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クラブに必要な条件 4節 アトレティコvsアトレティック(A) 2024.8.31

過密過密。4節です。これが終われば代表ウィークで中断。そういえばアトレティコは新加入選手が結構代表選手ですね。頑張ってください。

メルカートも終わりまして。最後までMFの獲得を模索していたが売却が進まず断念。スカッド確定となった。ハビ・ガランは21番。
3節はホームで昇格クラブのエスパニョール相手に0-0のドロー。喪失感の強い試合だったがマドリーも引き分けたのでセーフ。

前回対戦は先季の33節。

ドルトムントに負けた次の週なので正直記憶が抜け落ちていて何も覚えていない。


●スタメン

・アトレティコ
ムッソ
ル・ノルマン / ヒメネス / ヘイニウド
ジョレンテ / バリオス / コケ / ギャラガー / リーノ
グリーズマン / アルバレス

体調不良でメンバーを外れたオブラクに代わってムッソが先発する。
ヘイニウドが左CB。ギャラガーが初スタメンとなった。

・アトレティック
アギレサバラ
レクエ / ビビアン / ジェライ / ユーリ
エレーラ / プラドス / サンセ
イニャキ / ニコ / グルセタ

右SBはレクエで対策。前節ベンチ外のユーリが復帰。

大雨の中キックオフ。


●前半

90分を通じてアトレティコのプランは守備が最優先。アウェーでまずは負けない事を重視した。このプランは特に前半、2つの要素を追加して加速する。一つはピッチ状態が悪くショートパスを繋ぐにはリスクが大きかった事。もう一つはアトレティック側もリスクを負わない前半を過ごした事にある。

アトレティコはグリーズマンが右大外を担当する5-4-1。当然アトレティックのサイド攻撃、特に左のニコ・ウィリアムズの脅威を警戒しての対応。先季もアトレティック戦でやっているので違和感もない。先季はグリーズマンが頂点だったが。流石に守備的に入るからという理由でフリアン・アルバレスとスルロットをどっちもベンチに置くわけにはいかない大人の事情は見え隠れする。

結果的にこの守備はバッチリハマり、前半のうちにピンチらしいピンチはなかった。イニャキ・ウィリアムズをヘイニウドが、ニコ・ウィリアムズをジョレンテが封鎖し後方にル・ノルマンとヒメネスが余ってるのだからそりゃ簡単には破られない。ル・ノルマンは逆にニコにイエローを出させる大車輪の活躍。リーノは背中をヘイニウドが光の速さでサポートしてくれる事を良い事に適当に足を出す対応を繰り返していたがこれはこれでいいでしょう。内に進まれなければ。

アトレティック側はCHのコンビ、特にアンデル・エレーラがトランジションを意識してアトレティコのMFラインの後方に留まり、両SBも大外を駆け上がるような形は取らなかった。アトレティコのカウンターの速さをリスペクトしたリスクヘッジが確実にあり、「それでもWGの質とセカンドボール奪回でチャンスが作れるならそれでいいよね」という発想はバルベルデにあっただろう。それをさせなかったジョレンテとヘイニウド、そしてセカンドボール回収でシメオネイズムを体現したコケ&バリオスが良い仕事をした。結果、前半を枠内シュート0に抑えている。
WGが単品で攻撃を完結できない時に、アトレティックの最大の武器といえば、オスカル・デ・マルコスがファーポケットに落とすアーリークロスである。

デ・マルコスが不在

この試合でも27分にイニャキの侵入に3人が釣られ、後方のSBをフリーにしたがこの日はデ・マルコスではなくレクエが起用されており、折り返しは精度を欠いた。ジョレンテもしっかりファーポケットまでポジションを下げており問題のないクロス対応だった。ちなみにモリーナは割とこういうポジショニングをサボる。また、ギャラガーは人数が足りていたのでイニャキの対応に出ていく必要は微妙だった。


続いて苦労の多かったボール保持面。

この日のボール保持の特徴はヘイニウドのポジション。アトレティコは後方3枚を作らずヘイニウドが早々に大外へ移動していく。アトレティックのやりたいプレスがアトレティコの3-2を前線4人で追いかける形なのは明白で、その目をずらす意図があり同時にシメオネはアトレティックのロングカウンターでやられ続いた先季の記憶と戦った事は想像に難くない。"イニャキとニコを自陣まで押し込む事"がこの配置の狙いであろう。

