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たまには楽をして 26節 アトレティコvsバレンシア(H) 2023.3.18

ここ9試合で6勝3分、16得点4失点と好調のアトレティコ。クリーンシートも5回ある。とにかく非保持が良い。失点はしませんよ、という環境を前半に確認し、後半に入ってプレス強度を高めて徐々に押し込み、60分過ぎの選手交代でラッシュを掛ける、という形が定番化している。結果、前半は0-0の通過が多いことも特徴である。
23節のマドリーダービーでヘイニウドが負傷すると3CBの5-3-2に配置を変更した。WBの立ち位置でバランス調整する方法が上手くいっている。

対するはバレンシア。前回対戦。

バレンシアは現在は降格圏まで勝ち点差なしの17位と低迷している。
今季はガットゥーゾを監督に迎え、メンバーはソレール、ゲデス、シレッセン、アルデレーテなど色々いなくなった。このチームは色々難しい。
序盤の成績は悪くなかったが、W杯後に失速。19節にバジャドリードに負けたところでガットゥーゾをちゃっちゃと解任。その後も連敗は止まらず負け続けた。今はクラブレジェンドのルベン・バラハが就任している。逆にOBじゃなきゃ引き受けてくれないんだろうな。ちなみにルベン・バラハがアトレティコにいたことは全然知りませんでした。
メンバーは誰が監督やっても10位くらいになれそうなほど揃ってる。と思ってるんだけど。唯一離脱しちゃ駄目そうなカバーニが22節から離脱したのはキツい。この試合でベンチ復帰。

前節はオサスナ戦。4-5-1の非保持配置で中央のギジャモンが各方面に気を利かせる守備はいい感じなのか苦肉の策なのか。クライファートが独力でこじ開けた決勝点は見事だったが、無失点で耐えられるならなんとかできる、という注釈が付く現状だろう。実際今はアウェーで5試合無得点と苦しんでいる。


●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / サヴィッチ / ヒメネス / エルモソ
コケ / デ・パウル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / メンフィス

デ・パウルは22節アトレティック戦以来約1ヶ月ぶりのスタメン。それ以外は全員ジローナ戦と同じ。

・バレンシア
ママルダシュヴィリ
フルキエ / キュマルト / エズカジャル / ガヤ
ギジャモン / ニコ・ゴンザレス / ムサ / コレイア
クライファート / ウーゴ・ドゥーロ

今季たまにあるフルキエとコレイアの併用。効果は知らん
前節初めてスタメンを外れたリーノ君はこの日もベンチから。
中盤はアンドレ・アルメイダではなくニコがスタメン。



●前半
バレンシアはCBからの配球の選択肢に両WGを走らせるボールが多かった。

こういう攻撃をされること自体これまでそんなになかったが、WB裏を狙ったロングボールで簡単に侵入されるようで5-3-2が成り立つはずもなく、アトレティコは特に危なげもなく対応した。そもそもおれは5バックのWBが背後を取られるのが嫌いだ。クライファートは背後と見せかけてモリーナの手前で縦パスをもらう、のような動きが上手く、起点になれていた。
中盤でアバウトなボールのデュエルになる事が増えて、結果的にコケ、デ・パウル、ジョレンテの最強球際3兄弟を起用しているメリットが大きくなり、最近の試合の中ではかなり前半からボールが持てた。

アトレティコの保持に対し、バレンシアは前節同様4-5-1で配置。この守備組織は相手のCBやCHからの配球を阻害するのが苦手。かなり人の能力に依存する対応となる。アトレティコはカラスコ、メンフィス、そしてモリーナなどが頻繁に背後へのランニングを狙うことでバレンシアにボール奪取のポイントを作らせないことができていた。良いと思います。

バレンシアはアトレティコの配球を阻害しようとすると、どうしてもIHのムサとニコが前へ対応する必要が出てくる。

どう考えてもギジャモン周辺がスカスカ

この場面ではメンフィスの背後へボールを送り、跳ね返りをジョレンテがどフリーで待っていて際どいシュートまでいった。
先制点もこの形。こういった相手の守備陣形をしっかり見て配球できるのはシンプルにサヴィッチの良さである。特にジョレンテやコレアにはここ数年の関係性で良いボールを出せる。

先制の場面

23分に幸先良く先制。この時はプレス回避局面で、最終ラインの手前で縦パスを引き出したジョレンテが上手くターン。この日のジョレンテはボールタッチの感覚が非常に良かった。サヴィッチのドリブル持ち出しにニコがどこまで出るのかフワッと対応してしまい、結果的に出し手も受け手もノープレッシャーだった。
ジョレンテがグリーズマンに通したスルーパスはややズレたが、上手いことゴールに繋げたグリーズマンが見事だった。
前節オサスナ戦でもあったが、バレンシアは前方を警戒しようとする場合どうしてもIH(ムサとニコ)が前に出る必要があり、ギジャモン周辺の対応が浮くのは必然。チームとしての許容なのか、そこまで気が回らないのか。

あとはこの前半、決定的に良かったのが2つ。
1つはエルモソのボール奪取からの持ち出し。

前向きにボールを奪えるエルモソ

バレンシアはコレイアのスピード(と守備力)を生かそうとWGで起用したが、ここをカラスコが対応。ムサと配置を入れ替えるような選択が全くなかったため、前節ジローナ戦で内側に入ってきたツィガンコフのような対応の難しさはなく、エルモソはムサに入るボールと、流れてくるウーゴ・ドゥーロの対応だけしていれば良い簡単な対応になっていた。5バック相手だったらカスティジェホが良かった気がする。
エルモソはこのムサに入ってくるボールに対して積極的にアンティチポを狙ってそのままドリブルで持ち出し。これが16:50のメンフィスの決定機と、19:30のエルモソ自身も絡んだ美しい連携プレーに繋げた。メンフィスのフィニッシュはママルダシュヴィリの好セーブで止められたが、気持ちの良いパスワークだった。

