受験生時代の話でもしようかな【終末京大生日記64】

 最近、スケールの大きいことを書き続けてきたため、今回は個人的な話でもしようと思う。私が京大出身だという特性を生かして、シンプルに受験生時代の思い出を語るなんて言うゆるい企画も挟んでいきたい。

 さて、私が地方公立高校出身だというのは書いたと思うが、地方公立高校は大体浪人する人の割合が多い。しかし、私は地方公立の高校生が都会の高校生に比べて劣っているとは思わない。うまく戦えないのはカリキュラムの問題だ。高校入試はたいてい5教科で国数理英社である。ここでいう理科とは物理・化学・生物・地学すべてをうっすらなぞる理科であり、同様に社会も地歴公民をうっすらなぞる社会である。一方、大学入試は科目が細分化されており、私は国語・数学・物理・化学・地理・英語で受験した。(最近は情報もあるらしく大変ですね)ここで読者は気づくだろう。「あれ、生物・地学・公民・歴史大学受験で出ないのに勉強してね?」ということに。

 そうなのである。我々地方公立出身者は、中高6年間のうち、3年間を大学入試に出ない科目の勉強を熱心にしているのである。さらに、試験に出る範囲の中学の内容は高校に比べると薄く、私の体感比率にして1:4くらいの勉強量の差だ。

 我々公立高校出身者と中高一貫校出身者はよーいどんで目的地に向けてスタートする。しかし、前半3年間は我々は迂回をさせられたうえ、「はい止まってください」と20%地点で足止めを食らうのである。そのうちに中高一貫校出身者は先へ進む。我々が20%で止まっているうちに彼らはもう50%地点にいるだろう。そして結局、6年たっても追いつけないことが多い。

 例にもれず、私は現役時、京都大学と大阪大学の秋の大学別模擬試験を受け、D・E判定だった。全統記述模試では、名古屋大阪あたりはB判定をとっていたため、「京大って言ってるけど結局最後は大阪大学ぐらいになりそうやな~」とか思っていた私には寝耳に水だった。大阪大学の受験性は大阪大学の形式にアジャストしているため、なんとなく志望校を下げた私では勝ち目がなかった。

 結局、私がその時点で行ける大学は北海道大学や金沢大学が限界だったが、私は前期でそれらを受けることを良しとせず、京大を受験することにした。一年生時からA判定の大学に行くのはもったいないと感じたからだ。(今思うと別に北大前期でもよかった気がする)

 秋の模試から日は流れ、いよいよセンター試験当日(余談だが、センター試験を受けて4年制大学に入った受験生はほぼ卒業しており、センター試験という単語はおじさんワードになりつつあるのであまり使いたくない)。必死に答えるが、時間が足りない。

 センター試験の日は金沢大学角間キャンパスは毎年大雪。試験後、真っ暗な中膝ぐらいまで積もった窓の外の雪を見ながら私は景色同様に暗い気持ちになった。私は小学生の時のように雪遊びをすれば少しは気持ちが晴れるのではないかと考えた。暗闇を切り裂こうと、純白の雪玉を夜空に向かって投げたが、雪玉は空に消えていっただけだった。

 結局私は前期京大、後期北大の無謀な布陣で受験をすることにした。親は「名古屋か北大のほうがよくない?」と言っていたが全くその通りである。いま、あの時に戻れたらおとなしく北大にしていそうだ。(というか、シンプルに北大のキャンパスライフを送りたい)

 サンダーバードでJR京都駅に向かう。京都駅は相変わらず観光客だらけだが、私は彼らのように明るくはなれなかった。オムライスを食べようと英ビルに入ると、そこには高校の同級生がいた。彼も京大を受けるのだろう。結局彼は受かったのだろうか、私はあの瞬間以来彼にあったことがないためわからずじまいだ。

 いよいよ京大に向かう。京大では下宿紹介のバイトをしている大学生であふれていたが私は受かりそうもないので、彼らと話すのは少し嫌だった。親にも、合格前に部屋は抑えくていいと伝えた。

 試験会場は数百人は入りそうな大きな教室。試験中、別の同級生に声をかけられた。どんな感じかと話すが、私は彼が受かりそうなのを知っていたため、引け目を感じた。

 京都からの帰り道、親は北野天満宮にお祈りをしたと言っていたが、さすがの菅原道真もE判定のものを受からせることはできないだろう。試験の出来を聞かれたが、「書いたところがあっていれば受かる」とだけ言った。とりあえず解答欄を埋めればワンチャンあるかもという願いだ。

 金沢駅に着くと、雪が降っていた。私はモノクロの金沢の冬の闇夜に向かって、「歩く街並みガラス瓶の冬、どこかの映画のようね細く長い線路の上でさ、私に色を付けて」と好きな歌の歌詞をつぶやいた。まるで、物語の主人公になったようで少しだけ気分が良かった。駅では親が車を出してくれており、私はそれに乗って絶望しながら帰った。


 2,000文字を超えそうなので、今回はこの辺で。次回は京大の合格発表から~。

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