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【ラリーガ23-24全マッチレビュー】第2節〜前編〜

2節見ていく。



①マジョルカ 0-1 ビジャレアル

●微差の積み重ね

8/18
エスタディ・デ・ソン・モイシュ
マジョルカ 0-1 ビジャレアル
【ビジャレアル】'62 ジェラール・モレノ

ボールを持つビジャレアル。マジョルカは5-3-1-1でアマトがアンカーポジションのパレホに張り付く。ビジャレアルは両SBがフリーで持ち出せるが、撤退を厭わないマジョルカ的にリスクは少ない。IHの質でブロックを内側から壊せるなら話は変わってくるが、テラッツとバエナからそういう雰囲気があまりなく、ボールはブロックの外を回る。左WGのブレアトン・ディアスのところでボールが収まり、ポケットにバエナが入る形が一つあったが10回やって1点取れるかくらいの期待値に見える。マジョルカもここは許容箇所に見えた。

マジョルカはボールを奪い返してもクオリティに課題がある。イ・ガンインの不在はどうしても感じてしまうね。CBライージョがアクシデントでジオバンニ・ゴンザレスに交代して以降、ジオバンニは右CBと右SBができるのでマフェオがすっ飛んでいった後方大外をサポートする形が割とハマる。逆のコペテもそんなようなことができるよね。

後半。ビジャレアルは右SBのフォイスが内側高い位置へ出てきてポイントを作ろうと画策。しかしマジョルカは後半開始から左CHにダルデルを入れてフォイスの背後を牽制する。アギーレ節。モルラネス→サム・コスタの交代にどんな意図があるのかはもうちょい試合を見ないとわからん。見るかもわからん。
62分、ビジャレアルの先制点はセットプレーから。相手に当たってファーに飛び込んだジェラール・モレノの目の前に流れてきた。これ以降、マジョルカは意外と同点ゴールを求める動きが多めに。63分にラリンを入れているが、"そういう展開でラリンをどう動かすかのちょうど良いテスト"にも見えた。マフェオを高い位置に残して72分にはラブレスを入れ、4-2-4風に。PA付近でボールを引き出せるラリンとハイボールのターゲットになるムリキのコンビを無理なく活用できていて得点の気配はあった。

ビジャレアルは先制点以降は中盤のトランジションバトルとカウンター狙いを明確に。カプエ、デニス・スアレス、コメサニャとMFの強度を保つ選択肢はいくらでも出てくる。カプエは開幕戦同様の好調で時間を作れて決定的な突破も狙えるパフォーマンス。引き続きフル出場のスルロットは全くシュートが枠に飛ぶ気配がなく、あまり真ん中に居座られてもジェラール・モレノの邪魔になる可能性もありそうで色々改善ポイントは多そう。
結局PK以外に再現性のあるシュートシーンもなく、悩みは尽きない。イリアスの仕掛けはバルサの匂いを感じたがジェラール・モレノとポジションが被るのが悩ましいところ。

マジョルカはアギーレの選択に説得力があり、ポイントは取れなかったが納得感はありそう。ライージョの怪我だけ心配。

●ピックアップ選手
ジェラール・モレノ(ビジャレアル)
チームはまだまだ手探りのサッカーだがセットプレーから決勝点をゲット。怪我なくシーズンを過ごしてほしい。




②バレンシア 1-0 ラス・パルマス

●足りない武器でも説得力を

8/18
エスタディオ・デ・メスタージャ
バレンシア 1-0 ラス・パルマス
【バレンシア】'74 ペペル(PK)

双方開幕戦のメンバーを踏襲。バレンシアは全く同じ11人。ラス・パルマスは右WGにムニル・エル・ハダディ。CBにマルモル(可愛い)を起用。

ラス・パルマスは引き続き地上戦のボール保持がベース。バレンシアは要所、右はコレイア、左はガヤ、中央はディアカビが問答無用で封鎖するスタイル。これを突破できないならラス・パルマスの道のりは険しいものになるが、突破できる要素は正直見当たらない(言っちゃった)。中央のジョナタン・ヴィエラの自由なポジショニングとMF勢の列落ちを軸にマイボールを進めていくがサンドロ・ラミレスの解決力に期待するラストサードに魅力を感じるラリーガファンはあまりいないでしょう。

