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外資系における昇給の実態

外資系テック企業のレイオフが続く昨今。いかがお過ごしでしょうか? 最近はビッグテックだけでなく、1年くらい前までは、業界を席巻していた新興のテック企業でもレイオフが行われていますし、マッキンゼーなど他の業界でもレイオフのニュースを聞くようになりました。外資系冬の時代と言えそうです。

私の勤める外資系テック企業では、昨年に数パーセント後半のレイオフが実施されましたが、その後はレイオフは実施されていません。ただし、新規の採用は厳しくなっています。例えそれが人が辞めた後の補充(backfillと言います)であっても。そしてそれは昇進や昇給にも影響を与えています。

今回は外資系における昇給の実態について、どんな昇給の種類があるのか、どのように決定されるかについてご紹介します。

昇給の種類

一口に「昇給」と言ってもそこにはいくつかの種類があります。主な昇給の種類は以下の通り。

  • 昇進(promotion)

  • 昇給

  • 定期昇給

  • その他インセンティブ

以降でそれぞれの解説をします。

昇進(promotion)

一番わかりやすいのが昇進です。昇進すると上位の給与レンジにスライドするため、給与も上がります。一口に「昇進」と言っても大きく2つの種類があります。

ひとつめは「職位(Job Grade/Level)の上昇」です。多くの外資系企業では職種ごとに職位が規定されており、その職位ごとに給与レンジが決まっています。例えば、Job Grade2が1000万円~1500万円で、Job Grade3が1500万円~2000万円みたいな感じです。従ってJob Gradeが上がると給与も上がるわけです。ちなみに、Job Gradeの数字は、大きいほど職位が高い企業もあれば、低いほど職位が高い企業もあります。

ふたつめは「ICからマネジメントへの移行」です。ICはIndividual Contributorの略で、ピープルマネージャーではない人たちのことです。正確ではないですが、「平社員から管理職への移行」という感じなので、一般的な「昇進」のイメージに近いですね。外資系では(そして日本企業でも同じ仕組みの企業も多いと思いますが)、マネジメントの職位と、ICの職位は分かれています。つまり、マネジメントはICの上位職位ということではなく、マネジメントはマネジメントの職位があります。従って、マネジメント職に移行したとしても、職位によっては実は給与が上がらない、ということがあり得ますし、実際に普通にあります。ただ、マネジメントに昇進する人は、直近のパフォーマンスが評価されているわけで、通常は昇給を伴う昇進となるように調整が入るのが普通です。

昇給

ここでは昇給を「定期昇給の範囲を超えた昇進を伴わない昇給」と定義しています。つまり職位の上昇などがないけど、昇給するケースですね。

先ほど述べた通り、職位ごとに給与レンジが決まっています。例えば、1000万円~1500万円の給与レンジの職位にある場合、その人の給与は例えば1250万円だったりします。この人の新しい給与が1400万円になる場合がここで言う「昇給」になります。

外資系テック企業においては、平均的なパフォーマンスを発揮したのであれば、通常多くの人が多少なりとも昇給の対象になります。Annual Meritと呼ばれたりもしますが、だいたい4%-7%くらいが普通の昇給率だというのが個人的な印象です。給与水準が高い外資系だとたとえ4%でも絶対金額として小さくない昇給になりますね。たとえばOTEが2000万円だと年間80万円、月間7万円近い昇給になるので。

ちなみに1250万円から1400万円に昇給した上の例だと、12%の昇給をした計算になりますが、これはかなり高い評価を得たことを示しています。

その他のインセンティブ

その他にも長期的なインセンティブが新たに付与されることがあります。それは例えばRSUやストックオプションなどです。これも一種の昇給として捉えることができます。

職位やその企業の状況によって付与される金額(or 評価額)は様々ですが、年あたり百万円を超えるくらいのインセンティブが新たに付与されることはあるので、侮れません。

ちなみにこうしたインセンティブは、基本的にはハイパフォーマーの長期在籍を狙ったものとなるため、フルに享受するためには向こう3年なり4年間は在籍しつづける必要があります。

昇給はどのように決まるのか

ではそうした昇給はどう決まるのでしょうか? 基本的には年に数回(多くの企業では2回だと思います)実施される評価サイクルを通じて決まることになります。ざっくりいうと、ピープルマネージャーが9 Boxなどの企業で決まった評価フレームワークでメンバーの評価を行い、それがリージョンやグローバルの中で調整され、最終的な内容が決定されることになります。

外資系企業の昇給状況

これまで外資系企業は成長路線だったので、昇給するためのプールも潤沢で、多くの人が昇給を享受できる環境でした。

しかし、現在のような低成長路線となると、コストの締め付けが強まるため、企業全体での昇給プールは縮小し、これまでなら昇給対象となった人であっても昇給を見送られるということが起きています。

特にレイオフ幅を縮小することを選択する企業では、その代わりに今いる従業員の給与総額を小さくする必要があるため、大多数の人が昇給できないということも起こり得ます。これはハイパフォーマーの流出リスクを高めるため、大幅なレイオフを行ってでも、残った人にはこれまで通りの昇給を継続した方が良いという判断も当然あり得るかなとは思います。難しいところですね。

サマリー

今回は外資系における昇給の実態そして現在の昇給状況についても私の知る範囲でご紹介しました。

これまで外資系テック企業は、昇給についても魅力的な環境でしたが、その魅力に少し翳りが見えているのは確かだと思います。

一方で、高いパフォーマンスを上げている人は多かれ少なかれ昇給を得られるのも事実ですし、この状況にあっても、その昇給額は魅力的なのも間違いないところかなと私は思います。

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