野球の神様㉔

「カキーーン!!」「カキーーン!!」「カキーーン!!」


バットくんは初回から連打を浴び、4失点を喫した。

そのウラ、相手チームのピッチャーがマウンドに立つ。彼はこの決勝戦まで1失点も許すことなく、ここまでの4試合を勝ち上がってきている。

「ふうっ。今目の前の一球一球に集中しよう」

そう心に誓ってピッチャーはワインドアップポジションに入る。


このピッチャー、小学生のころは結果が出るとすぐに舞い上がってしまう性格を持っていた。ちょっとでも良いピッチングをするとすぐにだれかに自慢して、そこで努力をやめてしまう、そういう悪いところがあった。

でも、彼は変わったのだ。ある出来事をきっかけとして。

彼はかつて一人黙々と壁あてをして、小学生の頃、バットくんとの対決で完璧なピッチングを見せつけていた、ウォールくんであった。

ウォールくんとバットくんがそれぞれのことを覚えているかどうかは定かではないが、今日はその頃以来の対決である。


「ストライーク!バッターアウト!!」

今日も快調なピッチングで、8回ウラまで相手打線を完全に封じ込めた。

そして、最終回、ツーアウトランナーなし。

打席にはバットくんが立った。

「だめだ、今日は全く相手の頭が読めない。なんなんだあの自信満々なオーラは。俺は、、、勝てない、、、」

ブンッ!

「ストライック!バッターアウト!!」

神様は今日、ウォールくんの味方をした。

バットくんは2年連続で、全国大会目前の決戦で、はかなくも敗れ去った。

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