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【孤高のストーリーテラー】漫画家 売野機子の世界

ここ最近、少しだけ暖かくなってきましたね。学生の皆さん、春休みはどうお過ごしですか?そろそろやることがなくなってきたよ……という人もいるんじゃないでしょうか。そんな人に筆者は全力で売野機子の漫画を推します!今回は、いくつかの作品を紹介するとともに、筆者が愛してやまない漫画家、売野機子の魅力に迫っていきます。



売野機子とは

 そもそも、売野機子って誰?どんな人? そんな人のために軽くプロフィールを紹介します。

【プロフィール】
・1985年9月9日生まれ。東京都出身。
・2009年に「楽園 Le Paradi」(白泉社)にて『薔薇だって書けるよ』『日曜日に自殺』でデビュー
・現在、新潮社「くらげパンチ」にて『君に会いたい』が連載中。


魅力:やっぱり、人の感情っておもしろい。

 彼女の作品の魅力をもし一言で表すのなら
「非リアルな空間の中のリアルな感情」という言葉が一番しっくりきます。
 売野機子の作品はSF設定だったり、少しファンタジーな世界観が多いのが特徴です。現代日本を舞台にしているけれど、私たちの知っている街とは少し違う、まるでパラレルの世界の人々のお話を聞いているような……。友達の友達の話を聞いているみたいなフワフワしたものがありながらも、しっかり共感できるし感情移入できるみたいなお話が多いです。
 不思議な雰囲気に包まれた作品たちですが、キャラクターたちが抱く様々な感情は日々私たちが持っているものと同じもの。片想い、嫉妬、失恋、友情、憎しみ、苦しみ、親への愛、過去の自分との対峙 etc… それらはどれもきっと誰もが経験したり、これから経験するかもしれない感情です。そういったものを売野機子はリアルかつ繊細に描いています。決して「わかりやすい」描写とは言えないかもしれませんが、読めばきっと伝わってくるはず。
筆者は個人的に、売野機子の漫画はコーヒー(紅茶でも)を片手にゆっくり、そして何度も繰り返して読むことをおすすめします。登場人物が生きる「非リアル」な世界の「リアル」な感情に圧倒されて欲しいです。
 筆者が売野機子を「孤高のストーリーテラー」と呼ぶのは、他に似たような作風の漫画家があまりいないと考えるからです。一つの短編でもじっくり読んでみると、一本の長編映画を見終わったような気持ちになるくらいに作り込まれたストーリーの数々。唯一無二の世界観に詩的なセリフが乗っかることで生まれる調和は読んでいてとても心地よいです。非リアルな空間の中にリアルな感情が描かれているからこそ生じる一種の違和感によって、より一層キャラクターたちの感情が際立っています。

おすすめ作品

 色々説明されたけど、結局のところ実際に作品を読んでみないと分からない!って人のために、ファン歴6年の筆者が選ぶ売野機子のおすすめ作品3選をご紹介します!アプリで読めるものもあるのでぜひ気軽に読んでいただけると嬉しいです!


1)デビュー作にして代表作『薔薇だって書けるよ』(白泉社、全1巻)




版元ドットコムより引用

 売野機子のデビュー作は可愛らしい装丁が目印の短編作品集。表題作の『薔薇だって書けるよ』は、八朔と点子という新婚夫婦の物語。「珍奇・奇天烈 絶滅危惧種 僕の点子」と八朔が言うように、点子はドジばかりして家事をうまくこなせない。そんな彼女に嫌気がさした八朔は同僚に嘘をついてしまう。それをたまたま聞いていた点子は……。大まかなあらすじはこんな感じ。短編集なのでそれぞれの話の世界観は様々ですが、どれも暖かい話になっていて読んだ後は少し前向きになれます。デビュー作とは思えないほど洗練された世界観に魅了されること間違いなしです!続きが気になる方はぜひ単行本をチェック!表題作他6作を収録。
↓試し読みはこちらから
薔薇だって書けるよ─売野機子作品集─|白泉社


2)神に選ばれた少年が寄宿学校で繰り広げる「才能」と「愛」の物語『MAMA』(新潮社、全6巻)

 売野機子作品では最長編となる全6巻のこの作品。類稀なる歌声を持つ少年たちが国中から集まる寄宿学校クワイア。その歌声が「天使の声」に達すると、少年は文字通り「天使」となって神に召される世界のお話。主人公ギャビーを始めとした様々なキャラクターたちがそれぞれの「愛」を求め、考え、もがいていく姿には目が離せません。なぜ『MAMA』というタイトルなのかは読み進めていくうちに分かります。この作品はいわゆる「少年愛」ものとは少し異なりますが、ギムナジウムという舞台設定や美少年が登場人物である点など萩尾望都や竹宮惠子を始めとする1970年代の漫画家へのリスペクトが詰まっているため、『トーマの心臓』や『風と木の詩』などの作品が好きな人にはとてもおすすめの漫画です!個人的にはここまで完成された世界観の漫画は中々ないのではないかと思う作品です。少年たちがクワイアで歌う理由は実に様々ですが「クワイア」という世界の中で皆がそれぞれの「愛」を見つけていく過程が非常におもしろいです。各キャラクターにフォーカスしながら話が進んでいくので「推し」ができること間違いなしです。
LINEマンガで無料で読めるので少しでも気になったら読んでみてください!!
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MAMA|無料マンガ


3)ピュアなラヴにページをめくる手が止まらない!『インターネット・ラヴ!』(祥伝社、全1巻)

 この作品は売野機子最新作であり、初のBL(ボーイズラブ)単行本でもあります。「BLはちょっと……」と今思ったそこのあなた!少し待ってください!確かにこの作品のジャンルはBLですが、いわゆる「BLっぽい」シーンはなくBLを初めて読む人にもおすすめの一冊となっています。この作品の魅力はなんといってもピュアすぎる愛(=ラヴ)です。あらすじは次の通り。主人公の天馬の日課は韓国の一般人ウノくんのSNSをチェックすること。天馬はウノくんのことを誰よりも知っていたが、ある日ウノくんに彼女ができたことを知りショックを受けるーー。SNS上の一方通行の関係だった2人が、電波を超えて海を超えて繋がっていく過程がなんとも愛おしい。テンポの良いストーリー展開なのでサクッと読めます。繊細な描写で表現される主人公天馬のリアルな感情に、これぞ売野機子!となるので筆者としては皆さんにぜひ読んでほしい一冊です。ちなみに本作品は「第14回ananマンガ大賞」で紹介されたり、BLアワード2024の「次に来る部門」にノミネートされている話題作です!少しでも気になった方は要チェックです!
↓試し読みはこちらから
第1話 / インターネット・ラヴ! - 売野機子 | FEEL web|マンガの数だけ愛がある


まとめ

 今回は漫画家売野機子を紹介しました。この記事がきっかけで売野機子のファンが一人でも増えたら、筆者としてはこんなにも嬉しいことはありません。今回紹介した作品以外にも素晴らしい作品ばかりなので、まずは気軽に試し読みしてみてくださいね〜。
春休みのおうち時間のお供に売野機子の漫画、おすすめです。

(文:だて)


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