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人生劇場 市川力さん (後編)

「人生劇場」
隠岐國学習センターで開催したオンライン企画。
どんな人にもそれぞれの人生があり、
大人が大人になるには様々なドラマがあります。
そのドラマに迫りつつ、ざっくばらんにお悩みを相談できる時間です。

前回に引き続き、7月15日にゲストとしてお呼びした、市川力さんの人生劇場の様子を紹介します!

(聞き手:澤正輝)

発想の突破口

市川
もしこういう宿題が出ちゃったら……、この傘を別の使い方にするようなアイディアを考えてきてください、って言われたら、どういう発想をする? どんなことでもいいんだけども。

色んな人に聞きまくって、自分の考えと照らし合わせて、まとめる。

いいね。それは一つのやりかただよね。
じゃあ、君だったらどうする? 隣の君。そうする? 君も。

違うことしないといけないから、今までにどんな使われ方してきたのかとか調べて、ちょっと自分で考えてから聞く。

なるほど。なんとなく先に調べといて、これいけそうだなって言うのを選んでからいく? それとも、こんなのがあるんですけどどれですかね? って聞く? 
……まぁ架空の質問にごめんね 《笑》 そんなの答えらんねぇよな。君はどうする。

えー僕は、まず傘を持ち出して、なんかいろいろ試してって……

やるよねぇ~。いいね、回してみるでもなんでもいいけど、それもひとつだよね。君は?

僕はどっちかというと誰かとやるというより自分で、極めたいという……(笑)

なるほどいいねぇ! 《笑》
そのときにさ、どういう形で極めていきたいと思う?

まずは自分で、構造を知って。

あぁ、傘の構造をまず、明らかにする。

知って(笑) なんていうか……まぁまずは、自分でとことんそれと触れ合ってみる(笑)。 

……俺結構君みたいな人好き。《笑》
とことん触れ合ってみるってさ、ちょっと気持ち悪い感じするでしょ? でも俺そういうのが大事だと思うわけ。触れ合ってみるとか、傘になりきっちゃうとかね。そういう思考法もある。だから今の全部が答えだ
君はどうする?

うーん。今までの経験とか、自分の経験とか振り返って、なんかこういう傘があったらそのとき良かったな、みたいな。

君は?

傘の概念を、まず全部捨て去って。

出た。なるほど。傘をさしますとか、雨の日に使いますとかね!

捨て去って、全く別のものとして、頭の中で消化する。

ほら今、6人に聞いたけど、1人たりとも同じこと言ってない。
僕も違うやり方をします。僕は、徹底的に言葉で遊びたいわけ。だから「傘」ってきたら「かさない」とか。それは一つの突破口になるよね。みんなそれぞれの突破口があれば良くて

実は探究って言葉も、辞書で調べて選ぶってやり方をしてなくて。俺のやりたいことは、自分で探しに行くっていうことと、探したものを研究するってことなんだから、探検して研究する、略して探究? って思ってつけた

それがスタートなんだけど、それを世の中の人勘違いして、「市川先生は探究って言葉を一番最初に使われて、先見の明がありますね」みたいな。まぁそうやって勘違いしてくれるぶんには僕は仕事的には困らないんで。《笑》


創語からのスタートだったんですね!

アイデアはひとりでに動き出す

市川
さっきみたいに人に聞くとか、聞く前になんかちょっと調べてみるのって、抜群に良いじゃないですか。
更にさ、今の複合しようよ。俺も入れて7人複合したらさ、最強じゃないですか。
自分の得意なものを活かしながら、みんなでやれば、誰かのやりかた1つに決める必要ある? 「市川君のやりかたダメだよ。言葉とかやったって意味がないよ。先に調べるべきだよ」って議論、無駄じゃん。

それよりも今の7人でさ、傘チーム作ってごらんよ。多分、1人が今日の夜とか調べてきてくれて、それが一番最初にできるんだよ。
構造分解チーム結構時間かかるから。《笑》 明日までには無理だろ? それは時間かけていいってなって。
そこで理屈っぽく誰かが「じゃあちょっと傘の概念をみんなで今からホワイトボードに」みたいなさぁ。 《笑》


