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著者インタビュー『まちの未来を描く!自治体のSDGs』(高木 超氏)

2020年9月に発刊して以来、大好評発売中の本書。そこで、著者の高木 超氏に本書を書かれたきっかけや本の内容についてくわしくご紹介します!


▼ 『まちの未来を描く!自治体のSDGs』

高木 超 著、定価=税込2,090円、四六判・188頁、2020年9月刊

https://amzn.to/3oZ4VkX


▼ 目次

第1章 SDGsをローカルな課題で考える

第2章 SDGsってなに?

第3章 つながる自治体とSDGsの現在と未来

第4章 あなたの部署は何ができる?

第5章 SDGsで変わる議会の仕事


渡米したきっかけ


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―高木さんは大和市役所(神奈川)で働かれたあと、渡米して国連(UNITAR)等が主催する「SDGsと評価に関するリーダーシップ研修」を修了されていますよね。

渡米しようと思ったきっかけを教えてください!

(高木氏)自治体職員として働いていた頃に、友人伝いでSDGsが採択されたことを知りました。

掲げられたゴールを見ると、自治体がこれまで取り組んできた業務と深く関係しており、地方政府(自治体)の役割も明記されていたことで、遅かれ早かれ日本でも自治体での活用が求められる時期が来るという確信めいたものを感じました。

―早くからSDGsにご関心を持たれていたのですね。


(高木氏)同時に、SDGsというグローバルな目標と、ローカルな自治体をつなぐ存在が必要になるとも思いました。その役割を、自治体で働いた経験のある自分が担うことで社会に恩返しできるのではないかと思いました。

そのために、国連での国際的な議論などを理解しようと考えたことがきっかけです。

ーすばらしい志ですね。高木さんのアメリカでのご経験も詰まった本書を多くの自治体職員の方に読んでいただきたいです!


SDGsは自治体にとってハードルが高い!?


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―「SDGs」は、テレビCMなどでもよく聞く言葉になってきました。自治体においても重要なキーワードになってます。

ただ、掲げられている17の目標を達成するのは中々ハードルが高いように感じてしまいますが、自治体の方はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。

(高木氏)私はもう自治体職員ではないので、あくまで現役の自治体職員の話から受けた印象しかお答えできませんが、SDGsを活用して地域課題を解決しようと考えている自治体職員と、SDGsへの対応に追われている自治体職員の大きく2つに別れているように感じます。

いずれにせよ、17ある目標すべてを達成することは、ハードルが高いと感じているのではないでしょうか。

―やっぱりそうなのですね。


(高木氏)しかし、このハードルの高さがSDGsの特徴でもあります。

高い目標を掲げることで、既存の施策や事業を踏襲していただけでは到底達成できないので、企業との連携やICTの導入など、これまでとは全く違うアプローチを必死に工夫して考える機会になります。

ー確かにそうですね。VUCAと形容されるこの時代、工夫を凝らして実践することでより住みやすい日本、より豊かな世界になるといいなと思います。


第1章 SDGsをローカルな課題で考える


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―第1章では、SDGs全体の課題と自治体での課題がとても分かりやすく書かれています。


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―例えば、SDGsのゴール10「人や国の不平等をなくそう」では「日本で暮らす外国人住民は266万人を超え増加している」と紹介されています。

こういった状況から、自治体は具体的にどのような行動を取っていく必要があるのでしょうか?

(高木氏)例えば、日本語が不得意で日常でも不便な状況がある外国籍住民も多くいるのではないでしょうか。公共施設の看板やサイネージを多言語表記にしたり、ピクトグラムやイラストで示したりする工夫も有効でしょう。

―そうですね。2020年6月の時点で在留外国人数は280万人を超えています。


(高木氏)また、「やさしい日本語」を使うことで、相手に伝わることもあります。

こういった視点で実際にまちを歩いてみると、改善につながる発見が多くあるはずです。


第2章 SDGsってなに?


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―第2章では、SDGsの基礎的な知識と、キーワードからSDGsを読み解いています。


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―例えば、複数のモノ・コトがつながっていることを表す「インターリンケージ」。これは具体的にどういうことですか?

