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水は、この森からやってくる
日の出前に都心を飛び出し、辿り着いたのは奥多摩湖。写真に収めた広いこの湖を背にし、奥多摩山内へ足を進める。この一帯は、東京都部への水の供給を支える貴重な森のひとつだ。私たちが何気なくコップに注いで口にする水も、何割かはここからやって来ている。
数時間沢沿いを進むと、森が開けてきた。今日は特別に学校が休みとなる創立記念日だ。おかげで平日の山内には人気がなく、「丹沢の男」と自分しかいない。リュックを下ろし、水面へ身をかがめる。
「うまい。」
透き通る水をすくい、口に含んだ。キンキンに冷えた水だが、水道水と違う深みがある。紅葉のピークをすぎ、沢周辺は大量に落葉しているが、どうやらこれらの一部が水に染み込み、独特な味わいを生んでいるようである。
水道水は、ここからやってくる。全てはつながっていて、この森が、この木や土、その一つ一つが、私たちの飲水を作り出し、やがてかえってゆく。目では見ることが難しい巨大なサイクルも、それを支えているのは一つ一つの小さなものたちなのだ。
私たちは日々何気なく蛇口をひねる。「この水はどこから来るのか」なんて考えることもめったにない。だが、その水を口にする私たちは、それだけでその森とつながっている。
「山など、森など、日々の生活とは関係ない」なんていうのは違う。水を口にする度にその森と、そこの生物たちとつながっているし、深く関わりあっている。だからこそ、私たちの一人一人も、その森の一つ一つの生物たちを思い、感謝しなければならないのだなぁ、と、誇らしげに輝く奥多摩湖を見下ろして思った。
へいすてぃ(論説委員・高校1年)
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