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尾崎行雄『憲政の本義』

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2021年6月の記事一覧

6.人畜の相異は選挙権の有無に在り/ 尾崎行雄『憲政の本義』

六 人畜の相異は選挙権の有無に在り
 立憲国民は、生命財産の権利ある人類であるが、専制国人民は、これを持たない禽獣的動物であることは、前にもしばしばこれを説明した。しかして法律上に於ける二者の相違は、一はその生命財産の保管人則ち代議士を選挙するの権利を持ち、他はこれを持たないと云う一点に外ならない。故に政治上に於ける人類と禽獣の差異を煎じ詰めれば、選挙権を持つと持たぬとに帰着する。然るに人類唯一の

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7.選挙人の腐敗は立憲政体の最大併毒/ 尾崎行雄『憲政の本義』

七 選挙人の腐敗は立憲政体の最大併毒
 立憲政体の弊害中、最も憂うべきものが二ある。事の善悪を問わず、議員が政府に反対するは、その一であって、これに盲従するのは、その二である。議員が妄りに政府に反対する弊害は、列国の憲法は、皆なこれを予想して、その予防法を設けているが、議員が妄りに政府に盲従する弊害に至っては、何れの国の憲法も、これを予想しないから、その予防法を設けたものはない。しかして議員若し事

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5.帝国憲法の神髄/ 尾崎行雄『憲政の本義』

五 帝国憲法の神髄
 帝国憲法は、七十六ヶ条の多きに及び、その規定する所、広く諸般の事項に渉っているが、要するに君民の権義を確定し、人民の生命、財産、その他の権利を保証するに外ならない。
 帝国臣民は、奴隷に非ず、禽獣に非ず、かえって生命財産の権利を保有するところの人類である。故にいやしくもこれに関係する所の法律は、所有主の代表者たる衆議院議員の協賛を受けねばならぬ。特に租税の如きは、よってもって

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