ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 185ページ

「これは?」

「わしらが魔力を込めて編み込

んだ布で作られた服と、ダークエ

ルフの長老に宛てた手紙じゃよ」

「エルフの服に、ダークエルフへ

の手紙?」

「そうじゃ、その服は、そなた

が着ているドワーフ鋼の装備に

引けをとらない防御力がある上

に、軽いぞ?」

長老が自慢気な笑みを見せた

後、再び口を開く。

「そなたは、闇がどういったも

のか知らなければならない、己

の闇についてもな・・・ダーク

エルフは、闇に生まれ、闇と共

に生きてきた種族、きっと、そ

なたの闇を導いてくれるじゃろ

う・・・ただ、彼らが住む、闇

の森セルは、足場も悪く、瘴気

に包まれているため、歩くだけ

でも困難じゃ・・・まぁ、命懸

けの修行と思ったらいい」


濃い瘴気は、毒と一緒で、体

を蝕んでいく。

ということは、息ができる場所

は、瘴気の薄い場所に限られて

くるのだ。

そして、歪んだ木々は、真っ

直ぐ進むことを拒むかのように

乱立しているのだ。

確かにこれは、命懸けの修行

だと思った矢先、凱は、ふと背

後に視線を感じ振り返る。

(・・・?誰もいない?)

再び前を向き、進もうとした

その時、何者かが木から逆さにぶ

ら下がる格好で現れた。

「ばぁ~♪」

(!)

凱は、口に腕を当てたまま、

なんとか転ばずに、2、3歩後

ろにたたらを踏んだ。

(エルフ?)

かなり小柄だが、その白い肌、

緑色の髪と瞳に、尖った耳は、エ

ルフそのものだった。

「わたし、かなり我慢したんだ

から~!偉い?偉いよね!?」

地面に降りた、その小柄なエ

ルフは無邪気に問いかけてくる。

その無邪気な瞳に、冷たい光

が宿ったように感じた瞬間。

「死んじゃえ~!」

(なに!?くっ!)

とっさに横に大きく跳んだ、

凱のいた場所の木々が粉々に砕

け散った。

(呪文を省略した魔法か?いや、

なにか違うような・・・)

凱の読みは間違っていなかっ

た。

彼女はそう、抑えつけていた

ものを解放しただけ・・・そし

て、その強すぎる魔力が、ただ

暴発しているだけなのだ。

魔力の暴走[マジックバース

ト]と呼ばれる現象である。

その強すぎる魔力は、体中か

ら溢れだしており、彼女に瘴気

を寄せ付けていないのが見える

ほどだった。

(なんて魔力だ・・・しかし、

なぜ俺の命を?)

凱の頭は、冷静さを失ってはい

なかったが、それとは裏腹に、

背中には冷たいものが走ってい

る。

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