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『古事記』はじめます。

はじめに

『古事記』が出来上がったのは八世紀の初め頃、七一二年のことで、現存する日本最古の書物といわれており、「ふることぶみ」と呼ばれることもあります。

上・中・下の三巻から成っていまして、上巻は『天地開闢(かいびゃく)』から『天孫降臨』前後の神様たちの物語、中巻は初代神武天皇から第十五代応神天皇までの出来事、下巻は第十六代仁徳天皇から第三十三代推古天皇までの出来事が収められています。

上巻の序文によりますと、『古事記』という企画は、第四十代天武天皇が立案されたものなのですが、天武天皇はこんな考えを持っていらしゃったようです。

「なんかさぁ、神話とか伝説とか、あと天皇家の流れとか、色んな人がなんか好き勝手言ってて、けっこう適当じゃない?そういう間違いとかって今のうちに正しといたほうがさぁ、あとあとみんなのためになると思わん?」

いろいろな家に残る『帝紀』と呼ばれる天皇の系譜や、『旧辞』と呼ばれる神話や伝説などの歴史的な伝承に、誤りや乱れがあることを危ぶまれていたのです。

気づかれたかと思いますが、セリフは絶対にこんなんじゃありません。ただ、読者の皆様には、是非とも古事記に親しみを持っていただきたいので、今後ともセリフは砕けた表現で書かせていただけたらと思います。

そして、天武天皇は稗田阿礼(ひえだのあれ)という語部の舎人(かたりべのとねり)を呼び出します。語部というのは、文字のなかった時代に語り継がれていたことを、口づてに伝える仕事をしていた人で、舎人とは下級役人です。

そして、天武天皇が阿礼に命じられます。

「いろんな家に伝わってる、天皇の系譜とか、神話とか伝説とか、全部集めて、読んで、覚えろ!」

普通に考えればなかなかに『イカれた上司』です。

しかし、阿礼はとても優秀な人だったようで、ひと目見たものを暗唱できて、一度聞いたことを忘れないという、とんでもない記憶力の持ち主でした。なので天武天皇はイカれた上司なんかではなく、能力を最大限に発揮できる部署に部下を配置できる『イカした上司』であらせられたのだと思います。

数年かけて阿礼が古事記作成に必要なもの全てを暗記し、さあいよいよ古事記としてまとめていこうという時に、天武天皇が崩御されます。亡くなってしまったのです。ここで、古事記作成は中断してしまうのです。

その後、三代に渡り天皇は代替わりをしますが、古事記の古の字も出てきません。古のまま、、あ、間違えた。このまま、古事記は歴史の中に埋もれていってしまうのか、、、天武天皇の思いは露と消えてしまうのか、、、そこへ救世主が現れます!第四十三代元明天皇が、古事記の編纂(へんさん)を受け継ぐことを決めるのです!

「おじさんチョーいいことやろうとしてたよね!ウチらで古事記、仕上げちゃおうよ!」

元明天皇は天武天皇の姪にあたる女性天皇であらせられます。もちろんこんな喋り方ではあらせられません。

そして、宮廷直属の優れた文官であった太安万侶(おおのやすまろ)に、稗田阿礼の暗唱を、書き記すように命じるのですが、安麻呂が疑問を覚えます。

「最初に古事記を作ろうとしてから、めっちゃ時間経ってるけど大丈夫かな。」

そうなんです。天武天皇が崩御されてから二十五年、阿礼が全てを暗記してからはそれ以上の年月が経っていたのです。しかし阿礼は、まるで昨日のことのように、記憶の暗唱を始めます。これだけの時間が空いていたにもかかわらず忘れていなかったのです。

この時代、まだ平仮名や片仮名がなかったので、安麻呂は阿礼の暗唱を漢字で筆録しました。こうして出来上がったのが『古事記』なのです。

『はじめに』のさいごに個人的な意見を書かせてください。古事記というのは、神武天皇が即位されたといわれている紀元前六六十年以前からの物語です。それから今までの間に、確実に存在した僕たちの先祖と同じものを、2020年の今も読めるって素敵だなと思っています。

まえおきが長くなってしまいましたが、本当に僕の主観的な『古事記』でございますので、気楽にたのしんでいただけたら幸いです。



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