野球の神様㉑

バットくんがケガから復帰して初めての練習試合の日だ。


ここまで3ヶ月間、かつてないほどに野球の思考を学んだと思うからのぉ。今日は一つ楽しみじゃな。


神様もバットくんのケガからの復帰を喜んでいた。無論ここまでバットくんを苦しめたのは神様の仕業ではあるのだけれど、ちゃんとバットくんが立派に成長して戻ってくることを神様は心からずっと待っていたのである。


バットくんは4番ライトで先発出場。さすがにここまでの期間身体をまともに動かしていないため、バットくんの体力を考慮してピッチャーとしての復帰は先に持ち越しにはなったが、バットくんにとっては今日は待望の試合だ。


二回に第一打席が回ってきた。

「ここまでの配球を見ていると、1・2・3番バッターに対しては全球真っ直ぐ勝負だった。かなり力のあるボールを放っている。投球練習でも一球も変化球を投げていない。おそらく一回り目は変化球を見せずに真っ直ぐで勝負していくというこのなのだろう」

そんなことを心の中で思いながらバットくんは打席に立った。

初球。

「ストライク!!」

バットくんは思いっきり踏み込んでいったが、振りにいくところでボールを見逃した。

全く無警戒のカーブが来たのである。

「なるほど。4番の俺に対してはかなり警戒をしているということか。ここまで投げていない変化球をいきなりここで投げられるということは、相当自信のあるボールなのだろう」

2球目。

ブンッ!!!

「ストライーク!!」

今度は真っ直ぐがきた。思いっきりバット振ったが、わずかにタイミングが遅れ空を切った。


「初球は大きく曲がる変化球。2球目はここまで投げ続けている力のある真っ直ぐ。さぁ次は何がくるか。俺のことを警戒しているとすれば、2球連続で同じボールを投げてはこない。ましてやあの空振りをみたら次にタイミングを合わせられたときの不安を持つだろう。としたら、カーブだ!」


ピッチャーが投げた3球目のボールは、無情にもバットくんのバットの下をくぐり抜けていった!

「ストライック!バッターアウト!!」


「フォークだ、、、」


バットくんは潔く駆け足でベンチへと戻り、すぐさまノートとペンを取り出して、自分への配球と、打席で感じたピッチャーの投げかたのくせと、ピッチャーの目線やマウンドでの振る舞いを、一つ一つ気づきとしてメモにとった。


かなり相手バッテリーの思考を意識して打席に立てるようになっておるなぁ。そりゃあ最初から読みなんか当たりゃあせん。データが多ければ多いほど確実性が高まるのじゃからのぉ。その一つ一つの気づきの記帳が大切じゃ。


その後もバットくんは、自分の打席以外の状況でもすべての配球と気づきを丁寧にメモし、次の打席までにそれを一つ一つ頭の中に叩き込んでいった。

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