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暗渠道への誘い

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世田谷区内を中心に、かつての川の跡=「暗渠」をたどる。 そんなマニアックな趣味を持つ教員が、川の痕跡を探しながら、あれこれ語ります。
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#地理

暗渠道への誘い 谷戸川編③ ~人工と自然の狭間で~

暗渠をたどるニッチなコラム、その谷戸川編の、最終回である。 間が空いたので、簡単にこれまでの川筋を振り返っておこう。 前回、ずいぶんと寄り道を繰り返した。復習も兼ねて、このタイミングで地図を載せておきたい。 (でも地図の下半分は本稿で辿るエリアである。ネタバレを避ける意味では、下半分はあまり見ない方がいいかもしれない 笑) (Google My Mapsが見られない方は、下の画像をどうぞ) 谷戸川の旅は、こんな心細い閉鎖空間の暗渠から始まった。 いつのまにか「蓋暗渠」

暗渠道への誘い 谷戸川編② ~取り残された空間たち~

間隔が少々空いてしまったが、谷戸川編、第2回である。 前回は、源流部から川下りをし、暗渠から開渠へと劇的に変わっていく川の姿を楽しんだ。そして「谷川橋」という橋のところまで紹介して終わっていた。 「萌え断」に誘われて まずは、前回の最後の写真を再掲しよう。 何度見ても、良い。 「断面萌え」あるいは「萌え断」という言葉があるようだが、こういう状況で使うための言葉だろう。 暗渠の断面だよみんな!!! 当然、橋から身を乗り出して覗き込むよね。 フラッシュをたいて、断面の内部

暗渠道への誘い 谷戸川編① ~暗渠の蓋の、その下へ~

「蓋がされ、暗渠の状態になった川だからこそ、その独特の風情に惹かれる」 それは間違いない。 しかしながら、その一方で、 「蓋がされる前、開渠の状態だった川は、どんな様子だったのか、見てみたい」 とも思ってしまう。 これはおそらく、すべての暗渠愛好家が抱く、ジレンマのようなものではないかと思う。 暗渠化された川の蓋が外され、開渠に戻る……などということは、ほとんど無いと言って良い。 だから「答え」を見ることは不可能なのだが、ヒントを与えてくれる川がある。今回はその川を辿

暗渠道への誘い 烏山川編② ~暗渠サインは時空を越えて~

前回の記事では、烏山川緑道の起点から、環状七号線との交点である若林橋までを紹介した。今回は若林橋から先へと進もう。地図を再掲する。 全長7kmの道のりの、まだ2kmしか語れていないのだが、前回はチュートリアルも含んでいたので仕方なかろう。今回は一気に駆け抜けていきたい。(それなりの長文である。途中は飛ばしても、最後は見逃すなっ!) * * * 次第に漂いだす「裏側」環七を渡ってすぐに、緑道からは1本の支流の暗渠が分岐していく。 フェンスで囲まれた細長い空間で、かなりわか

暗渠道への誘い 烏山川編① ~暗渠サインへ応答せよ~

烏山川を初回に持ってこないわけにはいかなかった。 世田谷学園から一番近い所にある、というのが理由の一つ。 また、緑道として整備されているエリアが多く、暗渠レベルとしては初心者向けで、歩きやすいというのも理由だ。   つまり、私は何が言いたいかというと、何かの縁でこの記事を読んでしまったあなたに、烏山川の暗渠をぜひ辿ってほしいのである。   本学園の関係者ならば、正門を出て帰りがてら、ちょっと7kmほど散歩するだけである。 一般の方でも、暗渠の起点は池尻大橋駅から徒歩10

暗渠道への誘い 序章 ~ドブにハマって歩こう~

あなたもきっと、無意識のうちに、川の水面の「上」を歩いたことがある。 そこに気づくと、普段歩いている道に、まったく別の景色が重なって見えてくる。 そんな話をしたくて、マニアックな連載を始めることにした。 * * * 世田谷学園は川に囲まれた学校である。 と言っても、本学園の生徒ですら、ピンとこない者が多いかもしれない。 最寄りの三軒茶屋駅と学校の間を往復しているだけだと、この事実には気づきにくい。しかし、池ノ上駅や下北沢駅を使っている生徒は、2本の川を渡らないと登校で