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ゴミ拾いしてたら海のおばあちゃんとお茶を飲む約束をした話

先日、同じく春休みで帰省中の妹とゴミ拾いに出かけた。

地元の海は汚い。


海岸沿いを車で走っていると、ペットボトルや発泡スチロールが打ち上げられてるのをよく見る。

魚がそれらを飲み込み、死んでしまうというニュースを見てから、海岸沿いを通るときは気になっていた。

夕方、ゴミ袋とビニール手袋、火箸を持って車を走らせた。

いざ海岸に着いてみると、ペットボトルの多さに圧倒された。それ以外にも、釣具や帽子、サンダル、そしてライターなどが散乱している。

ペットボトルには中国語や韓国語が書かれているものもあった。

ものの15分で2つのゴミ袋はいっぱいになり、一旦車へと戻った。

すると、車の近くに犬の散歩をしているおばあちゃんがいた。おばあちゃんは私たちに気づくと、こう話しかけた。

「何かおったかね」

田舎の海岸では貝の密漁をしていないか地元の人からよく声がかかる。おばあちゃんがそう思ってたらまずい。

「ゴミ拾ってたんです」

「ボベ?今おらんやろ」

「ゴミです。ゴミ拾ってました」

ボベはヨメガカサ科の貝で、島根県西部での呼び名だ。岩にこびり着いているため採りにくいが、人参などの根菜類とともに炊き込みご飯にすると美味しい。

「ゴミねぇ、そりゃありがとう。昨日雨も降ったけんいっぱい流れついとると思うよ」

おばあちゃんはどうやら何も思っていないようだ。

「プラスチック落ちてるやろ。あの小さいの、魚が飲まんか心配なんよ」

私も同感だ。しかし、1cmや5mmくらいのものは拾うのも大変だ。でも小さな魚にとってはそれが命取りになる。

「若いのにゴミ拾いなんて。今春休みなん?」

「そうです」

「今度うちでお茶しようや。あそこの家だけん、いつでもおいでや」

おばあちゃんはそう言うと、海岸沿いに見える家を指差した。

もちろん、冗談のつもりで言ったかもしれない。
話の流れでつい出た言葉かもしれない。
でもなんだか、心が温かくなった。

「また春休み中ゴミ拾い行こうね」

「それでまたあのおばあちゃんと話したいね」

海での素敵な出会いだった。



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