ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 175ページ

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″ザッ″

ふと、前を歩くアヌビスが、足を

止める。

「?どうした?穴は、まだ先じ

ゃろう?」

ヴァーリンが、いぶかしげに問

い掛けるも、アヌビスは答えな

い。

前に回り込み、表情を伺うも、

黒犬の顔を持つアヌビスの表情

は、猿の獣人であるヴァーリン

には、わかりずらいため、その

考えを読み取るのは困難であっ

た。

---ここは、自由国クルンの中

心に位置し、魔術師ギルドが治

める谷、心臓[ハート]の最奥部

手前にある大空洞である---

ヴァーリンは、アヌビスの要

請で、最奥部の穴をふさぐ結界

の強化を手伝う為ついてきたの

だが・・・。

「ん?」

微かに、アヌビスの口元が動

いている。

「!内詠唱か!?」

--- 一般的な魔法は、呪文を声

に出すことで威力が増すが、内

にこもらすことで威力を増す魔

法がある、呪咀の類いがそうだ

---

「死の色彩[デスコントラスト]」

「くっ!神の加護を受けた、わし

に、そんなものは効かんわぁ!」

死の魔法を、気合いで防いだヴ

ァーリンが叫ぶ。

「血迷ぉたか!アヌビス!」

それとは、対照的に、静かに

言い放つアヌビス。

「あなたには、ここで死んでも

らいます」

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″ピクッ!″

(・・・いつのまにか眠ってい

たようね)

女王は、玉座で目を覚ました。

いまや、暗黒帝国と呼ばれた

ザハンは、その影すらない。

魔王の侵出を拒み、彼らに対

抗する戦力を揃えるために頑張

ってきたが、そのほとんどが消

えてしまった・・・特に、ゲー

トフォートの大虐殺は、互いを

あまり信用していないザハンの

兵たちを、より疑心暗鬼にさせ

た。

そして、幹部の敗北と失踪・

・・新たに加わった戦力もいる

が、すぐに、どうこう期待できる

ものではない。

ここ最近の出来事は、振り出

しに戻ったかのような消失感を

女王に与えるに充分だった。

そして、疲れが溜まり、つい

眠気が・・・いや違う!

自分の横には、シェザリーが

いたはずだ。

彼女が断りもなく、自分から離

れることはない。

(!異空間魔法!?)

「・・・でてきなさい」

「さすがに、一筋縄ではいきませ

んね」

女王の呼び掛けに応えるよう

に、燕尾服に身を包んだ美青年が、

柱の影から姿を現した。

顔は整っているが、左目にさ

れた眼帯と、感情の読みとれな

い無表情さが、不気味さを感じ

させる。

「!ヒュプノス・・・」

「憶えていただいていたとは光

栄ですが、完全体でない私に、

ここまで接近を許すとは、あな

たがたも落ちぶれたものですね」

ヒュプノスと呼ばれた男は、

女王に軽く会釈した後、少しボ

リュームのある伸ばした黒髪

をかきあげながら、ため息をつく。

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