うんうん(笑)。

市川
そういうとき最初っからやらないで、調べてきたものをみんなで分解するよね。
「私はこれがちょっとぴんと来ました」
「よっしゃ。じゃあまずはこれをとっかかりに調べていこう」
って言ってるうちに、2週間くらいして傘と向き合ってたのがやってきて「ちょっとわかったんだよみんな~!」つってね。 《笑》


リアル(笑)。 《笑》

市川
あっリアル?(笑) そうやってチーム作ったらさ、多分3週間くらいでできてるってことだよ。
これをもし一人でやってたら、変に「私は調べただけだ」とか「なんであの人みたいに私は、傘を振り回したりとか出来ないんだろう」とか、思っちゃったり。

構造のときには色々振り回すのが大事なんでしょう? 振り回してみるとかさ、投げてみるとかさ。でも、そういう発想捨てようよ、みたいな意見も出て。傘を投げたり振り回したりする以外のものに使えるかもしれない。持たない傘。
「持たない傘ってどういうこと?」
「エアー傘です」
「いやエアー傘って浮いてりゃそりゃいいかもしれないけど、それ、こう頭につける?」
「それはないですね! それはドラえもんレベルですね」
なんてことを言いながらいろいろやって、……えっ、え? どうした?

いや、被る傘持ってるなって。

市川
ほんと!

商品化されてる。

市川
じゃあそれ越えなきゃいかんな。《笑》
って、ほらまた情報出てくるんです。多分大人のみなさんにはわかりやすくなったと思うけど、これが僕の言いたい探究です。もうこんだけ楽しいじゃないすか。
初めて会った子も一緒にこうやってやっていくと、僕基本的に子供からおっちゃんって呼ばれてるんだけど、傘の商品開発から始めたとしても、多分そのうち、誰かが言うの。「おっちゃん、傘ってテーマがもともと良くなかったんじゃないですか」。


ふふ(笑)。《笑》

市川
いいのいいの! じゃあ違う方向性で行こうっていって、
「いや実は今言ったように、被る傘を超えるものはできそうにありません。テーマ自体を変えようじゃないですか!」
「そうだね。とっかかりで傘だったんだから別に傘にこだわらなくても、みんなが幸せに暮らせて、これ面白いねって言ってくれるものだったらいいんだから。じゃあ傘捨てよう!」

ってなったときに、女子チームとかがさ、
「実は、私候補に思ってたこれがあるんです」
「傘調べたときにたまたま出てきちゃったんだけど、なんかつながるかなって思ったんでとりあえず書いときました」
みたいなのを書いてくれたりするわけ。僕みたいなバカ男子そういうの書けないんだけど。 《笑》

そうすると、これで行きましょうっていうXが見つかるわけよ。そのXっていうのをやる時に、傘の時の思考法って、全く使えないかな。

よくイノベーションの専門家って、掛け算でつくるみたいなこと言うよね。あるものを別の使い方するときに、これとこれを掛け算したらどんな使い方になるかな、とかさ。
それを調べちゃうと、誰かがやった成功例を後追いしがちになってオリジナルのアイデアが生まれないんだけど、俺たちは思いがけない傘×Xを生み出してるわけ。

身体動かし系と、あと概念とか考えるチーム、それから調べるチームっていうのがあって、今はそういう分担になってるけど、他の人を見ているうちにやりたくなっちゃったりするかもしれない。
そういう転換みたいなのもXをかけたときには起き始めていて、自分だか相手だかわかんなくなっちゃう状態みたいなのが起こってて、その状態が僕は一番、目指したい状態で。

つまり、僕のアイデアなんかどこにもなくていいわけ。もう誰のアイデアだかわかんなくなっちゃってる。だけど、生まれちゃってるわけ。
それが、結構面白いものとして売れちゃったりする。売れて僕たちは幸せだし、世の中の人も幸せになる。みなさんのおかげで、非常によく探究のリアリティみたいなものが見えてきたね。

