ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 69ページ

ケイブワームを囲むように炎

が吹き上げたかと思うと、一斉

に中心に向かい燃えあがる。

ケイブワームは、一瞬にして

黒焦げになり、炭のかたまりに

成り果てた。

(この魔法は、魔導師級[メイジク

ラス]の・・・これが黒魔術師[ブ

ラックマジシャン]か)

グエンは、驚愕していた。

本来、洞窟の中に生息してい

るケイブワームが、こんな場所

に現れたことも驚きだが、それ

よりも、葵の魔法の腕前がここ

までとは思ってもみなかったの

だ。

しかも、初めてのあの状況で、

冷静に何を使うか考え、見事魔

法を成功させるだけの集中力と

精神力をあわせもっているなん

て、もはや魔導師[メイジ]とし

て認められててもおかしくはな

いだろう。

話によると、彼女はつい先日、

ようやく黒魔術師[ブラックマ

ジシャン]として認められたば

かりだという。

(敵になりそうなら早いうちに

・・・)

「葵ちゃん!すごーい!」

グエンの思考は、優のはしゃ

ぎ声にさえぎられた。

「ありがと、優」

葵は、優に笑い返すが、嫌な予

感が少しもなくならないことに

不安を覚えていた。

「くそっ!結局なにもできなか

った」

神楽の癒しを受け、回復した

レオが、悔しそうにうめく。

「気にするな、あれは俺たち聖

騎士[パラディン]でもてこずる

相手だ、それより先を急ぐぞ、

日が落ちる前には国境を越えた

い」

グエンは、ひとまず答えを先

送りにし、みんなをうながす。

そんなグエンの様子に、凱だ

けは違和感を感じていた。

(?グエン、何を考えている?)


森の端を突っ切る形で国境を

越え、しばらく歩くと、小さな

山々が見えてきた。

話によると、そのすべてが鉱

山で、ドワーフたちは、鉱石を

掘ると同時に、その坑道の中で

暮らしているという。

「煙?おい!急ぐぞ!」

ドワーフたちが住むという坑

道がある方角から、尋常じゃな

いほどの煙がたちのぼっており、

それをみたグエンが慌てて駆け

出す。


ドワーフの坑道前にたどりつ

くと、そこは地獄と化していた。

あちこちに、火の手があがり、

そこら中には、たくさんのゴブ

リンやトロールといった妖魔た

ちが暴れており、無数のドワー

フたちが命を絶たれていた。

どうやら、煙を魔法かなにかで

坑道内に流し込み、いぶりださ

れたドワーフたちを一方的に殺

しているようだ。

先ほど出会ったケイブワーム

も、それであんなところに出現

したのかもしれない。

しかし、それらには目もくれ

ず、グエンの視線は一点を見つ

めたまま凍りついていた。

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