ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 174ページ

「!?」

よく見るとそれは、炎をまと

った小さな獣のようだ。

少し離れたところで、優の、

「いけ!いけ!フォルちゃん!」

という声が聞こえてくる。

どうやら味方らしい。

フォルと呼ばれた獣の一撃は、

プラントビーストを燃やさない

までも、それなりのダメージを

与えたようで、明らかに動きが

鈍くなっている。

それを、指を加えてみているレ

オではなかった。

「熊の手[ベアスタンプ]!」

プラントビーストの頭を熊の

大きな手で上から叩きつぶす。

さすがに、これは、すぐには再

生できずに、一旦とびすさるプ

ラントビースト。

しかし、そこに火狐の体当た

りが再び直撃し、ちょうど、レオ

の前に吹っ飛ばされる。

「もらったぁ!熊の合掌[ベアク

ラッシュ]!」

″グシャン!″

レオは、合掌するように、プ

ラントビーストの身体を、両

手で挟み潰した。

″ピキピキパキン!″

心臓のような玉が傷ついた瞬

間、プラントビーストの体は、

自然崩壊をはじめ、後には、た

だの木枝が、いくつか残っただ

けであった。

「やったぁ!よくやった!フォ

ルちゃん!火の化身は、言い過ぎ

だったけど・・・しかも、炎消せ

るし」

優が、レオと火狐のもとに駆け

寄り、戦闘を終え、まとった炎

を消した火狐をなでながら、ゆ

っくり近づいてくるラクーンを

にらむ。

『わちのおかげで勝てたのに、

ひどいぞ・・・一件落着してよ

かったぞ』

ぼそぼそと尻窄みに呟くラク

ーンは、レオの影に隠れたのだ

った。

気付けば空が白み始めている。

「ふぅ~、やばかった~!優、

助かったぞ、ありがとな」

レオが尻餅をついた。

優は、火狐にお礼を言い、違う

次元の森へと帰っていくのを見

送りながら、レオに応える。

「全然だよ~、全部フォルちゃ

んのおかげだし」

「そんなことないさ、おまえも、

ありがとな」

レオは、優に手を合わせたあ

と、自分の影ですねているラク

ーンをなでてやった。

『まぁ、それほどでもないぞ、

気やすく頭に触れるのはよろし

くないぞ』

文句を言いながらも、気持ちよ

さそうにしてるラクーンをみな

がら、レオが感じていた違和感

を口にする。

「なぁ、それにしても、おかしく

ねぇか?ここまで騒がしくして、

誰も起きてこねぇのは・・・疲

れすぎて爆睡ってことも考えら

れるけどよ」

「確かに、少し離れてるとはい

え、ここまでの戦いで誰も目を

覚まさないのは・・・」

「獣戦士と獣使いとは、魔女の

言ってたことは本当だったか」

優の言葉をさえぎり、どこか

らか、声が響きわたった瞬間、

景色が一変する。

森の入り口手前にいたはずが、

一面、緑の木々に覆われた、森

の奥深くかと思われる景色へと

変化していた。


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