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書店で本を売る

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

出版営業とは、書店でいかに自社の本を多く売ってもらえるかを考え実行する仕事である。書店で本を売る。そうである、その仕事である。

随分前の話になるが、高校生が書店で本を選んでいて、「おっ、これ買う!」と言うのを僕はそばで聞いていた。友達も「おお、それいいね」と賛同していた。

僕はその本が何なのか興味があったので振り返り、その彼が手にしていた本を見た。それは最新号の音楽雑誌だった。こいつらも僕と同じロックファンなのか、と少し嬉しい気持ちになったのである。

しかし彼はその雑誌を棚に戻した。そして「家に帰ったらアマゾンに注文する。持って帰るのは重いしな」とさもそうすることが当然のように言い放ったのであった。

昨今こういう話はよく聞く。書店は本を選ぶ場所で、購入するのはネット。これでは書店はたまったもんじゃない。おいおいすぐに読みたくないのか?と思うのだが、それとこれは別の話らしい。

当社でも本を買うのはアマゾン!という人はいる。しかしながら出版営業、つまり書店さんに本を売ってもらうことを仕事としている人はアマゾン利用者ではないと信じているが、プライベートなことなので分からない。

書店で本を買う人の数が減れば、出版営業という仕事は陳腐化する。書店で本が売れることを目指すなら、書店で本を買うべきだと僕は思っている。書店で本が売れてゆくことが好きでなければ出版営業は出来ない、と信じている。

アマゾンで本を買っている人が「最近書店で本が売れなくなったよなぁ、書店さんへ営業をして本を売らないと」という発言をしているのを聞くと、イラッとしてしまう。

ちなみに我が家にはパソコンがないので、書店でしか本は買わない。ネットで本が買えないのだろう?と言われれば、そうだと答えるしかないのだが、ネットで本を買いたいと思ったことがない、本を買いたいと思うのはいつも書店だ。

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