外国人労働者の雇用方法<募集〜労務管理まで 7つのステップを徹底解説>
こんにちは!外国人採用ラボです。外国人労働者の採用を検討している企業様向けに役立つ情報を発信しています。在留外国人向けに日本での仕事や暮らしに役立つ情報を発信するサイトtsunagu Localも運営しているので、是非併せてご覧ください。
今回は外国人労働者の募集から雇用するまでの流れをわかりやすく解説します。
日本人採用と外国人採用 の違いのポイント
まず外国人採用の流れは日本人採用と大きく異なります。外国人採用は、日本国籍を持っていない外国人が日本に滞在するときに取得が義務付けられている在留資格の確認など 法律上の手続きが多く発生します。段階ごとに適切な手順を踏まなければいけないので、この記事でわかりやすく解説していきたいと思います。
全体フロー、7つのステップについて
まず外国人労働者を雇用するまでの全体の流れを見ていきましょう。
主に7つのステップがあります。詳しく見ていきましょう。
STEP1:事前に採用したい人材要件 を定める
外国人採用で最初にすべきことは、事前に採用したい人材要件 を定めることです。これまで日本で働く主な外国人は専門知識のある高度な人材と、技術習得を目的とした技能実習生でした。少子高齢化などにより人手不足が深刻となった今、技能実習法や改正入管法等の法整備によって在留資格の種類が増え、受け入れ態勢が整備されています 。ただ在留資格の種類毎に業務の水準や内容が異なるため、事前に欲しい人材要件 を定め、該当する資格の内容を理解する必要があります。
外国人の 就労が認められている在留資格は、大学などで学んだ体系的な学術知識や高度な専門性、国際的な知識を要する技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザや、介護や建設など全14業種において一定の日本語能力と知識がある外国人が対象となる特定技能ビザ、日本国内の四年制大学以上を卒業し日本語能力試験N1合格(または同等の日本語能力)の外国人が対象となる特定活動ビザなどがあります。簡単に表にまとめました ので参考にしてみてください。
出典:
JETRO https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Events/bdb/49facb9d51d120db/session_second_1.pdf
出入国在留管理庁http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/qaq5.pdf
STEP2:募集
採用したい人材要件を決めた後は募集をします。
外国人採用の際、気を付けなければいけない点は募集年齢と採用時期です。例えば日本人の新卒採用の場合、一般的に 大学3年生から企業研究やインターンなどの準備を始め、説明会や面接を経て4年の夏頃に内定が出ます。
一方外国人の場合、日本の大学入学前に日本語学校や自国の大学へ通うなど様々なキャリアを積んでいたり、大学在学中に就職活動をする概念がなかったりと、就職活動を行う年齢も時期も決まっていません。そのため外国人採用をする際は募集人材の年齢制限を緩め、通年採用にすると優秀な人材の獲得に繋がりやすくなります。
また、 外国人労働者を募集する場合、以下の 方法が考えられます。
・学校内の就職指導課に求人票を出す
大学や日本語学校などの 学校内の就職指導課に求人票を出し、学内の外国人留学生に対して アプローチする方法です。就職指導課に求人票を出す方法は主に2つあり、学校向けに求人業を配信する民間サービス(キャリタスUC)を利用する方法と、学校に直接求人 情報を送る方法です。キャリタスUCは全国約800の学校に対して企業の求人情報を配信できるサービスで、基本プランは無料で利用できます(一部機能は有料です)。
・求人情報サイトで募集する
採用支援会社が運営する求人情報サイトに掲載し、日本で就職活動あるいは転職活動をしている外国人にアプローチする方法です。求人情報の掲載は無償で掲載できる場合が多いです。IndeedやLinkedInなど海外でも見られているサイトに掲載することで現地にいる人々へのアプローチも可能です。
・自社ホームページや自社SNSで募集する