もう1つは、ジョレンテの関与でカラスコ側からのアタックを積極的に引き出したこと。

ジョレンテのランニングが中盤の優位を生む

モリーナがかつてのトリッピアのような微妙な中間ポジションでボールを引き出し、ジョレンテがチャンネルアタックをチラつかせるとバレンシアはニコが対応。これで中央付近はコケ、デ・パウル、グリーズマンにエルモソまで横パスを待っていて中盤エリアを支配。フルキエの向こう側でパスを待つカラスコにクリーンなボールを幾度となく送り込み、アタッキングサードでプレーすることができていた。これも良かったね。

●前半終了
1-0で折り返し。連勝を続けているが、ここ最近の試合の中でも相当優位に進められた部類。30分にカウンターでウーゴ・ドゥーロに決められたが、その前のプレーのフルキエのファールを取った。これ以外に危険な場面は全くなく、敵陣のプレーも説得力があり効果的に振舞った。後半は何しても勝てそうな雰囲気である。

バレンシアは新監督が色々と課題解決を探っている印象があり、今の時点の完成度では残念ながらアトレティコと大きな差があった。では、後半。

●後半
選手交代なしで後半。バレンシアもなんとなく戦い方は変わらず。このチーム状況だと監督も「0-1ならワンチャンスあるぞ(あとはおれの選手交代策次第)」みたいな指示になってくるんじゃないかな。それしか言いようないでしょ。

しかし49分に早速アトレティコに2点目が入ってしまう。最終ライン手前でボールを拾ったジョレンテが斜めに疾走。シュートは止められたが再びボールを拾ったカラスコがデ・パウルとのワンツーを使ってゲット。得意な形。けっこう手がつけられない様子になってしまった。


■選手交代
62分に双方選手交代。
バレンシアはリーノとモリバを入れる。交代はコレイアとムサ。
アトレティコはモラタとルマルを入れて、メンフィスとデ・パウルをここで下げた。メンフィスはこの日得点はなかったが、さすがの働き。継続性が素晴らしいね。デ・パウルは久しぶりの先発起用に応えるパフォーマンスだった。アシストも記録。

67分、アトレティコに決定的な3点目。ルマルが中盤でボールを引っ掛けてカウンター。グリーズマンからモラタに送り、クロスにルマルが珍しく頭で合わせた。完璧なカウンター完結。バレンシアは前がかりな時間を作りたい瞬間にひっくり返されて万事休す。ウーゴ・ドゥーロとクライファートの2トップにしようとしていたようにも見えた。なんかルマル髪型変わったな

70分にカラスコがお役御免。代表頑張ってください。コレア投入。ジョレンテもここで仕事を終えてバリオスが入った。
同時にバレンシアはアルメイダとカバーニを入れてファイティングポーズは取り続けた。繰り返すがそれしかやりようがない。
アトレティコは77分にコケ→ヴィツェルを交代してクローズ。危なげなく締め括った。2戦連続のクリーンシートで10試合負けなし。

バレンシアはカスティジェホを入れるなどしたが、この後も作れたチャンス78分に左から低いクロスにリーノが合わせたシーンくらい。これでアウェーゲームは6戦連続無得点となってしまった。


●試合結果
3-0。3連勝は今季2度目。ちなみに2回ともセビージャ、ジローナが関わっている。
10戦負けなしは優勝した20-21シーズンの2020年12月19日から2021年2月18日までの11戦無敗(9勝2分)以来。
ヘイニウド離脱後もチームは良い循環を続け、メンフィスがトップにぴたりとハマった配置で好調を維持する。この日はジョレンテやエルモソのボールタッチが抜群に良く、カラスコのクオリティを押し付けて後半は途中出場の選手も結果を出したポジティブな試合。前半に先制できてペースを握れたのもよかったですね。
代表ウィークで中断期間に入るが、良い状態をキープして終盤戦に臨みたい。しかしコケ、ジョレンテ、バリオスらは代表なしでお休みになった。久しぶりにゆっくりしてほしい。ヒメネスはカバーニと一緒に練習してください。

ルベン・バラハ監督はゆくゆくは4-4-2をやろうとしている雰囲気を感じるが、現時点では変更点をなるべく少なくして改善ポイントを探している印象。この試合に関しては前半と同じ形を続けようとした瞬間と、60分過ぎの選手交代の瞬間に失点しては監督としてはどうしようもない。今のチーム状況を現すような試合であり、ある意味諦めのつく試合である。


3/18
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 3-0 バレンシア
得点者
【アトレティコ】'23 グリーズマン '49 カラスコ '67 ルマル


●ピックアップ選手
ジョレンテ
抜群のボールタッチでピッチを支配した。いつもよりタッチが良かったのか、いつもよりスペースがあったのか。たぶん両方だと思う。自らのシュートは決まらなかったが常に効果的だった。

エルモソ
余裕のあるプレス回避とムサを狙ったボール奪取で流れを作った。ゴール前の崩しに関与したのはもうなんか凄かった

デ・パウル
やはり左側でしょう。ドヤ顔で主張したい。非保持の可動エリアも流石。あの距離の直接FKは可能性があったので今後に期待。

グリーズマン
周囲がみんなグリーズマンを探している。充実のパフォーマンスで前半に先制点をもたらした。

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