のサポートと、右側で広いエリアをカバー。後半は左に移ってカラスコの横で75分までプレー。今季初ゴールも決めた。

コケ
前半は休みをもらって後半から。攻守ともに仕組みを元通りにするためにネジを巻く役割を果たした。
結局後半の3ゴール全てに絡み、今季ベストのパフォーマンス。

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