ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 134ページ

「!わかったわ、すぐに行くと

伝えなさい」

騎士の報告を受けたルミナは、

シェザリーに目で合図すると部

屋を後にした。

「・・・・・」

紫音は、混乱していた。

聖ミリア教国の最高司祭であ

るユロフから聞いた話では、こ

の国ザハンは、魔王が創った邪

悪な国で、妖魔たちを使い、世

界を滅ぼそうとしているという

事だったが、女王であるルミナ

をはじめ、街や城で会った者た

ちからは、邪悪さは感じられな

い。

もちろん、デゴンやカラバー

ンは別だが・・・。

そこに、ひっかかりを感じてな

らないのだ。

そして自分は、ルミナやシェ

ザリーと同じ魔女[ウィッチ]と

いう存在らしい。

それもまた、信じられない話

だ。

いや、涼たちと同じ人間では

ないという事を認めたくないだ

けかもしれない。

それに、この国は、聖ミリア

や六勇者と敵対関係にある。

いずれは、みんなとも戦わな

ければならないのだろうか。

同じ魔女である、ルミナやシ

ェザリーも、シオンが何者なの

か、わからないという。

自分は、いったい何者なのか、

この国はいったい・・・そんな

事が頭の中をぐるぐるとまわり、

どうしていいのか、わからなく

なる。

沈黙を不安と取ったのだろう、

シェザリーが話し掛けてきた。

「案ずることはない、我らは味

方だ、困った事があれば力にな

ろう、遠慮なく言うがよい、こ

の部屋をでて、右のつきあたり

に、わたしや陛下専用の鍛練場

がある、修業したい場合は、そ

こを自由に使うといい、それか

ら、地下にも騎士団の鍛練場が

ある、わたしの配下たちと手合

せしてみるのもいいだろう、陛

下から賜った剣を、無用の長物

にしてくれるなよ?」

そして、わたしは玉座の間に

いる、と言い残し、シェザリー

も部屋を出ていった。

紫音がカラバーンの隠れ家で

手に入れた魔剣バネトは、魔力

を増幅してくれる便利な剣では

あるが、刀身が短く、斬り合い

には向かない。

それに気付いたルミナが、一

振りの剣をくれたのだ。

魔女の剣[ウィッチソード]、

柄に紫色の宝石がいくつも埋め

込まれている他は、普通の長剣

となんら変わらないが、なんで

も所有者の魔力に応じて、その

姿と力が変化するという不思議

な剣らしい。

気持ち良さそうに眠っている

チョコを、部屋のテーブルの上

の、フワフワなタオルで作った

専用ベッドに寝かしつけると、

迷いや不安を振り切るため、紫

音は、鍛練場へと向かったのだ

った。

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