(高木氏)SDGsは、一見すると、分野ごとの17あるゴールがそれぞれ独立して存在しているように思えますが、実際は複数のゴールが互いに関係しあっていることもあります。このことをインターリンケージという言葉で表現します。

―なるほど。


(高木氏)具体例で言うと、新たに道路を建設してインフラを整備することは、SDGsのターゲット9.1「経済発展や人間の福祉を支援するインフラの開発」に貢献します。

それだけではなく、道路ができたことで、公共交通機関が開通すれば、ターゲット11.2「全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」にも貢献するでしょう。

これはひとつの打ち手がもたらす相乗効果の例です。

―ひとつの事業で複数の目標が達成されるのですね。


(高木氏)一方で、新たな道路を建設する際に、森林を切り拓いたとすれば、ターゲット15.2「森林減少の阻止」に影響しますし、森林が備える治水機能が影響を受け、地すべり水害などの自然災害の遠因になれば、ターゲット11.5「水関連災害などの災害による死者や被災者数の大幅な削減」にも負の影響がもたらされます。

これをトレードオフと呼びます。

―う~ん。相乗効果が期待される例もあれば、複数に負の作用がもたらされてしまうこともあるのですね。


第3章 つながる自治体とSDGsの現在と未来


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― 第3章では、金沢市(石川)、亀岡市(京都)、内子町(愛媛)の取り組みが紹介されています。


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―SDGsの取り組みは自治体の規模や人口に関わらず、どの自治体でも、どの部署でも取り組めるのでしょうか?

(高木氏)SDGsに関連する取り組みは、自治体の規模に関わらず、どの自治体でも行うことができます。

本書の第4章では、私が「SDGハック」と銘打った取り組みのアップデート方法をご提案しています。

これは部署に限らず実践できるものですので、お役に立てれば嬉しく思います。


第4章 あなたの部署では何ができる?


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―第4章では、各自治体の企画・政策部門、環境部門、公営企業、シティプロモーション部門、スマートシティ戦略部門の取り組みが紹介されています。


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―どれもすばらしい取り組みですが、うまく行かなかった取り組みもあるのでしょうか?

(高木氏)何をもって「うまく行かなかった」と判断するかにもよりますが、自治体が何かしらの取り組みを実施する際に、設定した目標を達成できないことは起こり得ます。

その場合に重要なことは、目標値と実際の結果との差異(ギャップ)が発生した理由を明らかにし、その情報を改善に活かすことが大切です。

―どんな取り組みを行なった場合でも大切なことですね。


(高木氏)取り組みを行ったという事実を説明するための数値として指標を使うだけではなく、取り組みの改善に指標を活用することは、指標で進捗を測るというシンプルなメカニズムであるSDGsにおいても、重要であると言えるでしょう。


第5章 SDGsで変わる議会の仕事


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―第5章では三重県の議会の取り組みが紹介されています。市や町村の議会でもこのような動きがあるのでしょうか?


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(高木氏)SDGsに対する地方議会の関心は、年々高まっていると感じます。

自治体のSDGsに関する動きについて、議会質問が行われることも最近では多くありますし、今後も増えていくのではないでしょうか。

―ぜひ色々議論していただきたいですね。


(高木氏)一方で、都道府県議会における女性議員の比率は、全国平均で11.4% にとどまる というデータが示すように、行政だけでなく、地方議会自身も変化が求められています。

―女性ならではの視点や考え方がSDGsの取り組みによっては効果的に発揮することも多そうですよね。


読者へのメッセージ


―最後に読者の方にメッセージをお願いします!

(高木氏)自治体の取り組みが、どのSDGsのゴールに貢献するか明らかにするだけで満足してしまっては、まちに変化はありません。

SDGsが備える特徴を活かして、まちに変化をもたらすことが、SDGsの達成にもつながります。

そのための視点やノウハウを、本書でまとめています。本書があなたのお役に立てることを心から願っています。

―高木さん、ありがとうございました!


著者プロフィール


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高木 超 (たかぎ・こすも)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教、国連大学サステイナビリティ高等研究所、いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット リサーチ・アソシエイト。

1986年東京都生まれ。NPO等を経て、2012年から神奈川県大和市役所の職員として住民協働等を担当。17年9月に退職し、渡米。

クレアモント評価センター・ニューヨークの研究生として「自治体における SDGs のローカライズ」に関する研究を行うほか、国連訓練調査研究所(UNITAR)とクレアモント大学院大学が共催する「SDGs と評価に関するリーダーシップ研修」を修了。

2019年4月から現職(国連大学は 2019年9月着任)。鎌倉市SDGs推進アドバイザー、能登SDGsラボ連携研究員のほか、ミレニアル世代を中心にSDGsの達成に向けて取り組む団体SDGs-SWYの共同代表も務める。


著書

▼ 『SDGs ×自治体 実践ガイドブック: 現場で活かせる知識と手法』

高木 超 著、定価=税込2,420円、A5判・184頁、2020年3月刊、学芸出版社

https://amzn.to/38W9pTV


好評発売中!『まちの未来を描く!自治体のSDGs 』

高木 超 著、定価=税込2,090円、四六判・188頁、2020年9月刊

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