バレンシアはボールを取り返してから普通に前向きを作れていたので横の比較でラス・パルマスの再奪回はまあまあ緩いのではないかという感想。ディアカビが保持局面で蚊帳の外なのにちゃんとボールが回っていたのはペペルの過労働の賜物か。ちなみにラス・パルマスは次第に本当にディアカビを放置するようになっていった。
ディエゴ・ロペスとフラン・ペレスは引き続きどっちがどっちだかわからんが積極的に背後を狙ってランニングし、そこにちゃんとボールが出てくるので推進力抜群。両SBも縦挙動を活かしてガヤから速いクロスを入れ、コレイアは内側へ突進して決定機を得た。決まる気はしなかった。
ガヤを筆頭に斜めに良いボールを送り込んでいて、ニア突撃くらいしか仕事のないはずのウーゴ・ドゥーロが全然ニアに入ってこなかった。シンプルなスピード不足説。あと目印がないとクロスに入るのって難しいよね。彼は先に飛び込むCFの後ろに入り込む方が合ってそう。

後半。ハビ・ゲラを入れたくらいから顕著になったがラス・パルマスは大外の人の捕まえ方が割と適当な感じ。バレンシアは大外にボールが入ったタイミングでもう一人入ってくるとフリーでSBの背中を取れた。この形は数回あった。とはいえバレンシアもFWの替えがいない。別に強度が上がるでもドリブル専用機がいるでもなく時を過ごしたが、コレイアの持ち上がりからハンドでPKを得た。ペペルが決めて先制。残り15分+ロスタイムに向けてフルキエが出てきたりクローズ作業。
ラス・パルマスはペヒーニョにしてもベニート・ラミレスにしてもマルク・カルドナにしても決定打にはならず、空気の変わる何かはないまま時間が過ぎていった。

バレンシアは開幕連勝。苦労が絶えないシーズンだがとりあえず勝ち点は積めている。序盤で躓くとまた監督交代とか騒ぎ始めるので一安心。ラス・パルマスはスタイルと心中するのはわかっているがこういう負け方はあまり好きじゃない。ネガティブトランジションの考え方、比重の置き方も調整が必要に見えた。

●ピックアップ選手
ペペル(バレンシア)
決勝点となるPKで移籍後初ゴール。ホームのファンの前で試合を決めた。隣にディアカビがいる環境のビルドアップはなかなか心労が多そうだが、実は最重要ポジションかもしれない




③ソシエダ 1-1 セルタ

●対応力を手にするためには

8/19
レアレ・アレーナ
ソシエダ 1-1 セルタ
【ソシエダ】’22 バレネチェア
【セルタ】’90+4 ミンゲサ

この日はボールを保持して大外の突破を何度も利用したソシエダ。コンパクトに真ん中を閉じようとするセルタはサイドチェンジに苦しんでいく。待ち構えていたのは右WGの久保建英だった。開幕戦は本来中盤のセルビを左SBで起用したセルタだったが、流石に久保の対応をセルビにさせるのは無理があると見てマヌ・サンチェスをスタメン起用。懐かしい話だが、マヌ・サンチェスのアトレティコでのキャリアが閉ざされたのは当時マジョルカの久保にけちょんけちょんにされた試合だったと記憶している。この試合のソシエダはブライス・メンデス、アマリ・トラオレが内側にポジションして久保への大きなサイドチェンジを使ってここのアイソレーションを何度も擦った。結果、マヌ・サンチェスは何も成長していないことを証明してしまう対応を繰り返し、久保の縦突破からバレネチェアの先制ゴールが生まれている。純粋WGであるバレネチェアが3トップの一角としてPA内まで入ってきてのヘディングゴールは感慨深い。彼なりに階段を登っている。

