林 望「永劫の謎に直面する日々」
ここに、一連の列車がある。その列車を動かしているものは一台の機関車であるが、その機関車は列車の最後尾に、しかも後ろ向きに連結されている。機関士は、したがって、列車が動いていくにつれて後方に流れ去っていく景色は嫌になるほど見ることができるが、前方すなわち進行方向に広がっている景色は、決して見ることができぬ。遠い既往や横手に広がる現状を凝視することで、おぼろげにこの列車の行く手を想像することしかできない……そういう列車を想像してみると、私どもの「生きてゆく姿」が説明できるかもし