ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 168ページ

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″ガサッ!ガサガサッ!″

『!』

森から突如現れたのは、二足

歩行で走るタヌキのような動物

だった・・・かなり肥えている。

さらに、その後ろから巨大な

獣が、すさまじい勢いで飛び出

してきた。

いや、獣とみえるのは、シル

エットだけで、その顔は、食虫

花のように中央から外側へと、

花弁のように開いており、内側

にはギザギザのトゲが見える。

体は、ねじれた枝やツタがか

らまってできているようで、尻

尾まであり、その先端には、こ

れまた大きなトゲを月夜に光ら

せていた。

『おぉ!人間よ!わちを救って

もよいぞ!?』

あまりの醜悪な姿に驚く二人

の脳裏に、少しえらぶった声が

響く。

「なにっ!?」

「レオさんも聞こえた!?今の

声って、このタヌキかなぁ?」

顔を見合わせる二人の脳裏に、

再び怒ったようにまくしたてて

くる声が響いてきた。

『こりゃ~!タヌキとは失敬な!

ラクーンとよぶがよいぞ!そう

呼ぶのが正解ぞ!』

タヌキ・・・もとい、ラクー

ンは、怒りを表すように、両手

を振り回して、地団駄を踏んで

いる。

″ヒュッ!″

″ガキィーン!″

そんなラクーンに、植物獣の

尻尾のトゲが襲いかかるが、い

ち早く察知したレオが大剣の刃

を盾にして防いだ。

「おい!タヌキ!なにがどうな

ってるのか説明しろ!」

『タヌキ言うなぁー!ラクーン

と呼ぶのがよいぞ!っと、そん

な場合でもなかったぞ!しょう

がないぞ!今回だけは大目にみ

てやるぞ!』

レオの問いかけに不服を唱え

たラクーンだったが、植物獣が

みるみるうちに、より醜悪な姿

に変わっていくのをみて、慌て

て説明を始める。

『あれは、プラントビースト、

本来、この世界には存在しないん

だぞ、たぶん、わちと一緒にき

てしまって、この世界の濃い負

の思念に狂わされたんだぞ!・

・・ん?そこの少しだけ可愛い

ガール、わちと契約するとよい

ぞって、わちの声が聞こえるの

に資格がないとは使えない奴ぞ』

「なんですってぇー!少しだけ

ってなによぅ~!だけってぇ~

!それに使えないってどういう

ことよぉ~!」

ラクーンの言葉に、ムッとし

た優が、ラクーンのふくよかな

頬を両手で引っ張る。

『う、うむ、言い過ぎたぞ、謝

罪してもよいぞ』

あくまで上から目線のラクー

ンに、優が文句を言おうとした

その時、レオが警告の声を上げ

た。

「優!なんかヤバイぞ!」

プラントビーストの表皮は、

暗い色に変化し、触手のように

伸びた、いくつものツタの先端に、

まがまがしく開く口だけが、暗

闇の中で、うごめいて見える。

「うそでしょ~!?」

「狼形態〔ウルフフォーム〕!」 

優は、泣きそうな声を上げな

がらも弓矢を構え、レオは、狼

の獣人へと、その姿を変えた。

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