途中からセルタはベルトランがCB間に落ちて5-4-1のような形でサイドチェンジに振り回される形の改善を狙う。

ラーセンが中盤の右に入らなければならない形は矛盾を伴った。そして主題とは逸れるがデラトーレが全く試合に入れていなかったのは気になった点。
流石にボール保持に自信のあるソシエダは慣れたもので、5バックになったと見てから保持のポイントをCBに移す。これでノープレッシャーでボールを持ち始め、ソシエダの試合のまま前半終了。

後半

後半はセルタがアイドゥを入れて明確に3バックに変更。開幕戦に続き印象の良かったソテーロが交代となった。アスパスの左右にラーセンとバンバがいる形はアスパスのやりやすさに繋がっていた感じ。
そして相手の配置が変わるとソシエダはこの日も簡単に優位を明け渡す。セルタはボールを持てるようになり、特にデラトーレは見違えて良くなった。ソシエダの両翼のプレス箇所もはっきりせずWBを捕まえきれなくなり、マヌ・サンチェスが反撃の大外侵入を見せ始めた。ちなみにこうなった時にソシエダはWGを交代して何となく走力で解決しようとする雰囲気があまり好きではない。
終盤、ソシエダはパチェコを入れて3CBに変更。1-0勝利を受け入れた。が、その時間から肝心のアスパスが突然空き始めチャンスメイク。最後はCK連発からPA内でアスパス→アイドゥ。こぼれ球にミンゲサの足が伸びて同点。PA内で何度もアスパスをフリーにしたのは何だったのか。これで2試合連続で終盤に追いつかれてのドロー。セルタは苦しみながらも相手を見て適宜選手交代。最後まで同点ゴールの可能性を探ってどうにか追いついた。あとは前半から主導権を握る戦いを目指したい。次の相手マドリーだけど。

●ピックアップ選手
ジョナタン・バンバ(セルタ)
クオリティを見せた。前半に一発裏抜けであわやの場面も作れた。カットインして右足シュートは強烈な物がありそう




④アルメリア 1-3 マドリー

●整理された両チーム

8/19
パワーホース・スタジアム
アルメリア 1-3 マドリー
【アルメリア】’3 アリバス
【マドリー】’19 ’60 ベリンガム ’73 ヴィニシウス

たった一試合で最適解のようなものに辿り着いているアルメリアは開始3分、FKを新加入GKマキシミアーノがキャッチして左サイドのカウンターをラマザニとロベルトーネで完結。クロスに入り込んだのはカスティージャから移籍したアリバスだった。ホームチームが願ってもいない先制ゴール。

試合は当然マドリーがボールを握る。先制点を抜きにしてもアルメリアが設定していたのが両SHの守備貢献。エンバルバはともかくとして左のラマザニはバルベルデを警戒しながら大外のカルバハルにボールが入るとそこまで対応に行く可動域を発揮していた。
19分のマドリーの同点ゴールはそのバルベルデが中央に出張し、チュアメニがラマザニの注意を引いて大外のカルバハルを使った。もう一人の使い方が段違いに上手いチームである。クロスに飛び込んだのもバルベルデ。よくできている。最後のベリンガムはハンド疑惑だったがゴールが認められた。2戦連発。

ベリンガムは中間でとんでもないスピードのパスをビタ止めし続けていた。ライン間を自由に出し入れできる余裕から、次第にカルバハルが立ち位置で浮き始めマドリーの時間になってくる。
アルメリアは右SBのプビルが出口に。ロベルトーネの配球を活かして押し込んでいた。ロベルトーネとババは際どいミドルも打った。ラマザニもPA内で数度可能性を見せた。これを決められると彼は圧倒的な存在になれるんだが。

前半ロスタイムに相手のスローインを引っ掛けたマドリーが最後はクロースのボレーで逆転と思われたがカルバハルのファールを取ってゴール取り消し。良い時間を過ごしていたアルメリアはなんとか同点のまま前半を終えた。