自社のホームページ内に外国人採用専用サイトを立ち上げて募集する方法です。元々企業のことを知っている学生や、何かをきっかけに企業名を知り興味を持った学生が、検索ドライブから自社の採用サイトに訪問することが多く、認知/興味関心のある層にアプローチすることができます。自社のSNSアカウントがあれば、SNSから採用サイトに誘導することも可能です。この方法では留学生、既に日本で働いている外国人、自国に居住している外国人にアプローチできます。
・在留外国人向けの媒体に求人情報を掲載する
在留外国人向けの新聞、雑誌、サイトなどに求人情報を掲載する方法です。在留外国人向けのため国籍に合わせた言語で掲載することが必要です。この方法では留学生、既に日本で働いている外国人にアプローチできます。
・リファラル採用、リクルーター制度
元社員や知人などの人脈を使って縁故採用するリファラル採用や社員がリクルーターとなり求職者に接触するリクルーター制度です。自社を理解している社員からの紹介のため採用のミスマッチが起こりにくく、採用コストの抑制が期待できます。既に自社に外国人社員がいる場合、在留あるいは日本以外に居住している外国人の採用にも有効です。
・ハローワークに求人票を出す
ハローワークは安定した雇用を確保するため厚生労働省が運営している機関ですが、東京、名古屋、大阪、福岡の4か所に外国人雇用向けの窓口があります。就職情報を提供するだけでなく、大学と連携して就職ガイダンスや留学生向けのインターンシッププログラムの提供などを実施しています。この方法では留学生、既に日本で働いている外国人にアプローチできます。
ハローワークに求人票を掲載するには以下4つのステップがあります。
① 自社の住所を管轄するハローワークで事業所登録をします。
② 求人情報を「求人申込書」に記載し、提出
③ 審査を経て、求人票を公開
④ 応募者が現れた場合、ハローワーク経由で紹介され、面接。採否がきまったらハローワークに報告。
ハローワークの外国人雇用窓口はこちら
東京外国人雇用サービスセンター
〒163-0721 東京都新宿区西新宿2‐7‐1小田急第一生命ビル21階
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-foreigner/home.html
名古屋外国人サービスセンター
〒460-0008 名古屋市中区錦2-14-25 ヤマイチビル8F
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-foreigner/
大阪外国人雇用サービスセンター
〒530-0017 大阪市北区角田町8-47 阪急グランドビル16階
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-foreigner/home.html
福岡外国人雇用サービスセンター
〒810-0001福岡市中央区天神1丁目4番2号エルガーラオフィス12階
福岡中央公共職業安定所 福岡学生職業センター内
https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/hw/fuzoku_kikan/gaisen.html
STEP3:書類選考、面接
応募者が集まったら、書類選考と面接で採用する人材を選定します。企業によって求める人材像が異なるため採用の判断軸は様々ですが、押さえるべきポイントを記載したいと思います。
書類選考で押さえるべきポイントは学歴と日本語能力 です。
まず学歴について、外国人採用の場合、多様なキャリアを積み様々な年齢の人が応募する可能性があります。そのため履歴書を見る際は年齢と学歴を合わせてチェックすることが重要です。日本と異なり海外では3年生の時点で学位を取得できる大学もあるため、自国での最終学歴、特に大学はインターネットなどで調べ、どの学位を取得しているのか事前に把握することもいいかもしれません。
また日本の学校に留学していた場合、日本人の感覚で偏差値や学校名にこだわりすぎるのも問題です。難関学校でも留学試験が易しい、あるいは認知度が低い学校でも優秀な留学生がいることは決して少なくありません。学校名にとらわれずに本人のポテンシャルを見極めることが重要です。
