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呑海 沙織「超高齢社会における図書館をめぐる問い」

呑海 沙織(どんかい・さおり)——筑波大学 副学長・附属学校教育局教育長。
博士(創造都市)。京都大学等での図書館員、筑波大学図書館情報メディア系教授、同附属図書館副館長、同情報学群知識情報・図書館学類長を経て現職。認定司書審査会委員(日本図書館協会)、大和市文化創造拠点等運営審議会副会長なども務める。

図書館とは

 図書館とはなんだろう。多くの本が書架に並んでいて、本を無料で借りることができるところというイメージがあるのではないだろうか。しかし図書館は、単に本を貸し出す施設ではない。図書館には、国立図書館、公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図書館などがあるが、ここでは公共図書館に焦点をあてたい。
 IFLA—UNESCO公共図書館宣言2020では、公共図書館を「地域において知識を得る窓口」とし、その役割を「個人および社会集団の生涯学習、独自の意思決定および文化的発展のための基本的条件を提供」し、「あらゆる種類の知識へのアクセスを提供し、知識の生産を可能にし、かつ共有することによって、健全な知識社会を支える」としている。IFLA(国際図書館連盟)とUNESCO(国連教育科学文化機関)による共同宣言であることからもわかるように、国や地域を問わず図書館は、知識社会における社会基盤であり、すべての人にひらかれた平等な利用が原則となっている。つまり、本の貸し出しは、図書館がこの役割を果たすための一手段であるといえる。
 日本図書館協会の『日本の図書館統計と名簿』(二〇二二年集計)によると、公共図書館数は三三〇五館であり、全国に設置されている。その数は郵便局数(直営約二万局)には遠く及ばないが、マクドナルド(約三〇〇〇店)やスターバックス(約一九〇〇店)より多い。公共図書館は、誰もが、無料で、目的を問われることなく利用できる施設であり、これらの条件を併せ持つ施設はあまり類例がない。

―『學鐙』2024年春号 特集「いまそこにある問いと謎」より―

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灯歌
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特集
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高野 秀行(ノンフィクション作家)★
呑海 沙織(筑波大学 副学長・附属学校教育局教育長)★
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