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尾崎行雄『憲政の本義』

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#政治

3.立憲政体維持の必要条件/ 尾崎行雄『憲政の本義』

三 立憲政体維持の必要条件
 立憲政体維持の必要条件は、外でもない、人民をして人類であることを自覚せしめるに在る。政治上において人類と称するのは、生命財産その他の権利を有する者を云う。これを有せないものは、人面を被《か》ぶる所の禽獣にすぎない。飼牧者のために、生殺与奪の全権を掌握せられる所の劣等動物にすぎない。
 人民をして、人類である事を自覚せしめ、また生命財産の所有主である事を自覚せしめ、また

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2.専制政体維持の必要条件/ 尾崎行雄『憲政の本義』

二 専制政体維持の必要条件
 然しながら、人民を、禽獣状態に安んぜしめるには、必ずこれを暗愚ならしめねばならぬ。奴隷根性を養成せしめねばならぬ。「啼児と地頭には勝れぬ」と云うが如き思想を維持せしめねばならぬ。「御上の御無理はこれを御尤もと思う」の習慣を教養せねばならぬ。人類の禽獣との区別すら、これを知らせないようにしなければならぬ。ましてや「人には生命財産その他の権利あり」と云うが如き思想を起さし

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1.専制治下の人民は生命財産の権利を持たぬ/ 尾崎行雄『憲政の本義』

一 専制治下の人民は生命財産の権利を持たぬ
 政治家が、政治の目的物たる人民を治める方法は、これを大別して、二種とする事が出来る。
 人民は、生命財産を始め、その他一切の権利のないもの、即ち禽獣同様な者と視做《みな》して、これを治めるのが、その第一種であり、人民でも、生命財産の権利を持っているもの即ち人類と視做《みな》して、これを治めるのが、その第二種である。
 第一種の為政法を、専制政体と云い、

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尾崎行雄「憲政の本義」:目次+『貧者及弱者の福音』序文

尾崎行雄「憲政の本義」:目次+『貧者及弱者の福音』序文

普選の運用を有効ならしむべき手段方法は、前四篇に於てクドすぎるほど詳説した。今ま従来の選挙人が其権利の行使を誤り、以て自ら現在の如き困難を招来した最大原因を尋ぬれば、彼等が未だ憲政の本義を解せず、選挙権を、其仇敵に譲渡したるの一事に帰着せざるを得ない。是れ私が多少の加筆修正を加え、大正初年の旧稿を掲げて、普ねく新旧選挙人の※[#判読不可、30-16]※[#判読不可、30-16]を煩わす所以である(

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