MAXCOFFEEの味【終末京大生日記43】

 今日はパソコンの環境構築が終わらずに残業をしてしまった。最悪だ。私は帰り道、パソコンを見すぎて目の奥に残っている眩しさと、頭を使いすぎたせいで生じた頭痛を感じながら、夜道を彷徨っていた。頭脳労働の後は何か甘いものが欲しいと思い私は帰り道、家の近所の自販機に立ち寄った。パイナップルジュースは少し子供っぽいだろうか、ロイヤルミルクティーは140円もするのか、などと考えていると、ふと、懐かしいMAXCOFFEEのパッケージが目に入った。

 私が子供の頃から変わらない、レトロな茶色と黄色のパッケージだ。そういえば、おばあちゃんの家の前に置いてある自動販売機にもMAXCOFFEEが置いてあった。MAXCOFFEEは甘すぎるかもしれないという思いもあったが、買わずにはいられなかった。

 プルタブを引き、缶をあおる。見えた夜空は広くはないが綺麗だった。ふと、幼少の頃の記憶が蘇る。おばあちゃんの家でいとこ二人と障子を破り、襖の木枠から顔を出して笑っている。母親はそれを見て怒ることもせず、フィルムカメラを私たちに向け、こっちを向くように言う。

 あの頃とは何もかも変わってしまった。障子を破っていた我々はそれぞれ、就職したり、ちょうどあの頃の私たちと同じくらいの子供を持つようになるなど、すっかり大人になってしまった。

 「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」というアニメで、主人公たちが小学生時代を振り返り「高校生ってすごく大人でなんだってできるように見えたけど、あの頃の方がなんだってできたよね」と言うシーンがあるのだが、私も障子を破っていた時代がまさに、なんだってできていた時代なのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?