ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 195ページ

~~~~~~~~~~~~~~

「グガァー!」

熊へと獣化した獣人が一人、

大勢のエルフによって抑えこま

れていた。

体には、丈夫なツタのような

ものが何本も巻き付けられてい

て、それをエルフたちが引っ張

っている。

「レオ、いいかげん聞き分ける

のじゃ、お前の行動は、ただの

自己満足でしかない、ガイの自

尊心を傷つけるだけじゃと、なぜ

わからぬ」

一人だけ十二単のような服に

身を包んだエルフが、諭すように

言う。

見た目は若く美しいが、その

喋り方は老人のようだ。

エルフには、寿命がないとも

言われている、おそらく、見た

目どおりの年齢ではないのだろ

う。

「レオさん、長老様の言う通り

だよぉ、凱さんは、追っかけて

こられても喜ばないと思う」

優が遠慮がちに言うと、神楽

も、その後に続いた。

「私も、そう思います、逆に怒る

のではないでしょうか?そんな

に自分を信じられないのかと・

・・彼は強い!彼を信じましょ

う!」

「・・・」

ようやく獣化を解き、おとな

しくなったレオに、レーラが問い

かける。 

「アグリア軍が、ザハンを攻めて

いる今が、二度とないかもしれな

いチャンスなの、私たちは、城

を取り戻しに行くわ!あなたは、

どうする?」

レオの心は、すでに決まって

いた。

あの凱が、そう簡単に死ぬわ

けがないのだ。

仲間を信じる、簡単なようで

難しいことなのかもしれない。

しかし、それができてこそ、

本当の仲間と言えるのだろう。

(凱、死ぬなよ!?信じてるか

らな!)

レオは、心の中で凱に呼び掛

けると、静かに答えたのだった。

「・・・俺も行く」

~~~~~~~~~~~~~~

「なぁ、なんであたしらは、こ

んな暇なとこにいなきゃいけな

いんだい?戦といったら、最前

線だろう?」

丸坊主の女性がイライラした

感じで、隣にいる大柄な黒騎士

にくってかかる。

顔は、意外と整っており、や

やつり気味な目元が強気な印象

を強めている。

彼女は、露出の多い、女性兵

士が着る黒い革鎧を身に付けて

いる・・・渡された黒騎士の鎧

は、気に入らなかったようだ。

「まったく、このジル様がなん

で、こんな暑くて暇な所につっ

たってなきゃいけないのかねぇ

~」

ジルと名乗る女性は、答えな

い黒騎士に聞こえるように、再び

不平をもらした。

大柄な黒騎士から少し離れた

所には、相変わらずブツブツと

独り言か呪咀なのかわからない

が、ひたすら何かを呟いている

青年がいる。

顔は、長い黒髪に完全に隠さ

れていてみることはできない。

さすがに、囚人服は脱ぎ捨て、

黒いローブに身を包んでいる。

「ネグート!あんたもなんか言

ってやんな!・・・だめだな、

ありゃ」

ジルが呼び掛けるも、ネグー

トと呼ばれた青年は、ブツブツ

と何事かを呟いているだけで、

ジルは、諦めた様子で肩をすく

める。

ここは、暗黒帝国と言われる、

ザハンの首都ダークタウンの入

り口から少し外にでた所、そこ

に三人は立っていた。

前線で戦う騎士団長のシェザ

リーたちが討ちもらした敵を迎

え討つのが、大柄な黒騎士、副

騎士団長である彼の、レムナテ

スの役目なのだ。

もちろん、街中には、レムナ

テス配下の黒騎士100名が要所

を固めている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?