ふわっと落ちて
僕のすぐ右横で、同い年くらいの女子高校生が本を読んでいた。
変な音がした。
電車が揺れて、みんなの体が傾いた。
僕の目の前を何かが横切った。
女子高生の方から飛び出したしおり。
落ちていく。
そして、空気抵抗を受けながらゆっくりと着地した。
僕の目の前で。
僕は一瞬戸惑った。
だが、考える前に、体が動いた。
落ちたしおりを手に取り、手渡した。
互いにほんの会釈だけして、それで終わった。
僕はあの一瞬、なにを戸惑ったのだろう。
気づいた時にはもう彼女はその場所を去っていた。
そして、僕はまた、落ちていく。
Yハッツ(論説委員・高校1年)
Photo by フリー素材のぱくたそ
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