日本語能力について、どのような仕事においても日本語能力が高ければ高いほど良いですが、日本語能力試験の結果のみで判断するのはもったいないかもしれません。日本語能力試験は、性質上、漢字圏出身者が有利なうえ、試験ではコミュニケーションスキルは測れません。また職場で意思疎通が取れるか、営業に適用するかなど自社が求めるレベルも考慮する必要があります。そのため書類選考で一定以下の結果を切り捨てることは採用機会を逃しているかもしれません。
日本語能力試験は国際交流基金と日本国際教育支援協会が共催している試験がメインですが、各レベルは以下の通りです。
※出典:日本語能力試験
https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html
次に面接について、日本語のコミュニケーション能力を見るため日本語で実施しましょう。できるだけミスマッチを防ぐためにお互いが「望むこと」「できること/求めること」「将来像」などにずれがないかどうかを面接時によく確認をしましょう。本人が望むことと企業が望むことにズレが生じると離職の原因になります。そのためより具体的に深堀ることが重要です。また環境適応力を見るため母国との慣習の違いなどをどう乗り越えたかなどを訪ねるものいいかもしれません。
また内定を出す前に本人の在留資格の有無、種類、期限、今後取るべき在留資格の取得見込み を把握しましょう。在留資格に不備があると雇用ができないため、確認が必要です。
STEP4:内定、雇用契約書の締結
内定者が確定したら、勤務形態や賃金などの労働条件を話し合い、書面による雇用契約書を締結します。労働基準法では、使用者(雇用主)は労働者(被雇用者)に雇用期間や業務、賃金などの条件を書面で明示することが義務付けられており外国人労働者も同様です。雇用契約書は法律上の義務はありませんが、トラブルを避けるためにも作成することをお勧めします。就労ビザ申請前に締結しましょう。
雇用契約書に記載 する労働条件は就業規則と同程度に詳しく記すと安心です。主な記載項目を纏めてみました。
・雇用契約期間
期間の定めの有無と、ある場合は期間を記す。労働契約期間は、労働基準法に定める範囲で決める。
・就業場所&業務内容
雇用直後のみで問題ないので、就業場所、従事する業務内容を網羅的に明示する。
・就業時間
始業・終業の時刻、休憩時間、所定時間外労働の有無を記す 。内容が膨大になるときは始業・終業の時刻、休日などの考えを示したうえで、網羅的に明示しても問題ない。
・休日
定例日(毎週〇曜日、国民の祝日等)、非定例日(週・月当たり〇日)、また年単位の変形労働時間制の場合は年間〇日など記す。詳細として、就業規則の条項を記しておく。
・賃金
お互いの合意を取るため記載は必須。記載する項目は基本給、諸手当の額(計算方法)、所定労働時間外・休日または深夜労働に対して支払われる割増賃金率、賃金締切日、賃金支払日、賃金の支払い方法、昇給、賞与、退職金など。
・加入保険
社会保険(厚生年金、健康保険、厚生年金基金など)の加入状況や雇用保険の適用の有無、雇用管理の改善などに関する事項に係る相談窓口など。
・退職に関する事項
定年制の有無、継続雇用制度の有無、自己都合退職の手続き(退職する〇日以上前に届け出ること)、また解雇の事由及び手続など。
・署名と捺印
雇用契約書の場合は2部用意し、両者がサインをし、お互いに1部ずつ保管をする。
STEP5:就労ビザの申請
雇用契約書の締結が完了したら、次に就労ビザの申請を行います。外国人労働者が日本 で働くには就労ビザ(就労の為の在留資格)が必要です。採用試験に受かって就職が決まっても就労ビザがなければ日本で働くことができません。
自国に居住している外国人が就労ビザを申請する場合、主に以下のような流れになります 。
留学生あるいは既に日本で働いている外国人が就労ビザを申請する場合は、採用時の状態に応じて必要な申請が異なるため、適宜法務省のウェブサイトでご確認いただくことをおすすめします。
法務省 日本での活動内容に応じた資料【在留資格変更許可申請・在留資格取得許可申請】
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_HENKO/zairyu_henko10.html
法務省 在留資格変更許可申請書(フォーマット)
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/16-2-1.html