「ずれ」に意味がある

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それを1人でやってるのが「なりきり」ってことですか。

市川
そう。なりきりってことですね。
観察してるうちに、対象にそのままなってしまうってことってあって。
自分がどう思いますかって言うことよりも、誰かとか何かになりきっちゃって、アイデアの方が勝手に動き出してるって状態になってるわけ。

みんなの意見があわさっていくうちに、発見がもうどんどん動いてくから、そうすると、知らない間に傘×Xで今作ろうとしているものにみんながそれぞれなりきっていく。
更に、誰かひとりがなりきったそれとおっちゃんのなりきったものは絶対に違うんです。なりきっても同じものではないんです。これがモノマネとの違いなんです。

モノマネってやっぱり、嵐のモノマネをするってなったときに、例えばその、……これででてこないのがおじさんですよね《笑》 誰でもいいんですけど。


じゃあ二宮くん。

市川
そう、二宮くんのモノマネをしようってなったときには、二宮くんに似てるか似てないかっていうことで評価ができるんですよ。
だけど、花になりきるとき、あなたの方が花になりきってるかなりきってないかとか言われるのは凄い心外だと思わない? その人にとっての花のイメージなんだから。

でもそれが、なりきるってことの深さで、全員が傘×Xでどういうものが生まれるかっていうことにそれぞれ微妙に違う感じでなりきるから、「え、あなたはそう思ってたの? 俺こう思ってたんだけど」ってなったときに、ずれが生まれるじゃないすか。そこに発見があるでしょ。自分じゃないものがあるから。そうすると、むしろ違うことを出すことに意味があって

でも、ともすると、今までの教育っていうのは答えが一個。となると、このなりきる花の形が一個に決まっちゃうんですよ。
「あなたのは違います」
「じゃあ誰が正解なんですか」「その正解に合わせるしかないんですね」
って言ってる教育を、僕は完全否定はしない。

なぜかっていったら、答えがある問題ってあるから。
数学をそれでやるのはあまり建設的じゃないなと思ってるんですよ。ちょっと高度すぎるから。1+1が2と簡単に言えるのかみたいなことを数学者レベルで追究するのはありだと思いますが、そこまでいかない段階で長引かせる必要はなくて、1+1を3と書いたらバツでいいわけですよ。その場合はね。

だけど、探究っていうのを口に出す人たちは、みなさん正解のないことを探究させますって言うんだよね、よく。言うでしょ。でも正解のあるもの求めさせてない? って僕は思っちゃうわけ。

正解が無いんだったら「とりあえず」「なんとなく」とかから行くしかないじゃん。
今の傘の例を見て分かるように、傘というわけのわからないものを無理やり投入しただけでも多分いけるわけですよ。本気でやったらいけると思うんですよ。

だからこのあと例えば僕が3週間島にいて、多分18日目とかに、
「やばいもう出来ない…あんなこと言わなきゃよかったぁ…!」
「ほんとですよ、あの時はおっちゃんがそういうこと言うから私たちも乗っちゃって。もうあと3日しかないんですよ? 本当にいいかげんですね」
っていうような、もう非常にきわどい状況になる。
NHKの「逆転人生」とか「プロフェッショナル 仕事の流儀」とか「プロジェクトX」みたいな感じになってくるわけですよ。

だからそこで、「19日目。口火を切ったのは彼だった」(声を低くして)みたいな《笑》 
起死回生がおきて、そこから2日間でどうやって仕上げるかっていうストーリー、好きじゃん、みんな。みんな観るんだよそういうもん。憧れるんだよ。

だったらそれなっちゃえばいいじゃん、自分がそれになりきろうよ。

・・・

市川さんのエネルギーはとどまるところを知れず、参加者を巻き込みながらまだまだ続いていきました。
「人生劇場」という言葉の意味が、少し深くなるような時間だったように思います。

本日は、これにて閉幕です!

[この記事を書いた人]
長岡未紗
隠岐島前高校OG。好きなことは読む・書く・聞く・話す・人を構うこと。
遊び道具を増やすために生きています。

▼今までの人生劇場の様子はこちら▼


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