ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 12ページ

先に行った紫音たちは、体の

痛みに加え、一向に動かないこ

ちらを気にして、時々振り返って

いる為、まだ、そんなに離れられ

ていない。

「涼さん、すいません」

「私が、ごねたから・・・ごめん

なさい」

裕也と優が、消え去りそうな声

で謝る。

「優、おまえの明るさには、い

つも元気をもらってるんだ。そ

んな顔するな、大丈夫、俺も死

ぬつもりはないよ、またあとで

な」

涼は、優に近づくと、やさしく

頭を撫でる。

こちらに気付いた異形の集団

は、ほとんど駆け足になりなが

ら50mと離れてない距離にま

で迫ってきている。

「加賀!しっかりしろ!かわい

いこを守るのは男の義務だぞ!」

涼が、裕也の背中をたたく。

「追いつかれたら、みんな殺さ

れるぞ!はやく行け!」

涼は、そう言うと、すぐそこま

で迫ってきていた異形の集団に

向かい、木の枝を次々と投げつ

け始めた。

そのうちの一本が、御輿[みこ

し]のようなものに乗っている

一際体格の大きいオークの横を

かすめる。

それを見た涼は、そのオーク

を指差すと、大げさに笑いなが

ら森の中へと入っていった。

そのオークは、怒りに燃えた瞳

で、涼を指差してなにごとか叫

ぶ。

すると、異形の化け物たちは、

進路を変え、涼の後を追うよう

に、次々と森へと入っていく。

「くっ!涼さん!また会えると

信じてます!」

「絶対死ぬなよ!」

凱とレオは、後ろ髪ひかれる

想いをなんとか押し込め、塔へ

と走りだす事しかできなかった。

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涼を除く七人が塔に着いたの

は、日が少し傾き始めた頃だっ

た。

体の痛みと、腰を抜かしてる

二人がいることもあり、どうし

ても休み休みになってしまい、

予想以上に時間がかかってしま

ったのだ。

幸いな事に、追ってくる者はい

なかった。

涼の足止めは、成功したという

事だろう。

目指していた塔に無事たどり

着き、本来なら手を上げ喜ぶと

ころだが、そうもいかなかった。

涼のことが気がかりなことも

あったが、何より、手を上げよ

うにも、両手は後ろ手に縛られ

ていて動かせそうもない。

そう、彼らは捕われの身だった。

彼らが塔に着いた時、塔の前

には、百人ぐらいの一団がいた。

そのほとんどが、中世の騎士を

思わせる銀色の鎧に身を包んで

いたが、十人ぐらいは、神父を

思わせる白っぽいフード付きの

ローブを着ていた。

助けを求めようとしたが、な

ぜか、ただならぬ緊張感に包ま

れており、有無を言わさず捕え

られてしまったのだ。

そして今、両手足を縛られ、

木の根元に転がされている。

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