本来アトレティックが想定していた形

ここでアトレティコを難しくしてしまったのがスリッピーなピッチコンディションで、CBから縦パスを入れてバリオスがずっこけるリスクがあまりにも高く、コケと共に中央で前向きを作る事がほとんどできなかった。天気予報が頭に入っていたかは知らないがハーフタイム頃から晴れてきて後半には多少ましになっていく。
結果として中盤を省略するボールを選択する機会が増えてしまい、どう見てもロングボールでどうにかするメンツではないこの日のスタメンではなかなか厳しかった。
アトレティコのチャンスといえば13分にカウンタープレスでアルバレスがなんだか抜け出したシーンと、40分にリーノの仕掛けで何故かガラガラに空いたギャラガーのミドルシュート。ちなみにプレミアトップ6のレギュラーMFなら確実に決める場面だと思ったので外してびっくりしてしまった。そんなもんなのでしょうか。

ギャラガー自身はもっと自分に縦パスを刺してこいというジェスチャーも多かったが前談のピッチ状態の問題もあり内側を狙う縦パスはあまり選択肢に入ってこなかった。彼自身怪しいボールロストもあったのでコケがボールを入れる優先順位をだいぶ下げていた印象。ちなみに守備は引き続き良かった。
ムッソは問題なく試合に入れたが、詰まった時に適当に蹴っ飛ばすのが異常に上手いオブラクと比べると逃げ道に困るシーンはいくつかあった。正解は相手SBの外側です。


●前半終了

双方枠内シュートなし。先季ダイナミックな試合が多かったカードなので拍子抜けするほど大人しい前半を過ごした。
狙った展開を生んでいたのは確実にアウェーのアトレティコの方で、後半はどちらが動き、どのように展開が変化するのかを見極める必要があり、自軍の手札だけでなく相手が切るカードも想像しながら戦っていく必要が出てきた。
アトレティックはこういう時にだいたいグルセタを下げてイニャキを真ん中に移動させるので、その際にニコが右に動くのか左のままなのかがアトレティコ側の対応ポイント。特に新加入のジャロは左専用っぽいので彼が出てくるのかベレンゲルが出てくるのかで対応を見極めていく事が重要になる。



●後半

選手交代なしで後半。当然だがエスパニョール戦のように0-0を良しとしていなければこのタイミングで早速選手交代を使うはずで、そうならなかった事からもシメオネの納得感は見える。

後半開始早々、縦パスを攫われたところからカウンターを喰らいイニャキ→ニコのいつものパターンで決められたがギリギリオフサイド。なんとか助かった。
アトレティコはこの時間帯にグリーズマンが中央に移動して右にアルバレスが関わるなど変化を作り、ジョレンテ周辺から複数回侵入の機会を作っている。54分にはグリーズマンからリーノへ際どいクロスも出た。グリーズマンは中央でボールを引き取ってリーノに大外のスペースを使わせるなどリズムを掴んでいった。彼はここ2試合に比べると大分スムーズにプレーできた。リーノは相変わらず詰めが甘い。
ピッチ状態の回復を鑑みてかバリオスとコケのパス交換も増え始め、チャンスを作ったりピンチを作ったりした。やっぱり危ないです。ジョレンテもコントロールミスが複数あり、やはりスリッピーな状態は続いていた様子。

64分に注目のアトレティック最初の選手交代。3枚替えた。

64分にアトレティックが3枚替え

CHをハウレギサールとベスガに交換。ハウレギサールはこの試合の前にトップ登録されて背番号23に変更。おめでとう。
そしてグルセタを下げてジャロ。アトレティコからすると前線の並びを確認するフェーズに入ったが、そのままジャロがグルセタの位置に入った。意外。
おそらく非保持でSHをやらせる事に心配があり、保持局面では流れの中で立ち位置を入れ替えると考えるのが自然だろう。という事でこの選手交代では環境は変わらず、膠着状態は継続した。

次の変化は70分。アトレティコは3枚、アトレティックは1枚交代。最前線をスルロットに替え、リーノ→リケルメ、デ・パウル投入でグリーズマンを左に動かした。

70分、今度はアトレティコが3枚替え

よく考えたらこの交代云々の前にグリーズマンは左で良かった気もしてくるが、まあいいでしょう。そしてアトレティックはイニャキ→ベレンゲル。ニコの立ち位置が変わるとしたらこのタイミングだったがベレンゲルはそのまま右WGに入ったので結果的には変わらなかった。
ちなみに交代したばかりの時はまだグリーズマンは右におり、73:25頃に自分が左に移動する事をデ・パウルに直接伝えて移動していた。ニコの移動を見てから決めるというベンチの指示だったのかなと。