例えば留学生を採用した場合は「在留資格変更許可申請」「所属(活動)機関に関する届出(卒業・退学時)」が必要です。本人の居住地を管轄する地方出入国在留管理局に書類を提出します。申請処理は1~2ヶ月程度かかるため、早めに申請することをおすすめ します。
「技術・人文知識・国際業務ビザ」で働いていた外国人を中途採用した場合、 ビザの変更が不要であれば 「所属(活動)期間に関する届け出(入・退社時)」を最寄りの地方出入国在留管理局に提出するのみで大丈夫です。ただし前職の 退職日から2週間以内に提出する必要があります。
「特定活動」の外国人を中途採用する場合、所属機関と併せて許可が下りるため、転職時は転職先の企業が 「在留資格変更許可申請」を 提出し、改めて在留資格を取得し直す必要があります。
採用時の状態や転職先、業務内容により申請書が異なるため、適宜確認が必要です。申請自体は企業内で対応できますが、手間を省きたいあるいは業務内容が特殊で立証が困難な場合は申請取次行政書士や弁護士に依頼するのも一つの方法です。申請取次行政書士とは必要な講習などを受けて資格を得た行政書士で、この資格を持つ行政書士のみが申請から出頭まで全て代理で請け負うことができます。資格がない一般の行政書士の場合、書類の作成までしか対応ができないので注意してください。
STEP6:受け入れ準備
就労ビザを申請し交付されるまでの間、社内の受け入れ態勢を整備しましょう。特に初めて外国人労働者を雇用する企業では、社員 に外国人雇用について理解を促すことが不可欠です。社員の中には外国人に対する偏見を持つ人や外国人雇用で不利益を被るのではと懸念する人、外国人とのコミュニケーションに不安を感じる人 もいるかもしれません 。大切なことは外国人労働者が働く部署はもちろん、全社的に「なぜ外国人を雇う必要があるのか」を周知しましょう。
既存社員に伝えるべきポイントは4つあります。
・外国人雇用の必要性
なぜ外国人人材が必要なのか、企業が抱えている問題を挙げながらその解消に外国人人材がどのように寄与するのか語る。
・自分たちにとってのメリット
外国人と一緒に働くことでスタッフが得られるメリットを伝える。例えば企業内の国際化が進みビジネススキル向上につながる、など。
・企業の将来のビジョン
国際競争力をつけ、将来は海外でもビジネスを展開するなど 企業の展望を示す。
・本人のスペックや人となり
本人がどういう経歴を持ち、どんなスキルがあり、どういう人となりかについて伝える。
また仮に自国に居住している外国人を採用した場合は、必要に応じて 来日するためのフライトや住居の手配も忘れずに行いましょう。
雇用開始後にすべきこと
受け入れ態勢が整備できたら、遂に雇用開始です!
外国人の雇用を開始した際はハローワークへの届け出が義務付けられており、怠ると30万円以下の罰金が科せられます。対象は「外交」「公用」の在留資格所持者及び活動制限がない「特別永住者」を除く全ての外国人労働者です。アルバイトも適用されます。
雇用保険の被保険者とならない外国人は雇用状況届出書を提出し、被保険者の場合は雇用保険被保険者資格取得届の提出が必要です。雇用状況届出はWEB上でも申請ができます。
厚生労働省 外国人雇用状況届出システム
https://gaikokujin.hellowork.mhlw.go.jp/report/001010.do?action=initDisp&screenId=001010
また就職・転職によって 居住地が変わる場合は住所を管轄する市区町村役場で本人が住民登録する必要があります。自国に居住している外国人の場合、基本的に入国後14日以内に登録 する必要があります。これにより日本に中長期間在留する人に対して交付される在留カード に居住地が記載され、パスポートの常時携帯が必要なくなります。
まとめ
今回は外国人労働者を雇用するまでの流れについてまと めました。外国人労働者 本人の状況や在留資格の種類によって対応は異なり複雑ですが、この記事で少しでも理解が深められたら幸いです。今後も外国人採用について定期的に情報を発信してくので、ぜひ 他の記事もご覧ください。もしこの記事がいいねと思っていただ けたら、スキ/フォロー大歓迎です。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考文献
幻冬舎「知識ゼロからの外国人雇用」竹内幸一