後半は開始からマドリーが両SBを高い位置に。「中央を進んで大外使えるんだぞ」を突きつける。
どれだけマドリーにボールを持たれても、奪い返してちゃんと敵陣PAまで運んでシュートで終わるアルメリアは素晴らしい。カウンターではスアレスとラマザニが共鳴し始めた。

そろそろ選手交代も見え始めた60分、マドリーの保持からクロースのアーリークロスにまたもベリンガム。CBとSBの間をすり抜けてピンポイントで触った。ちょっとどうしようもないなこれは。
スコアが1-1なら価値のあるカウンター狙いだったが、単品で崩されてアルメリアは厳しくなってしまった。アルメリアはラマザニに替えてイブラヒマ・コネ。その後もも裏を痛めたプビルに替えてポソ、中盤にメレーロが出てくる。マドリーはクロース、ロドリゴを下げてモドリッチとカマヴィンガ。余裕のある交代。73分、この選手交代で大外に立ち位置を変えたバルベルデがカルバハルと、プラス1を作りにきたベリンガムを使って突破。マイナスの折り返しにベリンガムがヴィニシウスへ優しいダイレクトフリック。ヴィニシウスの今季初得点が生まれて勝負あり。マドリーは規則正しく、ベリンガムを活用。アルメリアは連敗スタートとなったがあまり心配はしていない。改善点はカウンター対策のCBくらいかなと。右に動いたエンバルバのタスクが整理されていた感じがしたのも好印象です。

●ピックアップ選手
ジュード・ベリンガム(マドリー)
同点ゴールと逆転ゴールの2発。2戦3発の好発進。割ともう何があっても驚かない。




⑤オサスナ 0-2 アトレティック

●得意技を惜しげなく

8/19
エル・サダル
オサスナ 0-2 アトレティック
【アトレティック】’11 イニャキ・ウィリアムズ ’20 グルセタ

保持の形を探り合った序盤戦。10分、左大外で仕掛けたニコのアーリークロスにイニャキが飛び込んで先制。直前のプレーでニコが縦に仕掛けたフリが効いていてルベン・ペーニャは対応できなかった。イニャキの入り方もパーフェクト。2点目もニコの仕掛けから。後方カバーを2人置いた3人対応で問題なさそうに見えたが簡単に突破されて最後はグルセタ。得意のワンタッチゴールが出た。オサスナはクオリティで2つやられた形で、ちょっと淡白だった。特に2つ目。その後もイニャキに振り回されるモヒカとカテナであった。

2点リードすればカウンターをチラつかせて試合のペースを落とせるアトレティック。オサスナはサイドチェンジで溝を突いてルベン・ガルシアの決定機に繋げたプレーはらしさが出たが、シモンが立ちはだかった。これもクオリティ。デ・マルコスが前半のうちに怪我をしてレクエと替わるアクシデントはあったが対人守備能力で言えばむしろ守備固めのような形に。ロスタイムのルベン・ペーニャ→モヒカが決まっていれば結果は違ったかもしれない。ルベン・ペーニャ然り後半出てきたチミー・アビラ然り、やはりPA内でボールを触れる選手がいると状況が変わる。

後半に入っても逃げ切りに特に不安はないアトレティックはオサスナを引き込んでカウンター狙い。そのカウンターの局面でサンセとダビド・ガルシアが揉めて喧嘩両成敗。サンセは2枚目のイエローで退場に。これで一層逃げ切り体制を明確にしていった。
球際の判定がオサスナに味方しないことも多くフラストレーションを溜めていったが、まあ相手に退場者出てますし、という状況ではあった。それとウナイ・シモンが当たりまくっておりこの試合7セーブと止めまくり。

フラストレーションをわかりやすく表現してしまったのはチミー・アビラ。ロスタイムにまずい両足タックルで一発退場となった。
アトレティックは相変わらずGK前に差し込む高精度のアーリークロスでチャンスメイク。これで前半に試合を決めた。オサスナは局所で甘かった。仕切り直し。

●ピックアップ選手
ニコ・ウィリアムズ(アトレティック)
2アシスト。このクオリティを継続したい。左の方がいいのかも



以上。後半も見切れるかな

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