この日はスルロットのポストプレーの感触が良く、グリーズマンと近い距離でプレーして右大外のデ・パウルを使う形が見られた。デ・パウルは自分でクロスを上げるのとジョレンテの上がりを待つ2つの選択肢を持てたがここからチャンスに繋がる事はなく、ただしニコ・ウィリアムズ側のサイドを押し込む効果は得た。緩やかにではあるが展開はアトレティコに向いてくる。

攻撃はともかく守備におけるデ・パウルの安心感はずば抜けていた。一番ベストな仕事でしょう。5-4-1の右大外。目の前の相手を確実に止めながらジョレンテとCHを両方サポート。先に1点取ってクローズ局面で出てきたら頼もしすぎる。

アトレティックは81分にサンセ→ウナイ・ゴメスで先に交代カードを5枚切り終える。この頃にニコの右サイドへの移動があったがおそらく一時的なもの。ジャロが左、ニコが真ん中にいる事もあった。ちなみにジャロはくさびを受けるのが下手すぎる。

選手交代が始まって以降で唯一のピンチは86分にヘイニウドがウナイ・ゴメスに振り切られた場面だけ。甘く見たな。チョンボです。ただ、PA内の人の捕まえ方は危なげなくウナイ・ゴメスは出し所がなかった。

こういう展開になるとアトレティコは守備機会を減らしながら走力でピッチを回復していきたい。そうなるとシメオネの選択肢はグリーズマンとコケを下げる事に繋がっていくのは歴史であり常識。アトレティコの日常。84分にグリーズマン→ジュリアーノ、88分にはコケ→コレアを交代してピッチの縦幅を縮めていった。

決着はロスタイム90+2分、CKのセカンドボールをニコが後方中央に戻したところを猛然と狙ったコレアとスルロットがレクエからボール奪取。コレアがGKを交わして流し込んだ。ホームチームには悪夢のような結末となったが結局最後までピッチ中央がスリッピーだった事が原因した。互いに互いの首を締め殺すような90分間だったが、最後は一瞬で決した。



●試合結果

この試合、0-0で終えていたらシメオネの中で100点満点中で何点だったのかは正直気になる。それぐらいに守備的な設計をした試合だった。実際10回やって8回は無得点で終わりそうな試合だった。先季1年間で振り返ってもここまで0-0を受け入れる戦い方をしたのはインテル戦1stレグくらいのものじゃないか。それだけアトレティックをリスペクトし、またアウェーのアトレティック戦にシメオネがビビっていたとも言える。正直引き分けだったら臆病者と言われていただろう。チャビ辺りに。

この試合、個人的な感想として一番重要視したいのはそういう試合のリスクを極小化してきっちりと無失点で終えた事。これが出来なかったここ数シーズンだろう。クリーンシートを狙うというのは言うのは簡単で目指すのは当然だがマドリーとバルサ相手に、またはCLの重要な試合で"狙ってクリーンシートを取れる"という自信はアトレティコというチームに必ず必要なもので、アトレティックへのリスペクト云々を抜きにしても開幕早々に試す必要のあるゲームプランだったと断言する。それを実行できた事は間違いなくチームの積み重ねになる。実際10回やったら少なくとも6,7回は無失点で終われたくらいの余力があった。
ジョレンテとヘイニウドは洒落の通じない対人性能を発揮し、ル・ノルマンとヒメネスのゴール前の安定感は群を抜いていた。ル・ノルマンは最短距離でチームにフィットした。既にいない状態を想像できない存在になっている。ムッソはハイボールに安心感があり唯一の守備機会になった67分のサンセの強烈なミドルシュートにも余力を見せた。先季ビッグトーナメントを頂点まで戦っている経験値がマイナスになるはずはなく、チームに新しい力を与えている。ギャラガーはバリオス&コケと同じタスクとグリーズマンの横に立つタスクを与えられ、まだ良くなる要素を見せる。引いた相手を崩す局面でどんな仕事ができるかをもう少し見たいところ。

