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令和に生きる開拓者

~第一章ヤブヤブトレイル~

某日。相棒のザックであるカリマーの75Lザックに装備を詰め込む。
先日、ユーコンさんと道を作りたいという話をしてから一週間程しかたっていないのに、岐阜県へ向かおうとしている自分に少しだけびっくりしながら、グローブのほつれを直した。
道をつくる。感慨深さを感じ、物思いにふけっている私に、出発まであと30分であるというアラームが鳴った。我に返り、二泊三日の想定で装備計画を頭の中で立てる。道の状態が読めないため、食料と水は二日分程度多めに持っていくことにした。パックラフトを使った活動もできたらいいなと、パドルをザックの両端に差し込んだ。まるでハウルの動く城のようなごちゃごちゃのパッキングだった。
新宿駅の改札ですっきりした美しいザックで現れたのが、今回の相方H氏だ。H氏は日本大学探検部の同期で部長である。中高は山岳部でパッキングは厳しく叩き込まれたという筋金入りの山男だ。彼を山に誘って断られたことはほとんどない。きっと山が大好きなんだろう。
彼は私のパッキングを見るなり吹き出した。心外である。
彼は、「探検部の奴らのパッキングを見ているとイライラする」と爽やかな笑顔で一喝してきたが、聞かなかったことにした。
バスタ新宿から、名古屋行のバスに乗り込み、深い眠りについた。
バスは名古屋駅に朝の4時頃に到着した。中部地方の活動ではいつもお世話になる、マクドナルド名鉄レジャック店に入り朝マックを食べた。朝から食べる油の塊は最高に幸せだった。長期休業ということもあり生活が乱れていたことと満腹感から私はマックでもうひと眠りしたいと思っていた。しかし、H氏はそれを許さない。彼は自身の近況やこれから始まる探検のことを、目をキラキラさせながら話してくれた。私は眠い目を擦りながら相槌を打った。この日はユーコンさん(詳しくは第二話参照)と午後二時に待ち合わせしていたため、名古屋を観光する時間があった。H氏は名古屋駅周辺のアウトドアショップに突撃したいとまた目をキラキラさせながら言ってきたので、了承した。その時、私に突然強い空腹が襲ってきた。H氏にその旨を話すと、どうやら彼もお腹がすいていたらしかった。朝マックを食べてから間もなかったが、なか卯へと場所を移動した。担々麺と親子丼のセットを注文し、本日二度目の朝ご飯を楽しんだ。活動前の糖質はなんて幸せなのだろう。そんな気持ちで口いっぱいに麺と米を詰め込んだ。
その後、名古屋の好日山荘にある靴売り場を訪れた。
H氏の今回のアプローチシューズはKEENのExplore mid wpというモデルの靴だ。これはタウンユースとトレッキング兼用の靴でおしゃれな山ノボラーが日帰りに使用することが多い靴である。どうして彼のようなゴリゴリの山男がそんな靴を履いてきたのか分からないが、今回はおしゃれな山登りがしたかったらしい。私のハウルの動く城ファッションはどうやらお気に召さなかったらしく、山ファッションについての講義が始まった。彼の靴が後に悲劇を招くことになることはこの時には予想もできず、靴コーナーで無邪気に笑うH氏をただただ見ていた。

文責:久保 結花(日本大学探検部)

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