ボール保持はリスクヘッジに重きを置き、ピッチ状態によってはもっとボールを持てただろうがこの日は別の事が優先された。バリオスは柔軟にプレーを判断できた。"ボールを失うとしたら自分"という感覚が備わっていた印象。成長を感じる部分。
チーム全体はボールロスト時のイニャキとニコの立ち位置を警戒し続け間違いが起きない配置を維持した。これも先季にはできなかった部分だ。ピッチ状態が悪かったからこそ拘れたと考えれば結果オーライ。十分なテスト結果を得た。

こういう試合を終わらせるのは今季もアンヘル・コレアであった。彼のゴールには脈絡がない。しかし確実にチャンスを得点に繋げて、守備局面では仮にそれしか出来ないプレイヤーだったとしてもピッチに立つ価値を証明する。だから彼は愛され、だからこのクラブの偉大な背番号を与えられる。コレアがいて良かった。自分の愛するクラブに君がいて良かった。

アトレティックは、想定通りの交代策を使ったが効果は生めなかった。ニコがジョレンテのサイドから逃げる選択肢を持てなかったのはアトレティコがリーノ→リケルメの交代で走力を落とさなかったからかもしれない。個人的には左SBをボイロに替えてニコの外側を駆け上がる形を使われるのはアトレティコ的に嫌だっただろうなと思いつつ、バルベルデもそこから生まれるリスクは避けた。膠着した最大の要因はアトレティック側にあった気もする。保持率だけで見ると後半は51.3%に下がっており(前半は54.5%)敵陣で試合をする時間を増やせなかった。

ラリーガは4試合を終えて一度中断。チャンピオンズリーグが始まる。

8/31
サン・マメス
アトレティック 0-1 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】’90+2 コレア


●ピックアップ選手

ル・ノルマン
グルセタの対応とジョレンテの背後のカバー。ゴール前に鍵を掛けた。アトレティコのCB。

ヒメネス
勇気を持ってボールに飛び込んだ。それが仕事。最近ヴィツェルと棲み分けができているのは良い傾向。自身のタスクに集中したい。

ジョレンテ
完璧。ワールドクラスだった。

ムッソ
緊急出場になったが問題なかった。そのためにアトレティコに来た。ポジションを奪うモチベーションが見たい。

デ・パウル
守備のマスタークラスとして期待された仕事をこなした。必要だった。

コレア
ロスタイム含めて8分弱の出場は不本意だろうが必要なゴールを決めた。ヒーローに相応しい。


●myQA

4-1 5-4-1とグリーズマン
アトレティコの非保持形の是非はどんな時もグリーズマンの置き所がキーになる。先季終盤の5-4-1はグリーズマンが頂点にいて左右に怒涛のランニングをする選手がいる事で成り立っておりこの日の形は全くの別物。特に前半は"ジョレンテの守備タスクの軽減"が義務付けられた事で右サイドからいなくなる事も制限された。"グリーズマンなしで成り立つ守備組織にグリーズマンの個人能力を付加する"からはかけ離れたシステムになった。
後半アルバレスが右に流れてグリーズマンを中央付近に動かす亜種を見せたがそれが具体的な解決策になるとはあまり思えない。度々触れるがグリーズマンがいる=2トップで試合をする事は基本的に絶対条件になる。最終的に走力で仕留めようと思った時に交代の選択肢はグリーズマンになる。最適解はまだまだ先になる。

4-2 ムッソのタスク
クリーンシート。申し分ない活躍でオブラクのバックアップではなくライバルである事をアピールした。オブラクと同じシュートストップができるGKが世界にゴロゴロいるとは思わないが水準以上のクオリティをしっかり本番で、しかも無失点が絶対条件の試合で出せたのは素晴らしい。アクシデントで出番が回ってきたがここで試せて良かった。
ビルドアップも自信を持っている(ちなみに個人的に22-23にアタランタの試合をかなり見ていたので割と知っている選手です)のが伝わってきた。もしかして不可欠な選手になれるかも。期待したい。

4-3 ジュリアーノのタスク
先季アラベスで左サイドのマルコス・ジョレンテみたいな仕事をしており、こういうスクランブルで間違いなく仕事する選手。期待通りの役割で出番が回ってきた。縦に仕事ができる選手。自身の価値をよくわかっているランニングだった。このスカッドに必要な選手。

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